至高のシューベルト

schubert_quintet_abq.jpg慌しい一日だった。午前中、杉並公会堂で2月のコンサートの打ち合わせ。終了後、その足で御茶ノ水に向かう。小1時間ほど過ごした後帰宅し、講座の準備。
第33回目となる「早わかりクラシック音楽講座」。何と2月で4年目に入る。我ながら大した「継続力」である。今回は3年間で初めてとなる歌曲王シューベルトを採り上げた。長いクラシック音楽愛好人生の中でこの作曲家について興味を持って追究したことはなかったように思う。しかしながら、こういう機会を得て、再度伝記をひもとき、重要作をじっくり聴いてみると思った以上に美しさに惚れ惚れとし、わずか31年という人生ながら大傑作を多く残したこの芸術家が真の天才であったことがよく理解でき、今後より深く聴き込んでみようと思わせてもらえたことが何よりの収穫だった。詳しくはまた「早わかりクラシック音楽講座」のホームページにアップするが、参加者の感想でも「メロディの美しさ」、そしてそこから感じられる「愛」や「苦しみ」などについてとても共感できたというものが多かった。シューベルト良かったなぁ・・・。

それにしても晩年のシューベルトの孤高の境地は半端でない。最後のピアノ・ソナタなどクラシック入門者諸君にも相当な衝撃を与えたようだし、あの音楽が連綿と続く冗長さに僕など飽き飽きすることも多いのだが、逆に惹かれるという人もいた。そして、何より父親への憎悪の裏側に潜む「愛」が見事な音楽として昇華されている点が素晴らしい。それにまた、あと数ヶ月の命であるにもかかわらず(もちろんそんなことは本人が知る由もないが)、その創作意欲、自己成長意欲の尋常でない高さは、ひとりの人間としても見習いたくなる。未来の不安より、とにかく「今を生きる」ことが大事なんだ。まさにそんなことを後世の我々に投げかけてくれるような生き様。だから彼の作品は瑞々しく、活き活きしている・・・。

シューベルト:弦楽五重奏曲ハ長調D.956
ハインリヒ・シフ(チェロ)
アルバン・ベルク四重奏団

死の年に生み出された作品から唯一の弦楽五重奏曲を聴こう。通常の四重奏の編成に一本のチェロが加わることで一気に重厚な響きに変貌する五重奏の極致のような筆致。光と翳が錯綜し、生の歓びと死の不安が明滅する。彼の人生を振り返った後に聴くと一層の深みと愛おしさが感じられる名作。歴史に「もし」はタブーだが、あと何年かシューベルトが生き永らえていたならどんな傑作が生み出されたのだろうか。とても興味深い。

ところで、夜は「ワークショップZERO」にご参加いただいた方々を中心に忘年会。菜食料理、3種の自家製カレーを肴に大いに盛り上がる。

みなさん良いお年を!!


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
シューベルトは、仮にクラシック音楽に飽き飽きして聴きたくなくなっても、死ぬまで付き合っていけそうな作曲家だと思っています。弦楽五重奏曲ハ長調も、年老いても一生聴き続けることのできる曲じゃないですかね。
シューベルトや弦楽五重奏曲について、今年も様々な角度からコメントさせていただきましたので、今朝は今年を振り返って別な話題を・・・。
先月、オーディオ好きの友人宅で、友人が所有しているショルティの「ニーベルンクの指環」やC・クライバーのブラームスの第4交響曲などの新しく出たリマスターSACDを、リマスターCDと比較試聴しました。
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/sacd/index.html
いやー、信じられないくらい音が全然違う!! もう来年は、CDは一切買うのはやめようと冗談抜きに考えています。SACDとダウンロードがあれば、これからは充分のような気がしています。
6月に話題にしました『Sacred Rhythm Of Bali: バリ ガムラン ミュージック: スロ-ライフへの誘い』
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-165/#comments
も自宅で、通常の2チャンネルですが、SACDとCDを比較してSACDの音の素晴らしさを実感しています。このSACDも、無人島に持っていきたいくらいの愛聴盤のひとつです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
かねてからSACDの音の素晴らしさは承知しておりましたが、ショルティの「指環」やクライバーのブラ4の比較試聴というのは刺激的ですね。
>SACDとダウンロードがあれば、これからは充分のような気がしています。
なるほど。それはこの先僕も考えないとですね。ほんとは所有の音盤の中で「これは!」というものは買い換えたいところですが、なかなかそれも厳しいものがあります。
以前ご紹介いただいたガムランのCDは興味深いですね。結局まだ手に入れてませんが・・・。

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