アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノ・リサイタル

gavrylyuk__20150120089衝撃・・・、完璧・・・。各々の作品の細部が、音符のひとつひとつがこれほど明瞭にはっきり音化され、そして聴きとれるリサイタルというのはそうそうない。
アレクサンダー・ガヴリリュクを聴いて、会場の6割か7割ほどの埋まり具合を憂えた。なぜにこの人は知られていないのか?この圧倒的ヴィルトゥオジティを一たび耳にすればその音楽の虜になることは間違いないはず。

前半最初のモーツァルトを聴いて確信した。いかにも神童らしい可憐な旋律に溢れるこのロンドを、これほどまでに愉しく、しかも哀しみを湛えて表現し得たピアニストがいただろうかと。そして、ブラームスの「パガニーニ変奏曲」における轟音、爆音(超絶グリッサンド)と静かで繊細な調べの対比の絶妙さ。ほぼミスのなかったこの演奏を聴いて、フランツ・リストの再来か、あるいはニコロ・パガニーニその人の憑依かと思わせられたほど。まさに目から鱗の一大パフォーマンスだった。

アレクサンダー・ガヴリリュク ピアノ・リサイタル
2015年1月20日(火)19:00開演
東京オペラシティ コンサートホール
・モーツァルト:ロンドニ長調K.485
・ブラームス:パガニーニの主題による変奏曲作品35
休憩
・リスト:メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」
・リスト:コンソレーション第3番変ニ長調
・ワーグナー:イゾルデの愛の死(リスト編曲)
・リスト:ラコッツィ行進曲(ホロヴィッツ編曲)
・サン=サーンス:死の舞踏(リスト&ホロヴィッツ編曲)
・リスト:タランテラ(巡礼の年第2年補遺「ヴェネツィアとナポリ」より)
~アンコール
・ショパン:12の練習曲嬰ハ短調作品25-7
・リムスキー=コルサコフ:熊蜂の飛行(シフラ編曲)
・ショパン:ノクターン第8番変ニ長調作品27-2
・メンデルスゾーン:結婚行進曲(ヴォロドス編曲)
・シューマン:トロイメライ

ブラームスの強靭な音楽はいかにも開かれていた。これほどの技巧に溢れる音楽をこの人は書いたのだとあらためて畏敬の念。
休憩後の後半はどの瞬間もクライマックス。
メフィスト・ワルツの激しい音響と、いかにも機械的でありながら音の移ろいの見事さ。ここには自然の美が根付いていた。悪魔にも愛があったのだと。
そして、コンソレーション第3番における祈りの浪漫。信仰心に満ちる、この限りなく透明な音響に舌を巻く。何と言っても今宵の白眉は「イゾルデの愛の死」!!極めつけのうねり!これほどに「ひとりオーケストラ」の醍醐味を教えられる作品はないかも。さらには、「ラコッツィ行進曲」の堂々たる音楽に卒倒。
リスト&ホロヴィッツ編曲によるサン=サーンスの「死の舞踏」のあまりの弱音と、相当の強音に僕はひれ伏す。

5曲続いたアンコールの、整頓されながら実に濃厚な響き。超ヴィルトゥオーゾの爆発。特にメンデルスゾーン&ヴォロドスにおける繊細でありながら豪放磊落な音楽に感涙。最後のトロイメライを聴いて、ガヴリリュクの目指すところはやっぱりホロヴィッツなのだと確信した。あの、何十年ぶりかの祖国での帰還ライヴを髣髴とさせる静けさと哀感の総集編たるシューマン!!もはや言葉にならない・・・。

 

ブログ・ランキングに参加しています。下のバナーを1クリック応援よろしくお願いいたします。


日記・雑談(50歳代) ブログランキングへ

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む