Michael Franks “Sleeping Gypsy”を聴いて思ふ

michael_franks_sleeping_gypsyこの人の囁きかけるような歌声は実に気怠い。とはいえ、聴いていて一向に飽きが来ない。
おそらく芯が固く、ぶれないから。それに、どうにも「声」を感じさせずまるで「楽器」のよう。その意味ではレッド・ツェッペリンにおけるロバート・プラントのそれと非常に近い。
アルバムを生み出した当時、彼は30歳と少し。クルセイダーズの面々に若きデイヴィッド・サンボーンやマイケル・ブレッカーらを加えた新進気鋭(いや、当時すでにもう重鎮だったか)と協働した、現代にもきっぱり通用する音楽の宝庫。

先日どこかで読んだ。「サザエさん」を描いた長谷川町子さんのすごいところは、作品に一切の流行を取り込まなかったことだそう。結果、いつの時代にも通用する普遍的なものになっているのだと。なるほど。

先日観た、ニューイヤー・コンサート2003ではニコラウス・アーノンクールが「音楽は世界中の人々が分かち合える唯一の言語です」という言葉とともに新年の挨拶をした。どんなものでも音楽というのはそのものが普遍的なんだ。

永い間ずっと生き延びるというのはたいしたものだ。「スリーピング・ジプシー」を聴いてあらためて思った。”Getz / Gilberto”に感応し、アントニオ・カルロス・ジョビンの天才に出逢い、そしてその音楽に感化され、その流れでジョビン本人との知遇を得る。結果、ブラジルでの録音を薦められ、本アルバム中2曲のリオでのレコーディングが実現する。

Michael Franks:Sleeping Gypsy

Personnel
Michael Franks (vocals)
Joe Sample (piano)
Wilton Felder (bass)
John Guerin (drums)
Larry Carlton (guitar)
David Sanborn (alto saxophone)
Michael Brecker (tenor saxophone)
Ray Armando (percussion)
Joao Palma (drums)
Joao Donato (piano)
Helio Delmio (rhythm guitar)

ジョビンに捧げられた“Antonio’s Song (The Rainbow)”は言わずと知れた超名曲。久しぶりに聴いたけれど、6月の蒸し暑い最中にこのアンニュイさがぴったり・・・。間奏のジョー・サンプルのピアノが可憐に響き、後奏ではデイヴィッド・サンボーンのアルトが哀しくうねる。

そして、何と言ってもリオで録音され、ジョアン・ドナートに捧げられたアルバムラストの”Down in Brazil”が泣かせる。間奏のジョアン・ドナートのピアノと、続くラリー・カールトンのソロの美しさ・・・。


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