1950年代後半の・・・帝王

ブログを書き始めてそろそろ丸5年が経過するが、当時からブログ・ランキングなるものに登録していた。もちろん登録ジャンルの問題もあろうが、最近は10位以内を推移するようになり、たくさんの方に閲覧していただいているようで感謝の念に堪えない。
何事も継続だと自負する。特別なテクニックを使わず、やっぱり地道に努力するというのが僕の信条。いつまで続くのかはわからないが、とにかく気力持つまでやり切る、そんな風に今は考えている。

昨日の続き。再度マイルスについて思考する。
帝王になる前のマイルスには別の意味での余裕と風格がある。何物にも縛られない自由奔放さと他と調和する自然さ。1950年代後半のマイルスは本当に素敵。そして、ちょうど同じ頃、後のクラシック音楽界の帝王となるヘルベルト・フォン・カラヤンはフィルハーモニア管弦楽団との蜜月時期。ベルリン・フィルの時の数多い名盤を差し置いて、実は僕がカラヤンで最も惹かれるのはこの時期のもの。謙虚さに付随するような素直で実直なバイブレーションが音の隅々から感じ取れる。音楽そのものが鳴る、というような。

カラヤンのロシアものも素晴らしい。一般的には土俗的なものが好まれるのだろうが、カラヤンのものは極めてソフィスティケートされた彼らしい音楽。聴き方によっては物足りないと感じるのかもしれないが、洗練度合いが中途半端でなく、そのあたりが聴いていて疲れず、バックグラウンドミュージック的で状況によっては相応しい音盤。
ということで、数年前にリリースされた1950年代の、帝王前夜の録音をまとめたものからひとつ。

ロシア名曲集
チャイコフスキー:
・バレエ音楽「白鳥の湖」組曲作品20
・バレエ音楽「眠りの森の美女」組曲作品66(1959.1録音)
・大序曲「1812年」作品49(1958.1.17&1959.2.6録音)
ムソルグスキー:
・組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)(1955.10.11&12, 1956.6.18録音)
・歌劇「ホヴァンシチナ」(リムスキー=コルサコフ編)より
―第4幕の間奏曲(1959.1.3,5&6録音)
―ペルシャの奴隷の踊り(1960.9.21-23録音)
ボロディン:
歌劇「イーゴリ公」より
―だったん人の娘たちの踊り
―だったん人の踊り(1960.9.21-23録音)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団

こんな「展覧会の絵」は聴いたことがない。悪く言えば記憶に残らない。以前だったら一笑に付していただろう録音だけれど、いかにもラヴェル風の都会的センスが満点で意外に見逃せない。
あと、何より付録の小品集が素晴らしい(こういう音楽を振らせたらカラヤンの右に出る者はいない)。ボロディンなど今や滅多に聴かない音楽だが、久しぶりに「だったん人の踊り」を繰り返し聴いてしまった。後半の「タ、タ、タ、タ」というリズムが頭から離れぬ(笑)。


5 COMMENTS

雅之

こんばんは。
70年代初頭マイルスの”On the Corner”なんかを聴いて、意外なことかもしれませんが、ふと、彼はカラヤンに影響された部分も多いのではないかと感じる瞬間があります。50年代からエヴァンスを通じてなどで、クラシック界から刺激を受けていたでしょうし、上記盤などでは、トランペッターとしてよりも、むしろ指揮者的、あるいはプロデューサー的役割のほうに比重が大きくなってきている感があります。ライヴとは別に、レコードの、価値やセールスの重要性を早くから認識していたという点でも、カラヤンとの共通点があります。そして、二人とも「帝王」でした。

ところで、ご紹介のカラヤン盤ですが、

>以前だったら一笑に付していただろう録音だけれど、

以前も今も、カラヤンは我々の「能書き」について、一笑に付すことさえもしないでしょうね(笑)。カラヤン&フィルハーモニアの一連の録音は、どれも立派なものばかりだと、私も思います。

フィルハーモニア管弦楽団の話題というと、ザンデルリンクとの交響曲全集
http://tower.jp/item/3058905/
がタワーレコードから発売されましたが、これがスケールの大きな超名演揃いで腰を抜かすほど驚きました。

