カルロス・クライバーの「こうもり」で元旦を祝う

fledermaus_carlos_kleiberカルロス・クライバーの「こうもり」
1986年5月19日、昭和女子大学人見記念講堂での伝説のコンサートのアンコール。客席を振り返っての指揮者の一声とともに始まった鮮烈な序曲のことは今でも忘れない。
一挙手一投足が「音楽」そのものを表現する。音楽の化身なり。

人生の儚さを思う。すべてが「人の夢」だと昨日も書いたが、喜歌劇「こうもり」こそその「儚さ」を象徴する。第2幕の「オルロフスキー邸の夜会」の絢爛舞踏の様は愉悦の響きだが、この「悦楽」はベートーヴェンの辞世の句「諸君、喝采せよ。喜劇は終わった」に通じる。なるほど、瞬間に消えて泡と化す音の神髄。録音で残されているとはいえ、この音盤は一世一代の賜物であり、そうそう繰り返し耳にするものではない。2014年の幕開けをこの作品で迎えよう。

夜会に集う人々は正体を隠す。皆が「何か」を演ずる虚構の世界。とはいえ、それこそが「真実」なんだ。真に人間とは自らの腹の内を明らかにすることのない動物のよう。互いに疑い合い、探り合う性を表すかの如く。音楽が陽気になり、盛り上がれば上がるほどますます空虚に鳴り響く。

ヨハン・シュトラウスⅡ世:喜歌劇「こうもり」
ヘルマン・プライ(ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン、バリトン)
ユリア・ヴァラディ(ロザリンデ、ソプラノ)
ルチア・ポップ(アデーレ、ソプラノ)
ベンノ・クッシェ(フランク、バス)
イヴァン・レブロフ(オルロフスキー公爵)
ルネ・コロ(アルフレート、テノール)
ベルント・ヴァイクル(ファルケ博士、バリトン)
フェリー・グルーバー(ブリント、テノール)
エヴィ・リスト(イーダ、ソプラノ)
フランツ・ムクネセーダー(フロッシュ、語り)
ニコライ・ルゴヴォワ(イヴァン、バス)
ダイアローグ演出オットー・シェンク
バイエルン国立歌劇場合唱団
カルロス・クライバー指揮バイエルン国立管弦楽団(1975.10-1976.3録音)

第2幕で採用される「雷鳴と電光」はオットー・シェンクの見事なアイデアを具現化するが、こちらも人見記念講堂での実演をつい思い出す。決して言葉で語れぬ旋律の宝庫。楽の音は真に楽しい。蝶が舞うカルロスの指揮姿を髣髴とさせる。

カルロス・クライバー没後10年を迎える年の初めに・・・。

 


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