ディオゲネス四重奏団のフェスカ作品集第1集を聴いて思ふ

fesca_string_quartets_1_diogenes_q212世界にはいまだ自分が知らない作曲家がいて、知らない作品がまだまだたくさんある。
古今東西十分に名を馳せる作曲家とそうでない作曲家の違いって何なのだろう?
例えば、たった1曲の名作を残したがゆえに後世まで名を残す天才もあれば、その作品のほぼすべてが傑作と認定されるほどの神たる存在もある中で。
未知の作曲家の作品を聴いて思うのは、その人が間違いなく有名な作曲家たちと同時代の空気を吸っていただろうことが音楽から醸されていること。そして、同時にその頃の有名な天才たち同様、その人も革新的な挑戦をしていることが意外とあるものだということ。

ベートーヴェンが生まれた19年後に生を得、ベートーヴェンの1年前に結核により天に召されたフリードリヒ・エルンスト・フェスカ。彼が残した21曲の弦楽四重奏曲の中からいくつかを耳にして、ハイドンやモーツァルトの影響を多大に受けながらも、そこには彼独自の書法が散見されるとともに、後のメンデルスゾーンやシューマンの方法を先取りしている新しさがあることを知った。例えばフェスカは、1819年の初め頃に出版された第13番ニ短調作品12においてメヌエット楽章を復活させる。すべてが実に心地良い。

フェスカ:弦楽四重奏曲全集第1集
・弦楽四重奏曲第1番変ホ長調作品1-1
・弦楽四重奏曲第2番嬰へ短調作品1-2
・弦楽四重奏のためのポプリ第2番変ロ長調作品11
・弦楽四重奏曲第3番変ロ長調作品1-3
・弦楽四重奏曲第7番イ短調作品3-1
・弦楽四重奏曲第8番ニ長調作品3-2
・弦楽四重奏曲第13番ニ短調作品12
・弦楽四重奏曲第15番ニ長調作品34
・弦楽四重奏曲第9番変ホ長調作品3-3
ディオゲネス四重奏団(2007.10.18-20, 2009.6.3-5, 2010.10.18-20録音)
シュテファン・キーパル(ヴァイオリン)
グンドゥラ・キーパル(ヴァイオリン)
シュテファニー・クラウス(ヴィオラ)
シュテフェン・リスタウ(チェロ)

第15番ニ長調作品34の、息の長いシューベルトを思わせる旋律の美しさに嘆息。第2楽章アンダンティーノは展開部を持たないソナタ形式。この楽章の可憐で懐かしい音調に感動。第3楽章はスケルツォだが、ト短調のトリオのどこかブルックナーのそれを思わせる響きに作曲家の革新を、そして終楽章アレグロの愉悦に溢れる軽快さにハイドンを思う。

ディオゲネス四重奏団のアンサンブルは丁寧で、音も明朗で深い。
それにしてもベートーヴェンの肖像画も残しているフェルディナント・ゲオルク・ヴァルトミュラーの描いた「少女」と題する絵をジャケットに使うCPOのセンスに感無量。フェスカの四重奏曲にぴったり。
優しい光と音色に癒される皐月の休日。
フリードリヒ・エルンスト・フェスカの189回目の命日に思う。

 

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