多彩で、それでいて一貫性のある、イマジネーションを喚起する音楽作品が僕は好きだ。
リッチー・ブラックモアが評価しないアルバムだけれど、”In Rock”で試みた、ハードかつクラシカルな独自路線の波状攻撃が引き続き実に心地良い。
例えば、名作”Strange Kind Of Woman”の、黄金のメンバーたちが一体となってイアンのヴォーカルを支え、耳に馴染みやすい旋律を奏でるシーンは涙もの。中で、”Child In Time”でも魅せたイアンの見事なファルセット・ヴォカリーズ(?)に興奮・・・。
あるいは、ボブ・ディランの歌唱法を真似たようなフォーク調の、否、場合によってはジェスロ・タルを髣髴とさせる”Anyone’s Daughter”の何とも哀愁に溢れる歌は、アルバム内でスパイスの役割を果たす。
前作(”In Rock”)の売れ行きが好調の中、当時の彼らは極めて多忙で、ツアーの合間を縫って制作されたことからリッチーには不満の残る出来なのだろうが、1970年当時の、いわば飛ぶ鳥を落とす勢いの彼らの音楽に見る「荒削りさ」と「緻密なアンサンブル」の同居に僕はあらためて感動を覚える。何より内なるパッションとエネルギーの凄まじさ。”In Rock”と次作”Machine Head”の影に隠れてあまり注目されない作品だが、これほどまでに「まとまった」アルバムはないのではとすら思うのである。
Personnel
Ritchie Blackmore (guitar)
Jon Lord (keyboards, hammond organ)
Ian Paice (drums)
Ian Gillan (vocals)
Roger Glover (bass)
“The Mule”後奏におけるジョン・ロードのオルガンなどはディープ・パープルというバンドの真髄を見事に発揮しており、どれほど適当に作られたものか知らないが、これだけで聴く者を虜にする力がある。続く”Fools”も極めてプログレッシブな構成で、やはりここはジョン・ロードの独壇場かと言いたいところだが、イアン・ギランのハードなヴォーカルは決して聴き逃せず、リッチーのギター・プレイも後のエイドリアン・ブリュー以上に変幻自在。
やっぱりこのバンドにおいてジョンとリッチーという両巨頭の存在は大きい。タイトル曲”Fireball”のシンプルでキャッチーな音楽は、実にギター・プレイとオルガン・プレイに支えられており、特に間奏は出色。
ところで、アナログ時代のアルバムのほとんどは両面あわせて40分前後という理想的な尺によって構成されており、聴き飽きることなくそのアーティストの世界に没入できる点が素敵。
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