バーンスタイン指揮ウィーン・フィルのブラームス交響曲第4番ほか(1981.10Live)を聴いて思ふ

brahms_4_bernstein_vpo717もっと暗澹たる印象を僕は持っていた。
もっと気難しいものだという記憶が僕にはあった。
ここでは、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団がそのスタイルを全面的に押し出し、柔らかく温かい音色でもって勝負を仕掛ける。何て明るいブラームス。レナード・バーンスタインがいかに楽天的な性格の持ち主であったかがわかる。
堅牢で、ある意味晦渋な交響曲第4番が、とっつきやすく、かつ晴朗な印象を与えてくれるのだから実に興味深い。しかも、30余年前に頻繁に聴いていた頃のイメージとはるかに異なるのだからなおさら。時間というものが変化を生み出すことは間違いなかろう。

第1楽章アレグロ・ノン・トロッポは、淡々と進められながらも、音の背後にある作曲家の意志がしっかりと捉えられていて、芯のぶれない緊密度の高い音楽に満ちる。
また、第2楽章アンダンテ・モデラートには、粘りはあるものの、最晩年の異常なそれではなく、もっと自然体の、音楽の要求にぴったりと応える粘りで、もたれず、極めて美しい。あるいは第3楽章アレグロ・ジョコーソ冒頭の爆発に感極まり、傑作終楽章パッサカリアにおける棒のコントロールの見事さに舌を巻く。特に、第24変奏以降の、激烈な解放と集中によって生じる巨大さと雄渾さに僕は心を奪われるのだ。
脱力のバーンスタイン。

ブラームス:
・交響曲第4番ホ短調作品98
・悲劇的序曲作品81
レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1981.10Live)

一層素晴らしいのは「悲劇的序曲」。その名の通り激しい哀感に溢れる主題はバーンスタインによって重厚に紡がれ、聴く者を圧倒する。
展開部でのあらゆる感情を導入した表現にブラームスの喜怒哀楽を思い、一方、再現部からコーダにかけての音響に作曲家の解放と安寧を僕は思う。
レナード・バーンスタインは同業者だけあって、作曲家の深層に寄り添い、音楽に人間的な意味を見出すことが巧みだ。何て人間的なブラームス。
優しいバーンスタインの知的なブラームス。
知的なバーンスタインの優しいブラームス。
音楽はとことんうねる。
音楽はとことん泣く。また、どこまでも弾ける。

 

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2 COMMENTS

雅之

>しかも、30余年前に頻繁に聴いていた頃のイメージとはるかに異なるのだからなおさら。

ほんと、読書と一緒ですよね。

岡本様も、そろそろ作曲年齢を追い越したかな?

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