クリスティーヌ・ワレフスカ氏は3度目の来日だという。最初が1974年、その後36年のブランクを置き2010年に再来日。幻の女性チェロ奏者という異名をとるが、果たしてその力量はいかに、ということで今宵六本木のスイートベイジル139を訪れた。当然設備はクラシック音楽向けではない。いわばディナーショーのようなノリではあったが、その分肩肘張らず、彼女の意外に骨太の演奏を楽しめたことは良かった。
クリスティーヌ・ワレフスカ with フレンズ チェロ・ライブ
2013年4月16日(火)開場18:00、カイエン19:00
スイートベイジルSTB139
・J.S.バッハ:アリオーソ(ワレフスカ、山井、福原)
・フォーレ:エレジー作品24(ワレフスカ、山井、福原)
・ボロニーニ:アヴェ・マリア(ワレフスカ、福原)
・ボロニーニ:バスクの祭(ワレフスカ)
・ボロニーニ:チェロの祈り(ワレフスカ、福原)
・グラナドス:歌劇「ゴイェスカス」~間奏曲(ガスパール・カサド編曲)(ワレフスカ、山井、福原)
休憩
・ブラガート:ミロンタン(ワレフスカ、福原)
・ジミー・マックヒュー/ドロシー・フィールズ:恋の気分で(I’m in the Mood for Love)(平山、福原)
・リュウ・ダグラス、クリフ・バーマン、フランク・ラヴェア:プリテンド(Pretend)(平山、福原)
・伊藤操/北村ゆい:コール・ミー・アゲイン(Call Me Again)(平山、ワレフスカ、福原)
・フランク:チェロ・ソナタイ長調より抜粋(ワレフスカ、福原)
~アンコール
・ショパン:夜想曲第20番嬰ハ短調(遺作)
クリスティーヌ・ワレフスカ(チェロ)
山井綱雄(シテ方金春流能楽師)
平山みき(ヴォーカル)
福原彰美(ピアノ)
来日を繰り返し、しかも縦断リサイタルを行えばもはや「幻」でもなんでもないが、先日の紀尾井ホールでの演奏会がすこぶる評判だったので期待はあった。ただし、単独のリサイタルでもないし、プログラムも小品が散りばめられたものだから、どちらかというとクロスオーバー的なリラックス・ムードのイベントという体。
ワレフスカ氏のチェロはどちらかというと堅牢で楷書的。強いて言うなら音楽に遊びが少ない。そもそもアルゼンチンへの想いが強いそうだからよりラテン的な解放感が音に加味されればもっと自在の音楽表現になるだろうにと、少しばかり残念ではあった。
それと、会場のせいもあろうが、あるいは電気で音を増幅しているせいもあろうか、正直若干疲れた。
ちなみに、プログラムのボロニーニという作曲家の作品は初めて聴いたが、なかなか面白いエピソードが紹介された。名前をエニオといい、何とアルトゥーロ・トスカニーニが名付け親なのだと。しかも、トスカニーニからはエニオではなくヘニオ(=天才)とあえて呼ばれていたそう(ただし、その音楽はポピュラーな旋律を持った良いものだけれど、決して面白いものではない・・・笑)。
また、ボロニーニはもともとチェロ奏者でワレフスカ氏の師匠でもあるのだが、自作の全てをワレフスカ氏にだけ弾くことを許しているのだと(ということはワレフスカ氏のCDでしか聴けないということか・・・)。
ところで、最後に解せないこと。フランクのソナタが抜粋で披露されたが、どういうわけかフィナーレがカットされた。どうしてだろう?あの楽章が皆聴きたいのでは?理解不能なり。
とはいえ、今夜の演奏だけでワレフスカ氏の評価はできないかな・・・。一度きちんとしたホールでゆっくりと耳を傾けてみたい。
※そういえばMCは石井苗子さんだった・・・。あれはあれで良かったが、なきにしもあらず・・・。