Lenny Kravitz:MAMA SAID

あらゆる楽器を縦横に操る人の脳みそはどんな風なのだろうと昔から思っていた。
しかし、逆に言うと西洋の音階というルールに則って「音楽」というものができているのだから、「できる人」というのは何でも「できてしまう」ということなのだろうか。
オールマイティであるがゆえの「穴」というか、「欠点」というか、そういうものが気にならないでもない。

昔、レニー・クラヴィッツを初めて聴いた時、こいつはすごいなと直感した。
音の感触を上手く言葉にして伝えられないのだけれど、ストレートでありながら実にファジーな音作り、電子音なのだけれど生に近い感覚。あるいは夢の中で聴いているような、いや、自分の中で音が鳴っているような、そんな感覚に陥った。

ちなみに、僕の洋楽に対する耳は1990年代中頃で完全にストップしている。
本当はもっとアンテナを鋭くして、流行のポピュラー物を思考に取り入れた方が幅も広がるのだろうけれど、何だか最近はそういう意欲までもが削がれてしまっていて、昔のようにがつがつと新しい音楽を開拓しようという思いがとても薄い。それは他のジャンルでもそうで、音楽(特に音盤)に対しての執着心がある意味減退してきているのかも。良いことなのかどうなのかどれはわからないけれど。

久しぶりにレニー・クラヴィッツを聴いた。やっぱり良い。もう20年も前のアルバムだけれど、味が濃くて斬新で、ひとたび耳にしたらばつい集中して聴いてしまう「うねり」がある。それと独特の退廃感。20世紀末の閉塞感のようなものが反映される一方で、そこを抜け出さんとする前屈みのエネルギーの噴出にはまったんだったか・・・。来日コンサートで武道館にも行った。盛り上がった。5枚目くらいまでは彼を追っていたけれど、それもいつの間にか立ち消えになった。嫌いになったわけじゃないのに・・・。

Lenny Kravitz:MAMA SAID

Personnel
Lenny Kravitz (vocals, drums, bass, guitars, prophet synthesizer, mellotron, fender rhodes, sitar, organ)
Henry Hirsch (piano, organ, mini-moog, string machine, bass)
Karl Denson (saxophone)
Slash (guitar solo)
Sean Ono Lennon (piano)
Phenix Horns (horns)
Zoro (drums)
Lebron Scott (bass)
Adam Widoff (guitar)
Mike Hunter (trumpet)
Nancy Ives (cello)

音楽が耳から離れなくなる。レニクラの最高傑作か?(1998年以降聴いていないので断言できない)おそらく、彼自身マルチプレイヤーであることがアルバムの、というか各々の楽曲の全体像をきちんと把握した上で細部を完璧に構築していくというスタイルをとっているのだろう。例えば、モーツァルトがシンフォニーを作曲する際にすべての音が頭の中で既に鳴っており、そのまま譜面に起こしたというような、そんな神業的なものがこの人の中にもあるのだろうか・・・。

What the fuck are we saying?
Do we feel what we dream about?
We’ve got to keep on praying
And one day we’ll see the light


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