いつの時代もマスメディアが大衆を煽動する。何が「真実」なのかがまったくわからなくなる、正直・・・。
リュック・ヌフォンテーヌ著「フリーメーソン」を読んでいて、この辺りの事情には疎かったのだけれど、19世紀後半にレオ・タクシルというフランスの作家(?)が反メイスンを儲け口にしていくつもの「フリーメイスン」に関する書籍を出版し、いわばそれがきっかけで、メイスン=秘密結社説というのが定着したということを知り、驚いた。例えば、20世紀前半にはナチスも反フリーメイスンだったというが、それは、すべての権力がユダヤ人君主の手にわたり、平和な世界を永久に統治する日が来るまでシオニストはあらゆる体制を内側から侵蝕してゆくという陰謀説が根拠になっているというのだから滑稽だ。
で、ここで何が言いたいのかというと、フリーメイスンにしても「真実」は一体どうなのかということ。少なくとも入会するには何らかの「信仰」をもつことが条件とされているということ、あるいは過去の様々な分野で活躍した天才たちが会員として名を連ねていることを考えると、かの団体はやっぱり真っ当なもので、彼らが掲げる「自由・平等・友愛」というものに正面から取り組んでいるのだろうと僕などは信じてしまう。
いずれにせよ内部のことは漏らさないという規定がある以上、いつまでたっても「本当のところ」はわからないのだろうけれど。
さて、モーツァルトがメイスンに誘ったお蔭で、結果的にハイドンは1785年2月11日に「真の融和ロッジ」に入会することになった。その直前1月15日と、ハイドン入会の翌日2月12日にモーツァルトは自宅にハイドンを招き6曲の連作四重奏曲を聴いてもらい、ハイドンに献呈している。2月12日の際にはちょうどウィーンを訪れていた父レオポルトも立ち会っているというのだから真に興味深い。
2月16日付ナンネル宛のレオポルトの手紙。
「ハイドン氏は私に申しました。『誠実な人間として神にかけて申しますが、あなたの御子息は、私が直にあるいは評判によって知っている作曲家の中で最も偉大な作曲家です。趣味とその上全く優れた作曲の技術をお持ちなのです』」
まさに天才同士の邂逅。
モーツァルト:
・弦楽四重奏曲第14番ト長調K.387
・弦楽四重奏曲第15番ニ短調K.421(417b)
ウィーン・アルバン・ベルク四重奏団(1977.1.21録音)
ABQの旧録音。若々しさが漲ったモーツァルト。
確かにモーツァルトのクァルテットはこの第14番から一層の高みに到達する。この作品群も他からの委嘱でなく自発的に生み出されたもの。明らかにフリーメイスンの影響下にある音楽である。
その分、当時の聴衆からは理解してもらえなかっただろう。
このあたりがおそらくモーツァルトの「経済的困窮」の出発点なのだろう。
僕は思う。確かに生活と芸術とのバランスは重要だけれど、とはいえ自身のクリエイティヴィティは犠牲にしてはならないと。もしもモーツァルトが「真っ当な生活」を選んでいたら後期の交響曲も協奏曲も室内楽曲も生まれなかっただろう。そう考えると恐ろしいものだ。
この音盤、僕が購入したCDの最初期のもの。キングからの国内盤だが、何と3,500円!!