いつまで経っても色褪せない

結構なチャレンジだったよう。
本日、第10回を迎えたさくらカレッジ「早わかりクラシック音楽入門講座」ではアルバン・ベルクのヴァイオリン協奏曲を採り上げた。20世紀を代表するもはや古典として認知される名作だが、入門者にはやっぱりハードルは高かった。「眠くなってしまいました」という淑女、「解説が無かったら全くちんぷんかんぷんだった」という紳士などなど。
まったくその通り、である。しかしながら、いわゆる西洋クラシック音楽を学習するという意味においては、十二音音楽(無調音楽)について避けて通るわけにはいかない。ともかく好き嫌いは別にして歴史を知ること、あらゆる角度から音楽について学ぶことが大切だと思ったので、無理を承知で半年前にあえてこの楽曲を選択したことをご理解いただきたい。

それにしても僕自身の勉強にとてもなった。楽曲の構造そのものを再度きちんと理解すること、そしてベルク自身が音楽に託した意味、など。わかってはいるものの、バッハの第60番カンタータのコラールを引用した第2楽章後半のパートに身も心も押し潰されて、自身の死を意識し、そしてマノンの死を真に嘆き悲しんだ作曲家の心情が見事に音のタペストリーとして表現されている点に舌を巻く。

メインには少し古い映像だが、ギドン・クレーメルがサー・コリン・デイヴィス&バイエルン放送響をバックに収録した30年ほど前のコンサートをDVDで鑑賞した。クレーメルの演奏中の陶酔した(だらしのない)表情はあまりいただけないが、切り詰められた緊張感に痺れ、ベルクの2人の女性への秘めたる思いが見事に音化されたエロティックなヴァイオリンの音色に興奮した。

ベルク:ヴァイオリン協奏曲「ある天使の想い出に」
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)
サー・コリン・デイヴィス指揮バイエルン放送交響楽団

ここ数日でいくつかの演奏を聴いてみたが、クレーメルの演奏はいつまで経っても色褪せない。彼のソロはもちろんのこと何より若き日のデイヴィス&バイエルン放送響のぶれのない独奏と一体化した伴奏(?)が見事。
例えば、第1楽章のケルンテン民謡の部分のヴァイオリンはとても禁欲的に聴こえるけど、クレーメルの表情は恍惚的(いつもか・・・笑)。
第2楽章の爆発的導入とクライマックスの壮絶さは目を見張るばかりだし、後半のバッハの引用部分についてはもはや純白の世界。

多分、この音楽に初めて触れた方々も、繰り返し触れているうちにいつの間にか虜になるだろうことを期待して(無理か・・・)。それくらいにこのコンチェルトは美しい(外面的美しさというより内面的なそれ)。
さて、次回の講座はシューベルトの「冬の旅」。こちらも入門者にはなかなか手強いもの。さて、どう料理するか・・・。


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