物事を新鮮な目で見るには、習慣的な考え方や見方を止めることからはじまる。しかしこれは言うは易し行うは難し。こういう能力を開発するには「保留する能力を磨き上げること」、すなわち習慣的思考と自分自身を切り離すということが重要らしい。
それまでにない新たな画期的創造物を生み出す天才というのは「保留する力」に長けているということか、裏返せば「奇人変人」である可能性が高い。
昔、初めて”I’m not in Love”を聴いたとき腰を抜かすほど感動した。たぶん・・・、NHK-FMだったか何かで偶然耳にしたのだと思う。ロック音楽、ポピュラー音楽の奥深さをこれによって知らしめられたと言っても言い過ぎでない衝撃的体験。ちょうどKing Crimsonの”Epitaph”やYesの”Roundabout”にはまったのと同じくらいの頃。引いては寄せ、寄せては引く波の如く、多重録音と気の遠くなるようなテープ編集を繰り返し生み出された何とも神秘的で深遠なコーラス・ワークは、発表から40年近く経た今聴いてもまったく古びない。これだけで10ccは不滅だと断言できる。
エリック・スチュワート&グラハム・グールドマンのメロディ創作の才能、つまり時間軸としての音楽がこの2人によって守られ、ケヴィン・ゴドレイ&ロル・クレームの2人によって立体的なサウンド構築、つまり空間軸としての音楽に磨きがかけられ”I’m not in Love”は誕生した。瞑想状態から冷めやらない意識が遠のくようなあのコーラスは実際にゴドレイ&クレームによる偏執的共同作業の賜物のようだ(笑)。
I’m not in love
So don’t forget it
It’s just a silly phase I’m going through
And just because
I call you up
Don’t get me wrong, don’t think you’ve got it made
I’m not in love, no no, it’s because…
Personnel
Graham Gouldman (bass, guitar vocals)
Eric Stewart (vocals, guitar, keyboards)
Lol Creme (vocal, guitar, keyboards, gizmo)
Kevin Godley (vocals, drums)
ゴドレイ&クレーム作曲のロックオペラ”Une Nuit Paris”はクイーンさながらのオペラティックなコーラスが聴きもの。8分半に及ぶ3部構成のこの組曲は10ccというグループの性質のひとつの側面を的確に表している。複雑な音の動きと、登場人物ごとに声色を替え、4人が完全一致の調和状態で創り出した壮大なドラマ。繰り返し聴くと・・・、はまる。
“I’m not in Love”は10ccのもう一つの側面を表す。すなわちこちらはスチュワート&グールドマンによる作曲。あまりに美しいマスターピース。何と言ってもメロディラインの美しさが随一なのだけれど、こちらも前述したようにゴドレイ&クレームによる神々しいサウンド・メイキングあってこそのもの。
このアルバムの後もう1枚アルバムを残して2つのチームは残念ながら分裂する。
つまり、スチュワート&グールドマンは10ccを引き継ぎ、ゴドレイ&クレームはゴドレイクレームとして活動を始めるのである。
オリジナル10ccもビートルズやツェッペリンの神話同様、4人が揃ってこそのものだった。
この「瞬間」は「奇人変人たち」が「偶然」という必然を借りて作り上げた奇跡。
“I’m not in love”、後世に遺る名曲だと思うのですが…あの鬱陶しい
歌詞が苦手で…(笑)
「好かれて困っている」という解釈が存在すると知った時は驚きました(笑)
サウンドの秘密ということで興味のある方はこちらをご参照いただけると
よろしいかと思います。
http://skjmmsk.blog.so-net.ne.jp/2012-10-02
ビリー・ジョエルの「素顔のままで」のエンディング、やはりそうですよね?
紹介されているのって短いヴァージョンなのでしょうか?
6分ちょっとのオリジナルしか知りませんでした。
>みどり様
いやあ、素晴らしい!ご紹介のサイトのお蔭でいろんなことがわかりました。
ありがとうございます。
やっぱり4人の才能の集結の賜物ですね。
あの、ベースソロの前のセクシーヴォイスの成り立ちについても知りませんでした。
「素顔のままで」も同じ手法だったということに今更ながら驚いてしまいました。
紹介のYoutubeは短い方だと思います。やっぱりオリジナルのヴァージョンがベストでしょう。
それにしても「好かれて困っている」という解釈が存在するというのはいかがなものでしょう?(笑)