サロネン指揮フィルハーモニア管 シベリウス 交響曲第5番ほか(1986.3録音)

灯台下暗し、という。
自分のことは得てしてわからないもの。自国についても外に出てみて初めて見えるものだ。視野を広げ、視座を上げることが大切だ。
2014年の、サロネンへのインタビュー記事が興味深い。

自国では、もう、そこらじゅうにシベリウスの音楽があるんです。正直、辟易(へきえき)していました。シベリウスの曲のどんな音符を見ても息が詰まるような思いでしたよ。何というか、自分のような若い音楽家の可能性を締めつけられる思いでした。ですから「どこか、シベリウスが浸透していない国に行きたい。」と切望して、それでイタリアに行ったのです。
エサ=ペッカ・サロネンに聞く Vol.1

シベリウスの音楽は、晦渋なところもあるが、実に簡潔でまたどの瞬間も美しい。サロネンは、外国に出たことで、「これ(シベリウス)は、やらなきゃいけない勉強だから」という圧迫感からようやく解放されたらしい。

何年か前、サロネンがヴェルビエ音楽祭でユース・オーケストラを振ったシベリウスの映像を観て、実に精緻で堂々とした解釈に僕は痺れた。音楽の隅から隅までもが見通せる構成力に感動したほど。当然そこにはシベリウスへの共感もあった。

若きサロネンがフィルハーモニア管弦楽団と録音した交響曲第5番変ホ長調の、まるで老練の指揮者のような落ち着いた思念と冷静な(冷徹な)音の流れに心が動く。余計なものを一切捨て、ただひたすら音楽を行うという姿勢に貫かれた誠意満ちるシベリウス。

シベリウス:
・交響曲第5番変ホ長調作品82
・交響詩「ポホヨラの娘」作品49
エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団(1986.3.21&22録音)

夜明けから真昼まで、最後は灼熱の様相を呈する第1楽章アレグロ・モデラートに釘付け。そして、沈思黙考に始まる第2楽章アンダンテ・モッソ,クワジ・アレグレットの優美に癒される。コーダに向けてうねる終楽章アレグロ・モルトの気魄は、ジャン・シベリウスへの愛(思い入れ)そのものか。

ところで、今に至るまで、サロネンのシベリウスの他の交響曲のないことが残念でならない。彼が留学中、ミラノのアンティーク市場で出会ったポケットサイズの交響曲第7番のスコアによりついにシベリウスの音楽に開眼したというのだから、ぜひともサロネンの指揮する第7番ハ長調作品105を聴いてみたいところ。

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