ティボーデのサティ

灼熱の夏日に自転車を漕ぐ。
自転車で街中を流すといろいろな発見がある。道行く人のこと、自然のこと。
とても暑いのだけれど、日陰に入ると心地良い風が身体を包む。
特に、街路樹並木。木漏れ日を肌で感じながら、そして木々の息吹を感じながら走る。同じ日陰でもビルの谷間の影では残念ながら気持ち良さは感じない。

昔、僕が子どもの頃は一般家庭にエアコンなんてなかった時代。ましてや山村の集落ゆえ盛夏の折も朝晩は特に涼しく、そんなものは必要なかった。例えば、夏休みの今頃、真昼の高い太陽光線を浴びた身体の熱を冷ますのは木陰だった。とても涼しかった。そして心地良かった。

そんなことを思い出しながら自転車を漕いだ・・・。
そして、そういうときに脳内に流れるのはエリック・サティ。
「ジムノペディ」の退廃感、「グノシェンヌ」の人間の深層の恐れを抉りだすかのような音調、そうかと思うと陽気でありながらどこか悲しげな「ジュ・トゥ・ヴー」が突如顔を出す。

マジック・オブ・サティ
・ジムノペディ第1番(1888)
・グノシェンヌ(1889-1897)
・世俗的で豪華な唱句(1900)
・ジムノペディ第2番(1888)
・ジュ・トゥ・ヴー(1897)
・びっくり箱(1899, ミヨー編曲1926)
・夢見る魚(1901)
・ピカデリー(1904)
・アンゴラの雄牛(1901, ジョニー・フリッツ編曲1995)
・ジムノペディ第3番(1888)
・コ・クオの少年時代(母親の忠告)(1913)
・官僚的なソナチネ(1917)
・エンパイア劇場のプリマドンナ(1904, ハンス・オーディーヌ編曲1919)
・風変わりな美女(1920)
・「真夏の夜の夢」のための5つのしかめ面(1915, ミヨー編曲1928)
ジャン=イヴ・ティボーデ(ピアノ)

サティとドビュッシーの関係にフォーカスを当てていろいろと調べてみるととても面白い。
ドビュッシーが、例のエンマとのスキャンダルの際、多くの友人が彼を非難し離れていった中、エリック・サティは何事もなかったかのように以前と変わらずドビュッシーに接した。器が大きい。いや、というより拘りがないのだ。この辺りがまたサティの奇人変人ぶり。

いずれも20世紀現代音楽に多大な影響を与えた革新家だが、互いが互いを擁護し、認めあったと思えば、最終的にはドビュッシーが亡くなる直前に2人は絶縁することになる、そんな興味深い関係をもった2人だった。性質の異なる音楽について認め合っているうちは良かったが、どちらかが嫉妬し、劣等感を感じた瞬間にその調和は崩れる。
結局・・・、似た者同士なんだ・・・(変人?)


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。

>昔、僕が子どもの頃は一般家庭にエアコンなんてなかった時代。ましてや山村の集落ゆえ盛夏の折も朝晩は特に涼しく、そんなものは必要なかった。例えば、夏休みの今頃、真昼の高い太陽光線を浴びた身体の熱を冷ますのは木陰だった。とても涼しかった。そして心地良かった。

岡本さんの性格からすると、昆虫の採集や飼育なんてしなかっただろうなあ。
私は子供の頃、クワガタ、カブトムシ、カナブン、スズムシ、コウロギ、カマキリ、アリ、アゲハの幼虫、ミノムシ等々、いろんな昆虫を近くの雑木林などで採ってきては飼って、周囲から虫博士と呼ばれていたこともあります。

そんな当時の私が夢中になりバイブルにしていたのは、子供向けにやさしく訳された「ファーブル昆虫記」(古川晴男 訳 偕成社)でした。紛れも無く、この本との出会いが、私が自然科学の魅力にハマった原点です。

偉人としても、その、南仏な大自然をこよなく愛したフランス人、ジャン・アンリ・ファーブル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB
を小学生時代には最も尊敬していて、何年生だったかの夏休みの読書感想文も、彼の伝記を読んで書きました。

大人になってからは、奥本大三郎氏による優れた完訳版「昆虫記」
http://www.amazon.co.jp/%E5%AE%8C%E8%A8%B3-%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB%E6%98%86%E8%99%AB%E8%A8%98-%E7%AC%AC1%E5%B7%BB-%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3-%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AA%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%BC%E3%83%96%E3%83%AB/dp/4081310017/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1344030246&sr=8-1

を、1巻1巻、じっくりと何回も読み返しています。そこには、進化論に対し強く反論したり、子供のころは知らなかった、彼の様々な社会の中での一面が垣間見え、何回読んでも新たに新鮮な発見があります。

>結局・・・、似た者同士なんだ・・・(変人?)

というわけで、サティとドビュッシーの友情も、嫉妬も、絶縁も、所詮は音楽界の中だけ、つまりはコップの中の調和と嵐。奇人・変人と言ったって、昆虫や植物や鉱物マニアの私からすれば、ちっちゃいねぇ(笑)。

ところで、ウィキペディアにも、
「ジャン=アンリ・カジミール・ファーブル(Jean-Henri Casimir Fabre、1823年12月21日 – 1915年10月11日)はフランスの生物学者である。昆虫の行動研究の先駆者であり、研究成果をまとめた『昆虫記』で有名である。同時に作曲活動をしたことでも知られ、数々の曲を遺し、プロヴァンス語文芸復興の詩人としても活躍している」
とありますが、一度でいいいから、ファーブルが作曲した曲を聴いてみたいと、ずっと願っています。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。

>岡本さんの性格からすると、昆虫の採集や飼育なんてしなかっただろうなあ。

いや、そんなことはないですよ。しかし、雅之さんほどではなかったですね。

>周囲から虫博士と呼ばれていた
>この本との出会いが、私が自然科学の魅力にハマった原点

雅之さんの博学の原点ですね。子どもの頃から知的好奇心旺盛なところは尊敬に値します。

>何回読んでも新たに新鮮な発見があります。

「昆虫記」僕もじっくり読みたくなりました。

>昆虫や植物や鉱物マニアの私からすれば、ちっちゃいねぇ

雅之さんはドビュッシーやサティ以上に奇人・変人と言うことですね!(笑)
どうりで、いつも言い負かされてしまうわけです(笑)

>同時に作曲活動をしたことでも知られ、数々の曲を遺し

らしいですね。昔どこかでCD(あるいはレコード)を見かけた気がします。いくつかは録音が残ってるんじゃないでしょうか?ちょっとだけ検索してみましたが、見つかりません・・・。
興味ありです。

返信する
雅之

>雅之さんはドビュッシーやサティ以上に奇人・変人と言うことですね!

はい。
ちなみに岡本さんは、「生き物」として、どんな昆虫よりも面白い観察対象です(笑)。

↓ 私のコメントに反応する岡本さん。↓

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