カラヤン&ベルリン・フィルの「魔笛」を聴いて思ふ

zauberflote_karajan_bpoいわゆる十八番。
歌舞伎のお家芸をそのように表現するが、「魔笛」の主人公であるタミーノは日本の狩装束を身に着ける。そして「魔笛」の白眉である第18番のアリアは第2幕の有名な「僧侶たちの合唱」であるところが実に興味深い。

(舞台は、数々のピラミッドから作られている丸天井の地下室に替わる。弁者と数名の祭司。
2人の祭司は、照明に浮かび上がる一つのピラミッドを肩に担いでいる。祭司たちは、全員、提灯サイズの透明なピラミッドを手に持っている)

おお、イシスとオシリスの神よ、なんというよろこび!
太陽の輝きは暗い夜を追い払う。

やがて気高い若者は新しい生命を感じ、
やがて彼は身を捧げてわれわれに仕える。
彼の精神は大胆であり、彼の心は清純である。
やがて彼もわれわれに価するものとなろう。
名作オペラブックス5モーツァルト「魔笛」P157

ここは王子タミーノが真理を得るシーンだ。音楽も敬虔で明朗な祈りに満ちる。

モーツァルト:歌劇「魔笛」K.620
ホセ・ヴァン・ダム(ザラストロ、バス)
カーリン・オット(夜の女王、ソプラノ)
エディット・マティス(パミーナ、ソプラノ)
フランシスコ・アライサ(タミーノ、テノール)
ゴットフリート・ホーニク(パパゲーノ、バリトン)
アンナ・トモワ・シントウ(第1の侍女、ソプラノ)
アグネス・バルツァ(第2の侍女、メゾソプラノ)
ハンナ・シュヴァルツ(第3の侍女、アルト)ほか
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1980.1&4録音)

昔は誰しも「悟りを得る」のに難行苦行を強いられた。宗教の場を借りずとも悟りを開くことができたことを「魔笛」の物語は暗に表明するが、200数十年前のヨーロッパ社会でそのことが表現されていたこと自体が奇跡に近い。それがフリーメイスンによって為されたことなのかどうなのか、そこは不明であるのだが、いずれにせよモーツァルト自身が「真理」を体得していたことが明らかなことは間違いない。介在意識だったか潜在意識だったか、それはわからないが、東洋の思想にヒントがあることを知っていたことは間違いない。

初リリース当時、話題になった音盤。
カラヤンのベルリン・フィル時代の最後の威光のようなもの。当時、フランシスコ・アライサはタミーノの当たり役だったが、ここでも実に巧い。
ちなみに、この録音での素晴らしさはアンナ・トモワ・シントウ、アグネス・バルツァ、ハンナ・シュヴァルツが演ずる3人の侍女。今でこそ大御所の3人のアンサンブルの絶妙なバランスと、溶け合う声の調和が夜の女王が単なる悪の化身でないことを証明するかのように思われる。

カラヤンの棒ももちろん光る。

 


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