ピーター・ガブリエル&矢野顕子の朗読!!

いや、もうね・・・、これは本当にすごい仕事です。
一聴、言葉が出なかった。音盤を聴くや涙が出るほど。こんな企画は「天才の為せる業」としか言いようがないが(それは僕の知る限り仙波さんをおいて他にはいない)、ネットで件の音盤のことについて何か書かれていないかと検索し、amazonのレビューに驚きと絶賛の声がいくつか書かれているのを見て、首肯した。何せポール・ギャリコ(あの「スノー・グース」の作者)の物語を矢野顕子とピーター・ガブリエルが朗読し、音楽は井上鑑+デイヴィッド・ローズなのである。この音盤、どうやら今では簡単に手に入らなさそうだが(いやamazonで中古品は簡単に買えるよう・・・笑)、廃盤にしておくのはもったいない、というより罪である。井上&ローズの音楽もさることながら、日本語版では矢野顕子の可憐な声で、英語版ではガブリエルのあの上品な声でギャリコの小説が情感込めて語られるのだから。そうそう売れる代物でないのはわかるが、世のガブリエル・ファン、ジェネシス・ファン、あるいは矢野顕子ファンの皆が購入したとは思えない。とにかく復刻を願うばかり。

何より矢川澄子さんの翻訳が素敵。彼女は「ぞうのババール」でも素晴らしい仕事をされているが、日本語の言葉の選び方やフレーズの流れに感心するばかり。一片の雪を主人公に、女性の一生を投影し、語られるギャリコの物語は生きとし生けるものの儚さと、同時に魂は死ぬことなく、人が何をするために世の中に生まれてきたのかの意味を教えてくれる。ポール・ギャリコ作「雪のひとひら」(矢川澄子訳)の最後のシーン。

思えばすべてはつらなり関わりあい、たがいに補いあい、ひとつにとけあって、えもいわれぬ壮大な生の絵巻をくりひろげていたのではありませんか。ささやかな雪のひとひらに過ぎないこの身も、その大きな調和のなかではけっして無駄ではなく、どこかで何かのために、終始、役立っていたのです。
そう思ったとき、彼女の心はやすらぎ、あのなつかしいあたたかいものが、ふたたび身のまわりにたちこめはじめました。いままでもとめて得られなかったその何者かの、やさしいねぎらいのことばは、いまこそ空いちめんに美しくひびきわたっていました。
「ごくろうさまだった、小さな雪のひとひら。さあ、ようこそお帰り」

SNOWFLAKE by Paul Gallico
Akiko Yano + Peter Gabriel
Akira Inoue
雪のひとひら
井上鑑 音楽
矢川澄子 訳
ポール・ギャリコ 原作

日本語版、英語版の2枚組。詳細なライナーなども日本語版と英語版と。
感動した。ガブリエルが朗読だけで参加するのだとは思いも寄らなかった。リリースに至る詳細はライナーのデイヴィッド・ローズの言葉に詳しいが、井上鑑がローズに音楽作りを提案し、そしてローズがナレーターとしてガブリエルに白羽の矢を立てたみたい。
奇跡の1枚と言っても言い過ぎではなかろう。

興味深いのは、ジェネシス時代、そしてソロ時代と、声色を変えてはあれだけ演劇性に拘ったガブリエルのパフォーマンスが、この録音においては実に単色で随分そっけないこと。しかし、そこにこそ「雪のひとひら」の山あり谷ありの「人生」が広がっているのだと彼は読んだのだろう。どんな人の人生も宇宙の規模から見つめたらほんの一点に過ぎない。「固執」することなど何もない・・・。

たかるつもりは毛頭なかったのだけれど、松本隆の「水車小屋」のことを書いたら仙波知司さんから今度は前述の音盤を贈っていただいた。いつぞやガブリエルの4枚目のドイツ語バージョンについて記事にしたとき、過去にそういう仕事もされたことをコメントいただき、良かったら送りましょうとおっしゃっていただけていたものなんだけれど。
本当にありがとうございます。畏れ多くも仙波さんとの出逢いがなければおそらく聴くことができなかったであろう「作品」を多数お送りいただき真に感謝いたしております。
この場を借りてあらためてお礼を申し上げます。ありがとうございます。

3 COMMENTS

ヤマザキ

こんばんは。 ヤマザキです。

矢野顕子は私が大学生の頃デビューして独特の
力が入らない歌い方が気に入って、渋谷の今はなき
ジャン・ジャン等のライブに4・5回行きました。

卒業後栃木に赴任していた時も、田舎の公会堂
にピアノさえあればどこにでも出演するという「出前コンサート」
があり、聴きに行きました。
彼女はピアノの名手でいつも即興演奏で、FMではサティなど
を弾いた記憶があります。

2・3年前に「崖の上のポニョ」でポニョの妹の声でアニメにも
出演していましたが、このような朗読をしていたとは知りませんでした。

キャメルのスノーグースも愛聴盤だったのでコメントしました。

返信する
岡本 浩和

>ヤマザキ様
こんばんは。
そうそう、そうですよね、ジャンジャンでも当時やってましたし、出前コンサートもありました!
懐かしいですね。
ヤマザキさんが矢野顕子ファンだとは知りませんでした。
「スノーグース」も愛聴盤だったということでしたらこの音盤は絶対に聴いていただきたいですね。
amazonで安価で手に入りますのでぜひとも!

返信する
中井恵子

こんばんは、中井です。

早速のご返信に感動です!!何卒よろしくお願い致します。

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