フラグスタートの「ノルウェー歌曲集」を聴いて思ふ

flagstad_norwegian_songs092これほど伝わり、涙まで誘われるような歌はなかなかない。
ここに聴かれる温もりは歌手の祖国への愛の表現という以外に相応しい言葉が思い浮かばない。旧い録音を超えて、否、旧い録音であるがゆえに感じられる人の心。

まるでワーグナーのようなグリーグ。
ドスの利いた輝かんばかりの声。全盛期のキルステン・フラスグタートの歌は、実に濃厚で官能的。

もういちど奇跡が起こって、幸福が私に与えられた。春の喜びのすべてをこの世で見ようとは!
「作曲家別名曲解説ライブラリー18北欧の巨匠」(音楽之友社)P93

生きることの喜びが、これほどまでに切なく、そして激しく歌われること自体奇蹟のようだ。1880年の「春」は実に美しい。そして、1870年の「モンテ・ピンチョより」の、丘の上から見える情景をかくも情感豊かに表現したフラグスタートの類稀な力量。
また、「白鳥」の、静謐な調べに乗る彼女の声は重厚で、白鳥の鳴き声の如く悲しい。

私の白い白鳥、おまえは黙し、おまえはしずか。
~同上書P91

キルステン・フラグスタート/ノルウェー歌曲集
グリーグ:
・6つのドイツ語の歌作品48~第6曲「ある夢」(クレーヴェン編曲)
・4つの詩作品21~第4曲「あなたの忠告に感謝する」(クレーヴェン編曲)
・12の歌作品33~第2曲「春」
・6つのロマンス作品39~第1曲「モンテ・ピンチョより」
・12の歌作品33~第1曲「青春」(グンストロム編曲)
・5つの詩作品70~第1曲「エロス」(レーガー編曲)
・12の歌作品33~第9曲「ルンダルネにて」(クレーヴェン編曲)
・6つのドイツ語の歌作品48~第6曲「ある夢」(クレーヴェン編曲)
・6つの詩作品25~第2曲「白鳥」
・12の歌作品33~第3曲「傷ついた心」
ウォーウィック・ブレイスウェイト&ヴァルター・ジュスキント指揮フィルハーモニア管弦楽団(1948.3-5録音)
・6つの詩作品25~第4曲「睡蓮とともに」(1948.5.26録音)
・「王女」(1871)(1948.5.26録音)
・12の歌作品33~第5曲「川にそって」(1948.5.30録音)
・5つの詩作品60~第3曲「待ちながら」(1948.5.30録音)
ジェラルド・ムーア(ピアノ)
・5つの詩作品26~第4曲「早咲きの桜草とともに」
・5つの詩作品60~第5曲「そして私は恋人がほしい」
エドウィン・マッカーサー(ピアノ)(1937.6.28録音)
・4つのロマンス作品15~第4曲「母の嘆き」
・ソルヴェイグの歌~「ペール・ギュント第1幕」
管弦楽団(1929.1.19録音)
・アルフ・フールム:「明るい夜」作品13-1
エドウィン・マッカーサー(ピアノ)(1937.6.28録音)
・シグルド・リー:「雪」
・アイヴィン・アルネス:3つの歌作品26~第1曲「ふたりだけの幸せ」
アイヴィン・アルネス(ピアノ)(1929.1.19録音)
・オーレ・ブル:セーテルの娘の日曜日
・グリーグ:6つのロマンス作品39~第4曲「ばらに囲まれて」
管弦楽団(1929.1.19録音)
・アガーテ・バッケル=グレンダール:「夕暮れに」作品42-7
管弦楽団(1923.10.1録音)
・クリスティアン・シンディング:「5月の夜」作品22-3
ピアニスト不詳(1923.10.2録音)

見知らぬ作曲家の作品が数多く並ぶが、まだ見ぬ北欧の彼の地の抒情が眼前に開け、それぞれに懐かしさが込み上げる。フラグスタートの哀愁帯びた声質がそれに輪をかける。ここには大いなる共感がある。リーの「雪」など、ピアノ伴奏が、しとしとと降り積もる雪景色の風情を見事に表しており、歌詞の内容が一体どういうものなのかわからないものの、フラグスタートの低く渋い声が一層心に響く。
ブルの「セーテルの娘の日曜日」の、オーケストラ前奏の弦のポルタメントに恍惚。そして、フラグスタートの深い呼吸を伴った歌に感応。バッケル=グレンダールとシンディングは100年近く前の録音。特にシンディングの「5月の夜」にはどこかマーラーのような旋律が浮き沈みし、実に味わい深い音楽だ。

 

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