peter gabriel deutsches album

その昔、現地語でのオペラ上演が当たり前のような時代があった。
例えば、フルトヴェングラーが指揮する「フィガロの結婚」はドイツ語上演で、残念ながらこれは未だに違和感があるが、日本でも朝比奈先生が「蝶々夫人」などを自らの日本語訳台本で上演されていたという話は有名。確かに、舞台の台詞が母国語でやられると内容がスムーズに理解でき都合は良いが、オペラの場合、言葉(歌詞)を音楽の一部として捉えるのが通常なので、やっぱり座り心地が悪いのは否めない。
今頃ではそういう冒険をする人はいなくなったのだろうが(聴衆にニーズがなくなったともいえる)、オペラにせよ何にせよ、声楽曲の邦訳での上演というものがあったら聴いてみたいとたまに考えることがある。

そんな矢先、これまた仙波知司さんから素敵なプレゼントが届いた。
先頃、ボストリッジと内田光子によるシューベルトの「美しき水車小屋の娘」を採り上げたところ、福井敬&横山幸雄による松本隆日本語訳「水車小屋」があるがお持ちかというメッセージをいただいた。存在はもちろん知っていたが、何だかゲテモノ扱いをしていたようで完全に無視していた代物。しかしながら、ここのところはそういう新たな試みに俄然興味を抱いていたこともあり、そして何より「水車小屋」の魅力を再発見した時だったので、厚かましいとは存じながら二つ返事でお願いした。

ところが、いただいたは良いものの、それからバタバタ続きで、実際にはまだ聴けていない。慌てずゆっくりと、そして何度かじっくり聴いた後感想を記事にしようと思っている(ということで仙波さん、他にもいただいた貴重な音盤がありますが、もたもたしてすいません)。

さて、現地語云々という話題で思い出した。ビートルズなどもそうだが、昔はドイツ語などによるバージョンがよく録音され、リリースされていた。フランス語でもイタリア語でもなく、どういうわけかドイツ語が多いのは気のせい?英語の歌唱になれている耳には確かに最初は戸惑いがあるが、すぐに慣れてしまう。そういう際物的アルバムの中でも傑作中の傑作を。

peter gabriel  deutsches album

Personnel
Peter Gabriel
Jerry Marotta
Tony Levin
Larry Fast
David Rhodes
John Ellis
Roberto Laneri
Morris Pert
Stephen Paine
David Lord
Peter Hammill
Jill Gabriel
Ekome Dance Company

82年にリリースされた4枚目のドイツ語バージョン。サード・アルバムにも同様の版が存在するが、こちらの特長は曲順が若干入れ替わっていることと、アレンジそのものに結構な違いがあること。のっけから衝撃。”Der Rhythmus der Hitze”冒頭のピーターの叫びから随分印象が違う。”San Jacinto”は4曲目に下がっているが、もともと愛着のある曲が斬新な響きで心に伝わる。個人的には白眉だと信ずる”Wallflower”(独バージョンは“Nicht die Erde hat dich verschluckt”)の静謐さはドイツ語になっても同じく。ラストの”Mundzumundbeatmung”は”Kiss Of Life”にはなかったコーダが付いてるし・・・。
本当に久しぶりに取り出したが、そもそもフォース・アルバムがある意味最高傑作(集まったミュージシャンの顔ぶれが半端でないし、懐かしい)なのではと思っている僕にとってはやっぱり涙もの。まるで別のアルバムを聴くようだから。5枚目以降でこういう試みがないのが今となってはとても残念。


3 COMMENTS

みどり

おはようございます。

岡本さん、20世紀バレエ団もお好きだったようだからご存じかも
しれませんが、”The Feeling Begins”を使ったアイスダンスの
プログラムがあります。

1997年の世界選手権で優勝しているロシアの
オクサナ・グリシュク&エフゲニー・プラトフのフリーダンスです。
いいですよ!

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岡本 浩和

>みどり様

“Passion”も良いアルバムですよね。ガブリエルの中でも隠れた傑作だと僕は思っています。
グリシュク&プラトフのフィギュアは知りませんでした。
今Youtubeで確認しました。
http://www.youtube.com/watch?v=aLmywlzRkv0&playnext=1&list=PL85A15797F75751AB&feature=results_main

良いですね!!素晴らしい!最高です。
毎々貴重な情報をありがとうございます。

返信する
アレグロ・コン・ブリオ~第5章 » Blog Archive » ピーター・ガブリエル&矢野顕子の朗読!!

[…] たかるつもりは毛頭なかったのだけれど、松本隆の「水車小屋」のことを書いたら仙波知司さんから今度は前述の音盤を贈っていただいた。いつぞやガブリエルの4枚目のドイツ語バージョンについて記事にしたとき、過去にそういう仕事もされたことをコメントいただき、良かったら送りましょうとおっしゃっていただけていたものなんだけれど。 本当にありがとうございます。畏れ多くも仙波さんとの出逢いがなければおそらく聴くことができなかったであろう「作品」を多数お送りいただき真に感謝いたしております。 この場を借りてあらためてお礼を申し上げます。ありがとうございます。 […]

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