マーヴィン・ゲイ~R&Bとの出逢い

marvin_gaye_whats_going_on.jpgR&Bというジャンルは若い頃苦手だった。今でも決して得意ではない。例えば、演歌風のこぶしの効いた歌いまわし。昔、The Beach Boysのコンサート・ビデオを観ていて、彼らのコンサートに飛び入りで黒人アーティスト(誰だったか失念したが)が出てきて、突然God Only Knowsを歌い始めた時、Carl Wilsonの例の澄んだ歌声と比べて、何だか田舎者の、上手いんだけど何か違うんだよなぁという歌い方にかなり失望し、滑稽やら何やらで二度とそのビデオを観なくなった苦い思い出を思い出す。確かに演歌も得意でない。というより、日常的に聴く気に全くならない。そういえば、先日のコメント欄で話題になった藤圭子もその類かもしれないが、彼女の場合は少々意味合いが違う(あくまで僕的に)。都はるみ風の独特のこぶしと違った妖艶なハスキー・ヴォイスは逆に好みだから許せるのである。ただし、これは実はそれほど根拠があって好き嫌いを述べているのではない。何となく直感的に言及しているに過ぎないので、そのあたりは大目に・・・。

I氏と銀座で一杯飲みながら、普段交わさないようなプライベートな話からキャリアや仕事に関する話まで多様に盛り上がった。来月から首都圏の大学のキャリア支援講座の講師としても働くことになるゆえ(だから髪を切り、色も黒く戻した)、いろいろと参考にさせていただこうと「人事の眼」から見た面接の合否ポイントを伺った。何と、面接終了時の行動、ふるまいにその人の人柄、性格が集約されるという。なるほど、言われてみればそうだ。最後の最後まで気を抜かず、緊張感を持ち続けられる人は「ちゃんと」している。そして、最低限の「人としての」常識を持ち合わせているのだと。こういうところは一夜漬けのスキルではフォローし切れないもの。ギリギリのところで人の生き様というものが反映されるということだろう。

ところで、深夜帰宅後、久しぶりにモータウンの音楽が聴きたくなった。若い頃あれだけ忌避していた音楽たちがいつの日からか興味の対象と化し、今や大好物の一つとなっている。それはMarvin Gayeとの出逢いから。

Marvin Gaye:What’s Going On

マーヴィン・ゲイの最高傑作。このアルバムを20数年前にモータウン気違いの友人に薦められて聴いてからこの世界に開眼。こんなにセクシーで、人の心に直接に突き刺さる歌声があるのかと思わせるほど、ユニ・セックス的な声質(チェット・ベイカーなどとはまた違った意味で)が堪らない。それに、R&B特有のリズム感。そう、黒人特有のお尻をフリフリするようなエッチな表現が二重に僕らに襲いかかる。

Marvin Gayeは不慮の事故(実の父親に射殺されるという不幸)で亡くなってしまったが、もし今生きていたら彼の音楽はどんな風になっていたのだろうか?僕にとって残念ながら音楽とは認められないラップ・ミュージックの世界は出現したのか?あるいはそういう世界の構図も随分違ったものになっていただろう。John Lennonに匹敵する世界的重鎮を失ったことは、その後の音楽シーンに目に見えない影響を及ぼしているのかもしれない。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>最後の最後まで気を抜かず、緊張感を持ち続けられる人は「ちゃんと」している。そして、最低限の「人としての」常識を持ち合わせているのだと。
ここ数日のコメント欄での、グレン・グールドについてのやり取りを読んだ感想は、最低限の「人としての」常識を持ち合せないことが、音楽でも絵画でも、芸術の深淵を表現するには不可欠なんじゃないかな?ということです。モーツァルトも、シューベルトも、ゴッホもムンクも、ある意味、悪魔と取り引きをしていたからこそ、作品が深くなったのだと思います。
・・・・・・朝八時に起きてジョギングし、オレンジジュースを飲んでシリアル食べて楽器の練習をパターンにのっとってこなし、夜七時になったらネクタイしめて奥さんに「今夜はちょっと遅くなるよ」などといって仕事に出かけていくジャズ・ミュージシャンに「ヤクザな」ジャズなどできるわけはありません。
ところで昨今は、この冗談のようなジャズ・ミュージシャンが圧倒的に多い。タバコもアルコールも、ついでに「アレ」もしないで立派なジャズができると思っているのでしょうか。
これが「思っている」から手に負えない。・・・・・・中山康樹 著「超ジャズ入門」(集英社新書)より
久しぶりに、この歌も引用したくなっちゃいました!
芸のためなら 女房も泣かす
それがどうした 文句があるか
雨の横丁 法善寺
浪花しぐれか 寄席ばやし
今日も呼んでる 今日もよんでる
ど阿呆 春団治
「そりゃわいはアホや 酒もあおるし 女も泣かす
せやかて それもこれも みん芸のためや
今にみてみい!わいは日本一になったるんや
日本一やで わかってるやろ お浜
なんや そのしんき臭い顔は 酒や!酒や!
酒買うてこい!」・・・・・・
『浪花恋しぐれ』(作詞: たかたかし 作曲: 岡 千秋)より
アル中、ヤク中、ピカ中、マザコン、ロリコン、離コン、合コン、
リモコン、ラジコン・・・大いに結構!、みんな芸術の源泉です。
「Marvin Gaye」の人生も「悲惨」ですか?
悪魔とのチキン・レースをするほど破滅型の「悲惨」な人生と、それによって獲得した後世まで連綿と語り継がれる「名声」、今の私には、それが率直にカッコいいと思えます。
酒井法子の記者会見での作られた涙・・・、彼女の芸能人根性も大したものだと思いました。彼女もまた、悪魔と取り引きをしたのでしょう。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
我々が生きている「堅気」の世界といわゆる芸術家の生きている世界とはものさしがまったく違いますね。
音楽でも文学でも絵画でも、真の芸術は「負」から生まれるものだと思います。中山康樹氏の言葉も的を射てますね。
『浪速恋しぐれ』!(笑)良い歌です!(笑)
>悪魔とのチキン・レースをするほど破滅型の「悲惨」な人生と、それによって獲得した後世まで連綿と語り継がれる「名声」、今の私には、それが率直にカッコいいと思えます。
確かにおっしゃるとおり!カッコいいです。
>酒井法子の記者会見での作られた涙・・・、彼女の芸能人根性も大したものだと思いました。
同感!根性すわってますよね、彼女は。

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