Salonen conducts Lindberg

エサ=ペッカ・サロネンを勉強中。
さすがに作曲家だけあり、現代音楽にことのほか適性があるように思える。というより、古典モノを享受するには僕自身まだまだ至らない。おそらくベートーヴェンなどを演ると相当際物的名演奏が繰り広げられるのだろうけれど。

世界初録音であったマグヌス・リンドベルイの管弦楽曲集を聴いた。とても良い。ジャン・シベリウスの流れを汲み、北欧神話的精神性が見事に反映された楽曲が続く。

ライナーノーツにはマーティン・アンダーソンと作曲者との対話が掲載されているので、これを参考に楽曲を聴いてゆくととても面白く聴ける。
テンポとアーティキュレーション並行して考えることを追究したという「カンティガス」は、明確な個性をもつ8つの異なった要素からなる設計図を描いた上で組み立てられたもの。大変に緻密な思考の上での産物也(現代音楽というのは皆そうか・・・)。
次のカルットゥネンとのチェロ協奏曲が聴きどころ。
「私は、現代の協奏曲には、その楽器のもつあらゆる要素を、そして私と楽器との関係をもりこみたいと思っています。それには、まず、私がチェロとともに得てきたあらゆる経験の集大成を作らねばなりませんでした。(中略)それから、もちろん、アンサンブルとの関係を考えていく作業も行いました」
まさに全体最適と部分最適の双方向の視点で作られた傑作なんだ!

そして、「パラーダ」について。
「私はまず、外側を整えるところから始め、そして、その内側のゆっくりとした箇所を作っていきました。しかし、実際にできあがったのは緩徐楽章ではなく、緩徐楽章とスケルツォ素材を融合したもののようになりました」

ちなみに、サロネンとリンドベルイは同年生まれで、シベリウス音楽院の同窓生である。彼らの友情はその時以来らしいが、かの音楽院時代にコルヴァト・アウキ(耳を開け)という、現代音楽の内容を向上させるためのサークルを共に創ったそう。そして、その後すぐにトイミー・アンサンブル(動け)を結成する。「耳を開いて、動け」というのはすべてに通ずる真理だ。つまり、直観を磨き、ひらめきに従い、とにかく行動せよということ。
こういうことからしてサロネンは「わかっている」ようだ。のめり込む価値ありそう。

マグヌス・リンドベルイ:
・カンティガス
・チェロ協奏曲
・パラーダ
・フレスコ
クリストファー・オニール(オーボエ)
アンッシ・カルットゥネン(チェロ)
エサ=ペッカ・サロネン指揮フィルハーモニア管弦楽団(2001.11.16-18録音)

「フレスコ」を作るにあたって、リンドベルイは、2種類のガムラン音楽(屋外で演奏される「にぎやかな様式」と屋内で演奏される「静かな様式」)を調べたそうだ。ゆえに「軽やかな色合いの音楽と、音の塊がドスンと落ちているような音楽との間の強い対比と衝突が生れる」のだと。そしてこの対比は最後まで融合はしない。
といっても彼の音楽は決して「カオス」ではない。ひとつひとつが閉じられた「コスモス」を現出する(ように僕には聴こえる)。

こうやってみていくと、この作曲家はあらゆる技法を駆使して、しかも様々な音楽語法を借りて、自らの個性的な音楽を創造する。で、実際に音にするのにサロネンという盟友の理解と協力が不可欠だということだ。これこそ真の音楽協働作業。

ふみ君にまんまとそそのかされた(笑)。とはいえ、大いなる発見。ありがとう。

太字はすべてライナーノーツ(翻訳:藤田真美)より抜粋。


2 COMMENTS

ふみ

そんな、岡本さんをそそのかすなんて100年早いですよ(笑)というより、またまた初耳の作曲家が。いやぁ、さすが岡本さん…幅広いですねぇ、勉強になります。ありがとうございます。僕もこのCD見掛けたら買ってみます。

ちなみに彼のベト7は凄かったです。あれ程「音楽が生み出される喜び」を感じた一楽章は初めてです。YouTubeでありますよ。とりあえず四楽章を。もうぶっ飛びます(笑)

http://youtu.be/XWU8tN2hdsI

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岡本 浩和

>ふみ君
いやあ、すごい!このフィナーレ聴いただけでサロネンのベートーヴェンのすごみが半分ほどわかりました。(笑)
リンドベルイに限らず現代音楽を振らせるとかなりうまいね、この人は。
まだ聴いていないんだけど、レブエルタスもきっと良い演奏だろうと想像できます。

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