僕は日常的に「踊る」趣味はない。
それこそ昔、いわゆるディスコというものが流行った頃、仲間に誘われて何度かトライしてみたことはあるけれど、まったく性に合わない。あの雰囲気もそうだが、とにかく上手く踊れない、のである(だーんすは、うまっくおどれーないー)。
いわゆるクラブが午前0時以降に営業することに対して風俗営業法を適用して摘発されるケースが増えているらしい(朝日新聞朝刊より)。何でも「男女間の享楽的雰囲気が過度にわたる可能性」を理由にペアダンスも規制対象になるんだと。問題が起こると法律によって規制。うーん、いくら何でもという気がするが・・・(問題の抜本的解決には決してならないから)。
その昔、ヨーロッパの貴族の間ではダンスが持て囃された。いわゆるメヌエットというものがそのための音楽だ。で、貴族ばかりでなく平民だって踊るのが好き。そこで出てきたのがワルツ。ハイドンもモーツァルトも、そしてベートーヴェンですら依頼があればダンス・ミュージックを作曲した。そう、彼らのような人気作曲家ともなると生活のためにそういう音楽も書いたということだ。例えば、晩年のモーツァルトにあった依頼はほとんどが舞曲。しかもまたさすがにモーツァルトで、見事なダンス音楽を作曲しているのだから素晴らしい。
新年と言えばウィーンのニューイヤーコンサート。シュトラウス一家のワルツやポルカが中心の華麗な催しだけれど、こちらも長い間僕は観ていない。少々ひねくれているからだろうけれど、あまりにワールド・ワイドになり過ぎたものよりただただ気に入った音楽に一人静かに浸りたい。せっかくだから今日は200年前の「享楽的」音楽でも聴いてみようか。七草の日にベートーヴェンが作ったダンス音楽を。
完璧なるポピュラー音楽。かの楽聖の手からこういう音楽が生れていたことが驚き。まさに脱力で愉悦感溢れる舞曲が目白押し。特に、「メートリンク舞曲集」(こちらはワインガルトナー指揮のもの)などは1819年の作品。ちょうど「ミサ・ソレムニス」に取り組んでいた時期のもので、ああいう厳粛な作品の傍らこういう音楽が難なく書けるのだからベートーヴェンはやっぱり天才。
何でもウィーン郊外の湯治場バーデンに行く途中にあるメートリンクという小さな村のホテルのバンド(7人編成)のために書いたそう。
聴いていて落ち着く。そして、心が休まる。何て素敵なダンス音楽たち・・・。