ヴェルビエ音楽祭2007 サロネンのシベリウスを観て思ふ

verbier_festival_sibelius_salonenさすがに作曲家だけあり、エサ=ペッカ・サロネンは捉えた音楽の全体像を即座にパッケージングする才能に優れているように思う。何という音の密度と有機性!!!自作もシベリウスもユース・オーケストラを相手に実に「熱い」表情を示す。

怜悧で研ぎ澄まされた感性と、ほとんどコンピューター的ともいえる理性。そのバランスの上に築き上げられた至高のシベリウス。
カルロス・クライバーとはまた別の意味で指揮姿そのものがまるで「音楽」だ。極めて正確なビートに支えられ、彼の身体の動きと共に旋律が大きくうねる。奏者の真剣な眼差しと、指揮者の棒から放たれる閃光が火花を散らし、刻一刻と醸成されゆく音楽の魔法。
第1楽章コーダの怒涛の勢いは、楽譜に忠実な再現にもかかわらず、実に即興的に聴こえ、そこにまたこの人の「天才」を垣間見る。プレストにおけるティンパニの轟きに痺れる。このいかにもジプシー的な(差別用語?)女性奏者の演奏が実に際立って耳を惹く。この打楽器と弦楽器群に支えられたトランペットの終結主題の朗々たる響きと指揮者が一体になる様・・・、最高である。

ヴェルビエ音楽祭2007
・サロネン:ロサンジェルス変奏曲
・シベリウス:交響曲第5番変ホ長調作品82
エサ=ペッカ・サロネン指揮UBSヴェルビエ・フェスティバル・オーケストラ(2007.7.26Live)

静謐で折り目正しく機能する第2楽章。ここではシベリウスの精神がひと時の憩いを夢見るよう。そして、間髪置かずに奏される第3楽章は、この作品の結論であり、この演奏においてもクライマックスを形成する。
トランペットによるモチーフが、一旦ガクッとテンポを落とし、深い呼吸で奏されるシーンに金縛り。そう、この壮大かつ悠久を思わせる音楽こそがジャン・シベリウスの醍醐味であり、そのことを正しくかつ魅力的に再現するエサ=ペッカ・サロネンの類稀な力量をそこに発見するのである。この同じモチーフが最後のクライマックスを築くとき、音楽は一層霊感に満ち、感動的なラストを迎える。例の6つの和音が魂に突き刺さる・・・。

ちなみに、この映像、実に素晴らしい演奏なのだが、最近の多数のカメラを駆使しての斬新かつ魅せるものに比して、いかんせんカメラ・ワークが単調かつ陳腐で欲求不満に陥るのが残念。

ところで、サロネンの自作である「ロサンジェルス変奏曲」。ロサンジェルスとは名ばかりで、酷寒の北欧の冷たい風が吹きすさぶよう。しかしながら、決して理解できない音楽の類ではない。打楽器が唸り、金管が咆え、そして弦楽器が打ち震える。どうにもストラヴィンスキーが木霊するのだ・・・。

 

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