Return To Forever “Romantic Warrior”を聴いて思ふ

rtf_romantic_warriorマイルスに言わせれば、音楽をカテゴライズして、さらに名前までつけてしまうこと自体がナンセンスということになるが、チック・コリア、あるいはリターン・トゥ・フォーエバーにおける演奏、そして作品は実にスペイシーだ。
マイルスは、かつて自身のバンドに在籍したキーボード奏者たち―ビル・エヴァンスもキース・ジャレットも、あるいはハービー・ハンコックもチック・コリアも―を極めて高く評価した。もちろん、ハービーやチックにエレクトリック・ピアノを弾くよう命じたのはマイルスその人であり、それこそが後のフュージョンというジャンルを形成するきっかけとなったことは言うまでもない。ともかくこの天才の先見というか鑑識眼というか、人の能力と時代の行く末を見抜く力には畏れ入る。

チック・コリアは、マイルスと初めてギグを行ったときに怖気づいたと言う。「ガタガタと震えていた。まず第一に、リハーサルがなかった。それに難しい音楽だった。曲がまったくわからなかったんだよ。マイルスには『ステージに上がって演奏しろ』と言われただけだった。だから精いっぱい演奏した。インプロヴィゼーションをふんだんに使ってね」。その経験は、チックがフリー・スタイルへと向かうことを助長した。
「マイルス・オン・マイルス―マイルス・デイヴィス インタヴュー選集」P403

びびりながらも「できてしまう」のがチックの天才。マイルスによって才能が開かれた瞬間だ。

Return To Forever:Romantic Warrior

Personnel
Chick Corea (Acoustic Piano, Fender Rhodes, Honer Clavinet, Mini Moog, Moog 15, Micromoog, ARP Odyssey, Yamaha organ, Polymoog, Marimba, Percussion)
Stanley Clarke (Alembic Bass with Instant Flanger, Piccolo Bass, Acoustic Bass, Bell Tree, Hand Bells)
Lenny White (Drums, Timpani, Congas, Timbales, Hand Bells, Snare Drum, Suspended Cymbals, Alarm Clock)
Al Di Meola (Electric Guitars, Acoustic Guitar, Soprano Guitar, Hand Bells, Slide Whistle)

RTF渾身のアルバム(1976年)。このバンドで最も売り上げに貢献した1枚だという。時代の趨勢と、稀代のソリストたちが集まっての労作ゆえそれも当然。それにしてもすべてが革まり、新しい。
幻想的なイントロからコリア、クラーク、そしてディ・メオラそれぞれのソロにつながるタイトル曲のかっこ良さと言ったら・・・。
そして、ディ・メオラ作の”Majestic Dance”は、どこかかつての”Spain”を髣髴とさせる、どちらかというとロック・ミュージックに近いテイストの作品。いや、これこそまさに「フュージョン」と呼ぶべきもの。そして、クラークの”The Magician”は、その名の通り、複雑な展開と魅力的なフレーズに溢れ、あまりに斬新な音楽の設計に舌を巻く。

さらに、アルバムの掉尾を飾る”Duel Of The Jester And The Tyrant (Part 1 & Part 2)”は、メンバーそれぞれの超絶技巧が堪能できる(特にディ・メオラ!!)傑作で、ホワイトのパーカッションとクラークのベースが唸り、そこへコリアのエレクトリック・ピアノが縦横に駆け巡る様は音楽の女神が舞い降りたとした思えない圧倒的素晴らしさ。

 

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