Miles Davis On The Cornerを聴いて思ふ

miles_davis_on_the_cornerマイルス・デイヴィス自叙伝(中山康樹訳)は実に面白い。

オレが「オン・ザ・コーナー」でやった音楽は、どこにも分類して押し込むことができないものだ。なんて呼んでいいのかわからなくて、ファンクと思っていた連中がほとんだだったけどな。あれは、ポール・バックマスター、スライ・ストーン、ジェームス・ブラウン、それにシュトックハウゼンのコンセプトと、オーネットの音楽から吸収したある種のコンセプト、そいつをまとめ上げたものなんだ。
P186-187

なるほど、強烈・・・。
ここでマイルスが言う「オーネットの音楽から吸収したある種のコンセプト」とは何か?

ポールはバッハに熱中していたから、オレもバッハについて調べてみた。すると、オーネット・コールマンが言っていた、それぞれ独立して演奏される3種類か4種類の要素があるという意見が本当で、バッハもそんな作曲法をしていたことがわかった。
P186

実にバッハのポリフォニーが手引きになっているということだ。
そして、マイルス自身が「この頃、ドイツの前衛作曲家カールハインツ・シュトックハウゼンと、1969年にロンドンで会ったイギリスの作曲ポール・バックマスターの音楽理論に興味を持ちはじめていた」と語るように、ヨーロッパの前衛の影響すら受けていることを考慮すると、この「オン・ザ・コーナー」という問題作にして傑作アルバムは発表当時まさに未来音楽であったといえる。
さらに、

シュトックハウゼンを通じて、音楽が削除と付加の過程であることも学んだ。“ノー”と言った後に、はじめて“イエス”が意味を持つといった具合にだ。
P198

この言葉は深い。モーツァルト家に伝わる「充分に美しく語ることも非常に立派な業だが、しかるべきときに沈黙することもまた同様に重要だろう」という諺を思い出す。光と闇、善と悪、陰と陽・・・、相反する2つがひとつになって初めて形を成す。音楽とは宇宙とフラクタルなんだ。

Miles Davis:On The Corner

Personnel
Miles Davis (trumpet)
Dave Liebman (soprano sax)
Carlos Garnett (soprano sax, tenor sax)
Bennie Maupin (bass clarinet)
John Mclaughlin (guitar)
David Creamer (guitar)
Herbie Hancock (fender rhodes, synthesizer)
Chick Corea(fender rhodes)
Harold“Ivory”Williams (organ, synthesizer)
Micheal Henderson (bass)
Colin Walcott (electric sitar)
Billy Hart (drums)
Jack Dejohnnette (drums)
Al Foster (drums)
Khalil Balakrishna (electric sitar)
Badal Roy (table)

完璧にトリップ音楽。(笑)
しかし、現代のポップスのあらゆるイディオムの原点がここにある。
このアルバムが40年以上も前に作られていたことが驚異的。

オレは、もっとブラックなサウンドを発展させてみたかった。もっとリズミックにホワイト・ロック的じゃなくもっとファンクにというのが、オレが求めていたことだ。スライ・ストーンに会ったらレコードをくれたが、とても気に入った。
P184

マイルスの辞書に「止まる」という文字はない。

 


人気ブログランキングに参加しています。クリックのご協力よろしくお願いします。
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村


コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む