Roxy Music “Fresh + Blood”を聴いて思ふ

roxy_music_flesh_bloodロキシー・ミュージックがぐるぐるぐるぐる。
朝から頭の中を気が狂ったようにずっと駆け巡る。特に、70年代後半以降、ロキシーの音楽はブライアン・フェリーの至極のダンディズムに裏打ちされたヴィブラートの利いた独特の歌声を主体に、フィル・マンザネラの痺れるギター・プレイとアンディ・マッケイのふくよかで哀愁に満ちたサックス・プレイに彩られ一層ポップになり、大いなる進化を遂げた。

それにしてもフェリーの唯一無二のあの声はいつ聴いても心震える。
再結成ロキシーの「マニフェスト」の次作であり、不滅の傑作「アヴァロン」の前作である「ブラッド+フレッシュ」。例えば、”Over You”後奏のブライアンが奏するキーボードとアンディのサックスの夢見るような絡み。何という美しさ・・・。そして、続くバーズの”Eight Miles High”は、カヴァー・アーティスト、ブライアンの真骨頂であり、限りなくロックン・ロールであるバーズのオリジナルを超え、いかにも英国的憂愁に溢れる孤高の音楽に生まれ変わっている。

Roxy Music:Fresh + Blood

Personnel
Bryan Ferry (vocals, keyboards, piano, synthesiser, guitar and strings)
Phil Manzanera (guitar, bass)
Andy Mackay (saxophones and oboe)

とはいえ、白眉はアルバムの掉尾を飾る”Running Wild”だろう。
これほど静謐かつ崇高でありながら人間の俗的感情を網羅する音楽、歌唱はなかなか聴けない。

there’s that melody again
buring through my head it does me in
turns me right around to my old friend
wonder how you’ve changed, are you still

running wild – like you do
when all your dreams come true
happy days you pretend
that your love will never end

チャールズ・ディケンズの「クリスマス・カロル」を訳された村岡花子さんはディケンズのことを次のように評する。

彼は笑いの中に涙の露を光らせる。彼の作品を構成するものは涙と笑いである。光と影が交錯している。ディケンズの人物の持つ哀感(ペーソス)は時としては余りにも芝居がかって来ることもある。が、つまるところ、彼は役者であり、彼の演劇の終局の目的はヒューマニズムであったのだ。
新潮文庫「クリスマス・カロル」解説P151

ほとんどモーツァルトの世界に等しい。そして、そのことはロキシーの世界であり、ブライアン・フェリーの真髄のようにも思える。この際、余計な解釈は不要。
ただただロキシー・ミュージックに浸る・・・。


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