ヨハネス・ブラームスの音楽は一般的には秋が似合うといわれる(本当か?笑)。確かにそう。晩秋の夜長にクラリネットのトリオやクインテットなどは心だけでなく身体をも温めてくれる効果がある(ように僕は思う)。交響曲なども第1番から第4番までいずれも秋に相応しい。いや、待て。第2番だけは異質。この作品はブラームスの交響曲の中で僕が最も好きなものだけれど、少しずつ気温が上がり、日中は暑いくらい、そして夜間はまだ少し肌寒いほどという今頃の時節にぴったり。
そんなことを思い、黄昏時からいくつもの演奏で繰り返し聴いてみた。
ブラームス:交響曲第2番ニ長調作品73
パーヴォ・ベルグルンド指揮ヨーロッパ室内管弦楽団(2000.5.11-14Live)
13年前のちょうど今頃バーデンバーデンの祝祭ホールで録音されたベルグルンドのこの全集は評判が高い。確かに少人数オーケストラの薄めの音が細部までくっきりと楽想を浮かび上がらせ、音楽の内側まで見通せるブラームスなのだけれど、正直少々物足りなさは否めない。ブラームスには、暑苦しいほどの厚みと、うじうじした粘度がどうしても必要だと僕は思う。
久しぶりにヴァントの晩年の録音を聴いてみた。北ドイツ放送交響楽団のメンバーが指揮者を心から信奉し、そして忠実に、しかも熱をもって再現しようとする姿勢が手に取るように「見える」この音楽(第2交響曲)。暖かい初夏の風を運ぶ第1楽章の冒頭主題から「命が懸かっている」(笑)。第2楽章、第3楽章と進むにつれ、音楽は人間の手を離れ、自然とひとつになってゆくよう。そこには指揮者も奏者もいない、ただ「ブラームスの音楽」が在るのみ。凄いことだ。ついでに他の交響曲も聴きたくなり、第3番、第1番と聴いた。ヴァントのこの全集の白眉は間違いなく第1交響曲。
第1楽章序奏部の驚くべき快速!!もうここだけでまさか90歳に近い老巨匠の演奏とは思えない熱と迫力と。煩わしい提示部の反復もなく、「ブラームスはこうでなくては!」という演奏のまさに代表格。第2楽章も第3楽章もものすごい表現が見られるのだが、クライマックスはフィナーレ。あまりに恣意的なティンパニの強打に思わずのけ反りそうになりながら、例の第1主題の柔らかく愛らしい表現に度肝を抜かれる。コーダの圧倒的大伽藍は、オーケストラが鳴り切っているのに決してうるさくならず・・・。
何というエネルギーのすさまじさ・・・。思わず唖然(笑)。
何年かぶりに聴いて感じたこと。
瞬時に消えゆく「音楽」というのはやっぱり一期一会のものなんだということ。
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