Paul McCartney “Here Today” (1982)

曲作りというのは、音楽的な旋律やハーモニーを考え出すことであり、その作品がシンセサイザーで演奏されようと、100人編成のオーケストラで演奏されようと、同じ音楽にすぎない。基本的な仕組は変わらないのである。編曲は、をの作品に生命を吹き込む役目をするのである。その彩りをいかにするかによって、基本的な旋律に対する聴衆の受け取り方が変わってくるのだ。
こうしたことを強く感じたのは、ビートルズが現われた時だった。彼らの曲を理解できない人は大勢いた。騒音で音楽が聴こえなかったからである。人々はビートルズを騒々しい、不快なグループとみなした。ちょうどパンク・ロックのようにである。平均的な中年の人が彼らの演奏を聴くと、「まったくヒドイ雑音だ!」といい、音楽に耳を傾けるどころか、ハーモニーも言葉さえも聴かなかった。

ジョージ・マーティン/吉成伸幸・一色真由美訳「ザ・ビートルズ・サウンドを創った男―耳こそはすべて―」(河出書房新社)P42

ポールのアコースティックに弦楽四重奏というテッパンの、ジョンに捧げる歌。
ジョージ・マーティンのプロデュースであることが嬉しい。

ジョンの死の前年に上梓されたマーティンの”ALL YOU NEED IS EARS”はプロデューサーとしてのマーティンのあり方、そして音楽面におけるその役割が体験をもとに綴られていて面白い。

そして、ポールの歌はジョンの死の翌年に、友人への愛情、思いを重ねた美しい歌だ。

・Paul McCartney:Here Today (1982)

Personnel
Paul McCartney (lead vocals, acoustic guitar)
Jack Rothstein (violin)
Bernard Partridge (violin)
Ian Jewel (viola)
Keith Harvey (cello)

ジョンが凶弾に斃れたとき、僕は高校生だった。
そして、ポールがアルバム”Tug of War”をリリースしたのは浪人中のことだった。
この名作を明確に意識して聴いたのは、翌年、上京し、偶々FM放送で流れていた音楽に惹きつけられたときだった。

人の死は人に優しさと勇気を与えてくれる。
一世を風靡したコンビの心の声が切なく、また恋しい。

And if I say I really loved you
And was glad you came along.
Then you were here today,
Uh, uh, uh, for you were in my song.
Uh, uh, uh, here today.

ジョンはポールの歌の中にいる。

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