“The Who Live At The Fillmore East 1968” (1968.4.6Live)を聴いて思ふ

C.G.ユングは、人間誰しもが持つ機能を4つに分類した。すなわち、思考、感覚、感情、直観。今の時代、そのすべてを統合して使うことが重要だろう。

ザ・フーが1973年にリリースしたロック・オペラ「四重人格」
メンバーそれぞれの個性を示す4曲は奇しくもユングの上記タイプ論に一致するのではないかと思い至った。すなわちロジャー・ダルトリーの”Helpless Dancer”は思考を、キース・ムーンの”Bell Boy”は感覚を、ジョン・エントウィッスルの”Doctor Jimmyは感情を、そして、ピート・タウンゼントの”Love Reign O’er Me”は直観を、ということである。ちなみに、このアルバムの頂点は4つのテーマが見事に統合されるインストゥルメンタル・ナンバー”Quadrophenia”。痺れる。

“Love Reign O’er Me”は、この世界のすべてに見下され、見限られた人間が感じるこの上ない悲哀を表現するために書いた曲だったが、スタジオでこれを歌うロジャー・ダルトリーのあの独特の叫びを聴いたとき、そこにさまざまな思いが込められていたことに気付いた。激しい怒り、挫折感、救いようのない悲しみ、自己憐憫、孤独、自暴自棄、絶望、失恋、幼年期の喪失といったものである。10代特有の漠然とした不安。自分は誰にも理解されていない―10代のころ誰もが抱き、思い悩むそんな不安を、取るに足らないものと片付けるのは容易い。しかしながらそのとき感じる苦しみは本物で、我らが主人公、ジミーに自殺を考えさせるほど痛切なものなのである。
(ピート・タウンゼントによるイントロダクション)
~UICY-10025/6ライナーノーツ

ピート・タウンゼントの作曲能力は天才的だ。しかし、表現者という意味で、ザ・フーは、キース・ムーンあってのバンドだった。それは彼らのライヴを耳にすれば一聴瞭然。延々といつまでも続く、激しくも感動的なインタープレイこそその証。33分に及ぶ”My Generation”の、特に驚くべきリズム隊、キースのぶっ飛んだドラムスとジョンの芸術的なベース・プレイのぶつかりと調和の様を聴き給え。よくもこんなプレイが即興でできたものだと感心する。ピートのはにかみがちのMCがまた心地良い。

立秋の日、ザ・フーの、1968年のフィルモア・イーストでのライヴを聴いた。実に感動的。
彼らが屈指のライヴ・バンドであることをあらためて痛感した。時代のせいもあろうか、あるいは若き彼らの暴力的なまでのパッションのせいもあるのか、怒涛のいかれたライヴが爆音とともに僕たちの心魂を劈くのである。

・The Who Live At The Fillmore East 1968 (1968.4.6Live)

Personnel
Roger Daltrey (lead and backing vocals, rhythm guitar, harmonica, percussion)
Pete Townshend (lead and rhythm guitar, backing and lead vocals)
John Entwistle (bass guitar, backing and lead vocals)
Keith Moon (drums, backing)

ライヴは”Summertime Blues”から始まる。
他のどの時より激しくも勢いのあるイントロから、キーマンはジョンとキースだ(もちろんピートのギター・ソロのうねりも並大抵ではないが)。まるで当日の会場にいるのかと錯覚するほどの生々しさ。

ちなみに、前年リリースのアルバムに収録されたトリップ音楽”Relax”は12分ほどの長尺版。ここでも解放されるエネルギーが半端でない。怒りを露わに、世界が平和を希求したあの時代に、音楽家たちは自作を携え、聴衆に「愛」を訴えかけた。そういえばこの2年前の夏、ジョン・コルトレーンが最初で最後の来日を果たし、全国を縦断し奇蹟のパフォーマンスを披露していたのだった。

1966年7月22日、新宿は厚生年金会館での、1時間近くにも及ぶ”My Favorite Things”も、冒頭、ジミー・ギャリソンの15分にも及ぶ異様なテンションのベース・ソロが、何とも呪術的な魅力を放っていた。

おそらくあの頃は、今以上に人と人とのつながりが強固だったのだろうと思う。
再び統合するべき時代の到来だ。

 

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