ヴェローナの「トゥーランドット」!

すみだ学習ガーデンさくらカレッジ第2期第9回「早わかりクラシック音楽入門講座」。
本日は2010年、アレーナ・ディ・ヴェローナでの「トゥーランドット」の公演を収録したBDをメインに講義を進めた。何といっても1年前に急逝したサルヴァトーレ・リチートラのカラフを拝めることが嬉しい。
2時間という尺の中で収めるため、第2幕の前半のみカットし、後は最初から最後まで鑑賞いただいた。20数年前の代々木での「アイーダ」の引っ越し公演に僕は触れているが、その時以上の本場の桁外れのスペクタクルが圧倒的スケールで迫ってくる。大画面、そして大音量で観るオペラの醍醐味。もちろん生には敵わないが、それでも参加者の手に汗握る様子、感動の心持ちが僕の方にも如実に伝わってきて、日本人というもの、オペラ、特にイタリア・オペラのカンタービレにシンパシーを感じるものなんだとあらためて確認させられた。
そういう僕も、音響チェックに講座前にカラヤン&ウィーン・フィルの録音で第3幕冒頭を聴いてみたのだが、いや、30年前の録音とは思えない鮮明かつ重心の安定した演奏で、これは当然カラヤンの音楽づくりそのものの影響も多分にあるだろうゆえ、カラヤンという指揮者の凄さについても再認識させられたので、そのことも良かった。

ところで、歌劇「トゥーランドット」。さすがにプッチーニ最後の未完の大作!台詞の端々に人として生きる上でのヒントが見られ、これは中国を舞台にした単なる猟奇的恋愛ドラマでないと感心した。

プッチーニ:歌劇「トゥーランドット」
マリア・グレギーナ(トゥーランドット)
カルロ・ポージ(皇帝アルトゥム)
ルイス=オクタヴィオ・ファリア(ティムール)
サルヴァトーレ・リチートラ(カラフ)
タマール・イヴェーリ(リュウ)
レオナルド・ロペス・リナレス(ピン)
ジャンルカ・ボッキーノ(ポン)
サヴェーリオ・フィオーレ(パン)
ジュリアーノ・ペリツォン(役人)
ジュリアーノ・カレッラ指揮アレーナ・ディ・ヴェローナ管弦楽団、合唱団、バレエ団
フランコ・ゼッフィレッリ(演出・舞台装置)(2010.8Live)

ここに描かれるドラマには他のイタリア・オペラの題材同様、愛と憎悪が横溢する。
この愛と憎悪は表裏一体。そして、愛の扉を開くのは、智慧と行動する勇気。
トゥーランドット姫を演じるグレギーナのいかにも冷淡な表情と仕草と・・・、そしてカラフの愛により「人間らしさ」を取り戻した時の愛くるしい表情と・・・。
何といってもリチートラ演じるカラフの勇ましさと揺るぎなさ!

何だか嬉しい。
たくさんのクラシック音楽入門者がオペラを好きになっていただけているようで。あるいは興味を持っていただけたようで。
それに皆さん何より素直。勉強したことをそのままにしないで、必ず復習される(CDやDVDを借りて視聴したり、オペラ映画に行ってみたり)。こういう様子を見ていると、講座をやっていて本当に良かったと思う。
ありがとうございます。


5 COMMENTS

雅之

おはようございます。

補筆完成版マニアの私としては、「トゥーランドット」を無視するわけにはいきません。

ご存知のように、このオペラは、一般的なアルファーノ補筆完成版の他に、ベリオによる余韻が深い補筆完成版も、一度は鑑賞しなければ、語れなくなりましたよね。

プッチーニ:トゥーランドット(ベリオ補作版) [DVD]
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%97%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%8B%EF%BC%9A%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%83%E3%83%88%EF%BC%88%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%AA%E8%A3%9C%E4%BD%9C%E7%89%88%EF%BC%89-DVD-%E3%82%A6%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%83%BC%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3/dp/B0000DJWCD

このDVDの上演記録は、ゲルギエフ&ウィーン国立歌劇場による、最高の成果のひとつであると信じています。

ご紹介の映像も、一般的なアルファーノ補筆完成版ですが、素晴らしいですね。古代ローマの円形競技場での宮殿のセットが豪華で見事ですよね。歌手も総じて高水準だと思いましたし、ゼッフィレッリ演出も、やっぱりいいですよね。

なお、ここでカラフを歌ったリチートラは、2011年8月27日にスクーターを運転中に事故に遭い頭部を強打し意識不明となり、9月5日に脳死宣告をされ、家族の同意のうえ、肝臓・腎臓・角膜が、臓器移植で提供されたといいます。パバロッティの後継者と目されていたのに、まだ43歳の若さで亡くなるとは・・・。
http://jp.reuters.com/article/entertainmentNews/idJPJAPAN-23036220110906

何だか、ベリオ版の結末以上の寂しさです。

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雅之

と、ここまで書いて、ブログ本文を全然読んでないことに気付きました。
大変失礼しました。申し訳ありません。

最近ここでコメント書く気力が、大きく減退しています。

当分夏休みに入らしていただきます(永久に休むかも)。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
べリオ補筆版は観ておりませんので、コメントできませんがぜひとも観てみたいです。
ありがとうございます。

>最近ここでコメント書く気力が、大きく減退しています。
当分夏休みに入らしていただきます(永久に休むかも)。

はい。ハローグッバイですね。卒業という見方も可能です。
4年超にもわたるやりとりありがとうございます。
いろいろと勉強させていただき大変感謝しております。

先日ふみ君の久しぶりに会って飲んだのですが、いずれ機会をもって3人オフ会をやりたいですね(その時はともみさんも呼びますか?・・・笑)

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雅之

>卒業という見方も可能です。

まさに。このところ、明確に潮時が来たのを、はっきり意識しつつありました。
これは、最近も話題にされた、ロック・バンドが解散する前夜と、極めて似た心境だったかもしれませんね。

こちらこそ、4年超にもわたりいろいろと学ばせていただき、感謝の極みです。
ありがとうございました。

今後の岡本さんのご活躍とこのブログの益々のご発展を、心よりお祈りいたします。

>3人オフ会をやりたいですね(その時はともみさんも呼びますか?・・・笑)

ぜひ! その時が来るのを、楽しみにしております。

返信する
岡本 浩和

>雅之様

次なるステージに向けて!!
ということですね。実際にロック・バンドの解散というのは発展的解消が多いです。
それにしても4年強というのは驚異的です。よくもったもんだと感心します(笑)。

ま、今生の別れではありませんので、雅之さんが東京にいらっしゃる折には必ずセッティングいたします。
4年前のあのオフ会よ、もう一度です・・・
http://classic.opus-3.net/blog/?p=2968

いずれにせよ長い間ありがとうございました!

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