クラレンス・クレモンズよ、永遠に・・・

クラレンス・クレモンズ氏が逝った。
1980年代半ば、ようやくロック音楽に目覚めた僕の前に聳え立つ「自由の女神」の如く現れたのが、Bruce Springsteenその人。クラシック音楽一辺倒だった僕には、当時その音楽に出会う術はまるでなかったが、スプリングスティーンをはじめとするアメリカン・ロックやツェッペリン、イエス、キング・クリムゾンらブリティッシュ・ハード・ロック、プログレなどの魅力を教えてくれる友人ができた(クラシック音楽の魅力を彼に教えてあげるのと引き換えに)。何とも懐かしい、掛け替えのない青春時代(笑)。

ちょうどアルバム”Born In The U.S.A.”が爆発的にヒットした頃で、E Street Bandを引き連れてSpringsteenが何日かに及ぶ初来日公演を行った。スプリングスティーン命の彼は、なけなしのお金を叩いて東京で催された全公演に行った。その時、まだまだスプリングスティーンの魅力に気づいていなかった僕は、残念ながら遠慮したのだが(今や後悔)、本当に熱い、感動的なステージが何時間にもわたって繰り広げられたという。彼曰く、

「ある晩のステージでは、”Dancing in The Dark”のとき、客席前方に座っていた女の子をステージ上に上げて、一緒に踊りながら歌ったんだけど、俺が上げてほしかったよ・・・。男だから無理だろうけど(笑)」
「コンサート中、皆立ち上がってキャーキャー奇声をあげるのには辟易した。スプリングスティーンの音楽は基本的にじっと座ってじっくりと耳を傾けて聴く音楽なのに・・・」

なるほど、その気持ちわからなくもないとふと思った。
スプリングスティーンの音楽では踊れない。ましてやアイドル相手のように「騒ぐ」音楽でもない。Bob Dylan同様しわがれた特長のある声質がその一因になっているように思うが、そのヴォーカルと対峙するかのように奏されるクレモンズのサックスの音が、実に「踊れない」(笑)心の奥底に染み入るものだということに今頃になって気がついた。クラレンス・クレモンズあってのE Street bandであり、Bruce Springsteenだったのである。

Bruce Springsteen:Greatest Hits

僕が初めてアメリカの地を踏んだのがちょうど同じ頃。20歳過ぎの僕にとってカリフォルニアの地は実にまぶしかった。楽しかったし、怖かったし(笑)、2週間ほどの滞在でほんの少しだがアメリカという国の懐の深さを体験させていただいた(そんなのはある種「幻」のようなものなんだけど・・・)。

”Born To Run”
まさにタイトル通りの曲を書きたかった。そして弱冠24歳の俺は、世界最高のロックン・ロール・アルバムを作ろうと燃えていた!

ブルース・スプリングスティーンの次の言葉が染みる。

俺たちの音楽を人生の一部としてくれたファンのみんなへ。
君たちなくしては俺たちの音楽なんてこれっぽっちも意味をなさないんだよ。
ありがとう。   ~ブルース・スプリングスティーン


5 COMMENTS

雅之

こんばんは。
蓄積のない分野についてはまったく書けません。
知らないジャンルは特に、いつもとても勉強になります、感謝です。
また、どなたか詳しいかたにコメントを書いていただきたいです。

>楽しかったし、怖かったし(笑)、2週間ほどの滞在でほんの少しだがアメリカという国の懐の深さを体験させていただいた

日米関係って何なんでしょう。福島第一原発事故で改めて考えさせられています。
今思えば、昨年、日航機の御巣鷹山墜落事故をここで話題にした時、何か予感めいたものが働いたのかもしれません。

参考 日経BPnet より
大前研一の「産業突然死」時代の人生論
〈国民より米国を優先する政府・保安院の欺瞞〉(2011年06月14日付) http://www.nikkeibp.co.jp/article/column/20110614/273955/?ST=business&P=1

体重が120Kg超もあったクラレンス・クレモンズ氏のように、アメリカが日本にとって温かくて頼りになるビッグな存在なのは確かですが、同時にアメリカには「巨大な闇」も見え隠れして仕方がないんですよね。
善良な個人と、善良な個人の集合体である組織や国家との関係について、複雑な気持ちです。

返信する
岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
ご参考に頂いたサイトを見てもそうですが、日米関係というのは根深いですね。
というより、そもそも日本が敗戦してアメリカの占領下に置かれた時点でこうなることはもはや決まっていたんでしょうけど。我々が知る由もない、おそらくこういう場では書けないような真実があるんでしょうね(今日もクレモンズ氏の死の話題からそういう闇についても少し触れたかったのですが、あえて止めました。
またゆっくりお会いしたときにでもお話ししたいところです。

ところで、今夜ハーディング指揮新日本フィルのマーラーを聴いてきました。
素晴らしい演奏でした。明日にでも感想などは書くつもりです。

返信する
雅之

たとえば、総務省やNHKが主導する地デジ完全移行政策も、アメリカの陰謀が裏で働いているのは有名な話ですよね。
http://www.financial-j.net/blog/2006/12/000069.html

地デジへの移行が弱者を無視して強引に完了しようが(一方で高品位なSACDの普及が今一であろうが)、そんなのどうでもいいです。

ただし、福島の原発事故については、今後長きにわたり日本人、ひいては人類の生存権の根幹にかかわる問題になるのでスルーできないです。
ベートーヴェンが知ったら、きっと悲しみ、激怒していると思います。
今怒らなくて、いつ怒るんですか?という感じです。

政治の世界を見ていると、もう、いい加減にしてくれ! です。
http://blog.trend-review.net/blog/2011/06/001996.html

右だろうと左だろうと、アメリカとどの部分でかかわろうと、天皇陛下のお住まいである皇居や、私達が生活する「美しい日本」が放射能で汚染されるのを何とも感じない、または見て見ぬふりを決め込む輩は、等しく、売国奴、非国民です。

儲け話なら、「反原発ビジネス」のビジネス・チャンスが、いくらでもあるじゃないですか!と言いたいです。

・・・・・・最初期の多くのロックは既成概念や体制に対する反抗心や怒りを強く表現することが主体で、対抗文化(カウンターカルチャー)としての存在意義を持っていた。しかし、当初はアウトローな存在として登場したロックのムーブメントも、やがて人気を得るにつれて大衆性を強めて逆にメインストリームとなり、更にそれに対する新たな対抗文化=新たなるロックジャンルが生まれる、という流れを表面上では何度も繰り返している部分がある(そもそもロックはその勃興において、既存のジャズやクラシックに対する若者に訴求しやすい新たな対抗音楽文化として生誕しているという側面もある)。しかしながら、例えば「A」というロックジャンルに対する対抗ジャンル「B」も大枠で見て同様に「ロック」であるため、この項で扱われるロックの概念に逸脱するような本質的な差異には当たらない。・・・・・・ウィキペディア 「ロック(音楽)」 より

多くの「魂」のあるロックミュージシャンの皆さん、
そしてロックを愛する多くのファンの皆さん、
今怒らなくて、いつ怒るんですか?

ところで、ハーディング指揮新日本フィルのマーラーを聴かれたこと、羨ましいです!!

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
まったくもって同感です。
長老の元総理大臣は「墓場までもってゆく」と仰っているそうですね。

ご紹介いただいたサイトは勉強になります。
ありがとうございます。

>多くの「魂」のあるロックミュージシャンの皆さん、
そしてロックを愛する多くのファンの皆さん、
今怒らなくて、いつ怒るんですか?

その通り!!

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む