ヨーゼフ・ラインベルガーの美しさよ・・・

先日、いつもお世話になるWさんからCDをいただいた。ヨーゼフ・ラインベルガーの「オルガンとヴァイオリンのための作品集」。ラインベルガーなる作曲家は知らなかった。いや、フルトヴェングラーの若き日の作曲の先生だということだから、おそらく名前くらいはどこかで見聞きしていたはず。しかしながら、そういうところがまた僕のいけないところで、ほとんど興味を持たなかったのかどうなのか、かの作曲家について調べることもなく、あるいは好奇心を持つこともなく何十年と時が過ぎたらしい。

聴いてみて驚いた。これはほとんどアンビエント・ミュージック(環境音楽)の類じゃないか。疲れないどころか、繰り返し聴くことでその何とも美しい旋律の虜になってゆく。地の底から湧き出ずるオルガンの響き、といって地鳴りのような重低音でない、あまりにも敬虔で静謐な伴奏に乗って、哀しさや悦びや、人間の持つ様々な感情を浄化、吹き飛ばしてくれるようなヴァイオリンの音が天から降り注ぐ。
しかしながら、決して単なるロマン派風の浪漫的精神溢れる音楽とは言えないのでは。それほど人間的ではない(ように僕には聴こえる)。そう、ただそこに鳴り響く音。ああ、そういえば、フォーレの初期の作品の雰囲気に近い。少なくともそういうオルガンの静かな音と伸びやかなヴァイオリンの音が自然に寄り添う様は、本当に心を癒す(月並みな言い方しかできないけれど)。

ラインベルガー:
・ヴァイオリンとオルガンのための6つの小品集作品150
・ヴァイオリンとオルガンのための組曲作品166
リネ・モスト(ヴァイオリン)
マリ・シナー(オルガン)(2000.6録音)

ここ数日、地獄のような(笑)暑さを忘れるために何度も耳にする。まるでエアコンディショナーのようにラインベルガーを聴いている最中は本当に暑さを感じない。
そして、子どもに物語を話して聞かせるようなヴァイオリンの囁きは真に美しい。
時にはじけて時に涙して・・・、子どもは静かな眠りにつく。

作品150の第2曲「パストラール」は、どこかで聴いた懐かしいメロディ。
作品166の第4曲「無窮動」の軽快に飛び跳ねるような精神。
嗚呼、あの頃の感性が蘇る。
難しいことを考えず、ただその瞬間を一生懸命に生きていた、あの頃が。

天気が崩れてきたのか、彼方から雷らしき音が聞こえてきた・・・。


16 COMMENTS

雅之

こんばんは。

こういう我が身の不勉強、不真面目、不徳のため、聴くことがなかった作曲家については、いつものあの手を使うから、コメントをさっさと片付けるのも早いです(爆)。

1839年生まれの著名人

1月19日 – ポール・セザンヌ、画家(+ 1906年)
3月17日 – ヨーゼフ・ラインベルガー、作曲家・オルガニスト(+ 1901年)
3月21日 – モデスト・ムソルグスキー、作曲家(+ 1881年)
http://ja.wikipedia.org/wiki/1839%E5%B9%B4

というわけで、セザンヌ、ラインベルガー、ムソルグスキー、 三先生に、ぜひ聴いていただきたい秘蔵の1枚。

・ムソルグスキー/アルブレヒト編:『展覧会の絵』(オルガン版) 
ハンスイェルク・アルブレヒト(オルガン)《SACD》
http://www.hmv.co.jp/artist_%E3%83%A0%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%EF%BC%881839-1881%EF%BC%89_000000000018869/item_%E3%83%A0%E3%82%BD%E3%83%AB%E3%82%B0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%EF%BC%9A%E5%B1%95%E8%A6%A7%E4%BC%9A%E3%81%AE%E7%B5%B5%E3%80%81%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B4%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%EF%BC%9A%E3%83%9A%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%82%AB%EF%BC%88%E3%82%AA%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%B3%E7%89%88%EF%BC%89%E3%80%80%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%83%96%E3%83%AC%E3%83%92%E3%83%88_2754062

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
あ、そういえばセザンヌも同い年なんですね。今気がつきました。
秘蔵の1枚興味深いです。
オルガンによる「展覧会」とは重低音、超弩級の演奏だと推測しますが、いかがでしょう?

返信する
木曽のあばら屋

こんにちは。
このアルバムは私も愛聴しております。
ほとんど反則技のような美しさですね。

ラインベルガーには
「オルガン、ヴァイオリンとチェロのための組曲 作品149」という作品もあります。
ヴァイオリンとの二重奏に比べるとややダイナミックで構築的な音楽ですが、
オルガンと弦楽器のしっとりとしたからみはここでもやはり絶美です。

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岡本 浩和

>木曽のあばら屋様
こんにちは。

>ほとんど反則技のような美しさですね。

おっしゃるとおりですね。他の作品も聴いてみましたが、いずれも絶品です。いろいろと勉強してみようと思います。
ありがとうございます。

返信する
岡本 浩和

>雅之様

ちょっと調べ切れておりませんが、作品149は楽器変更可能な曲なんじゃないでしょうか?
実際にヴァイオリンとチェロのバージョンもあるようです。
http://ml.naxos.jp/album/CLASSCD252

ご紹介いただいたミサ曲やオルガン・トリオも良い曲ですね。

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雅之

>作品149は楽器変更可能な曲なんじゃないでしょうか?

なるほど、ウィキペディア情報が誤っている可能性は高いですね。
「2つのトランペットとオルガンのための組曲」というのは、きっと後世の編曲版なのでしょうね。

ピッコロ・トランペットを含む編成というのは、作曲年代ではちょっと考えにくいですからね。

私は初めて聴く、ご紹介のOp.150、作品166、それにOp.149なども、You Tubeで全部全曲聴けちゃうんですね。
http://www.youtube.com/watch?v=vYe_v8mOHKU&feature=relmfu

合唱や宗教曲愛好家の間でも、とても有名な作曲家みたいですね。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。

>ピッコロ・トランペットを含む編成というのは、作曲年代ではちょっと考えにくいですからね。

おっしゃるとおりですね。
Youtubeは「本当に便利です。全部聴けちゃうというのがとにかくすごい。しかもきれいな映像までついて。
30年前の僕らがクラシック音楽を聴き始めた頃からすると本当に良い時代です。

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雅之

・・・・・・However, the real find here has to be the Rheinberger Suite in C minor, a substantial, 37-minute work from 1887, originally scored for the unusual (unique?) combination of violin, cello and organ (Carey’s instrumentation replaces the first two with a piccolo trumpet and B flat trumpet). The enthusiastic and detailed booklet-notes are spot-on: it’s a charmer from start to finish, brimful of captivatingly tuneful, polished inspiration and solidly argued, too. Indeed, to my ears, the whole work evinces a positively symphonic scope, so it comes as no surprise to learn that Rheinberger also devised a version incorporating string orchestra. ・・・・・・

http://www.linnrecords.com/review-the-trumpets-that-time-forgot-jonathan-freeman-attwood-john-wallace-colm-carey-ckd-242-gramophone.aspx
とありました。

入手しやすそうな楽譜には、(任意の弦楽合奏のための)という言葉が含まれています。
https://www.academia-music.com/academia/search.php?mode=detail&id=1501379856

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雅之

>ご丁寧にありがとうございます。

ちっともありがたくない!!

混乱の不始末については、馬鹿にして誰も助けてくれないから、結局自分で責任を取るしかないのです。

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岡本 浩和

まぁ、そうおっしゃらず・・・。
知識が深まって良かったじゃないですか。
喜んでくださっている読者諸氏も多いことと思います。

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みどり

はじめまして。
検索中に偶然寄らせていただきました。

日本では余り知られていないようにも感じますが
「所詮二流」などという言われ様に反撥を覚えます。

オルガンのための12の性格的小品(Op.156)のPassacagliaなんて
なんという音の重なり方なんでしょう!
楽譜を探して無料のサイトで発見し、有難い時代になったな…とも。

いつかきちんと弾きたい…弾けるようになりたいです!

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岡本 浩和

>みどり様

こんにちは。
コメントありがとうございます。
ラインベルガーは二流じゃないですね、それは断言できます。
ご紹介のパッサカリアは未聴ですが、ぜひとも聴いてみたいです。

おっしゃるように確かに便利な時代になりましたね。

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