平林直哉さんが「無線と実験」5月号で、「私も初めて聴いたが、録音と内容の点で、全9曲がこれだけ高い水準というのは屈指であろう。この解釈に最も近いものというなら、同じオーケストラを振ったクレンペラーだ」などと、序曲も含め褒めちぎっていたので、聴いてみたのですが、確かに素晴らしいのなんの!! 数ある所有のベートヴェン交響曲全集で、目下最も好きになりました。

スコアはクレンペラーよりも、改変箇所がずっと多いのですが、たとえばホルンの重要性をよく認識した改変が多かったりして嬉しくなったり、全部が納得できますし、全体に重心が低く、弦の中・低音が充実していてスケールが大きくて、実に私好みなのが嬉しい限りです。録音された1980年代初頭のフィルハーモニア管弦楽団というと、私は若き日のラトルの指揮で実演を聴き感動したものですが、ザンデルリンクの指揮でも聴いてみたかったです。

この2〜3日、この話題に降りたくて堪らなかったのです(笑)。
前回、漱石の手紙「牛になることはどうしても必要です」を引用したのも、本音はザンデルリンクやクレンペラーに話題を振りたかったのでございました(爆発)。

>何事も継続だと自負する。

そう、「牛になることはどうしても必要です」
<展覧会の絵> 「ビドロ」

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。

>トランペッターとしてよりも、むしろ指揮者的、あるいはプロデューサー的役割のほうに比重が大きくなってきている感があります。

確かにマイルスとカラヤンは異名に限らず共通性ありますね。
おっしゃるとおりマイルスも間違いなくカラヤンの影響を受けたんだと思います。
しかしまぁ、実業家としては圧倒的にカラヤンの方が凄かったわけですが・・・。

>カラヤン&フィルハーモニアの一連の録音は、どれも立派なものばかりだと、私も思います。

あ、はい・・・。ここのところ特に60年前後のカラヤンの演奏の素晴らしさを再確認しているのでああいう言い回しをしましたが。

>ザンデルリンクとの交響曲全集

あ、やっぱりこれすごいですか?!
気にはなっていましたが、何だかもう今更ベートーヴェンの全集でもないだろうという気持ちが先に立ってしまい、完全に無視しておりました。
が、ここまでべた褒めなら聴かずにはおれません(笑)。

>1980年代初頭のフィルハーモニア管弦楽団というと、私は若き日のラトルの指揮で実演を聴き感動したものですが、ザンデルリンクの指揮でも聴いてみたかったです。

羨ましい限りです。あの頃のフィルハーモニアはまた良かったでしょうね。

>前回、漱石の手紙「牛になることはどうしても必要です」を引用したのも、本音はザンデルリンクやクレンペラーに話題を振りたかったのでございました

それならそうと早く素直に書いていただければ・・・(笑)

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
今朝、偶然なのですがNHK-FMでザンデルリンク&ケルン放送響の「田園」がかかっておりました。僕が聴いたのは第1楽章の途中からだったのですが、てっきりフルトヴェングラーかと思ったほどです(最近では珍しいなと思いつつ)。
そのままぼーっと聴き続けておりましたが、あまりの素晴らしさに番組表で調べたところザンデルリンクとわかりました。それもご紹介のフィルハーモニア盤より後のものです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2625291

いやあ、心底驚きました。(比較しないと何とも言えませんが、ケルン盤はフィルハーモニア盤以上かもしれませんよ)
これは価値ありですね。
ありがとうございます。

返信する
雅之

こんばんは。

ケルン盤はそんなに素晴らしいですか! それは聴いてみなきゃいけないですね!

前述の「無線と実験」5月号の平林直哉さん評では、
『第6番「田園」も素晴らしいの一語につきる。最近では晩年のライヴも発売され、それらはきわめて重厚、壮大だったが、この演奏はその一歩手前で踏みとどまっているので、一般性はより高いと思われる』
とあります。

つくづく偉大な巨匠だったと、マーラーでも、ブルックナーでも、チャイコフスキーでも、シベリウスでも、ライヴでもセッションでも、どの音盤を聴いても思い知らされます。
70年代〜80年代、何故私たちクラシックファンは彼のことをあんなに軽視していたのでしょうね。不思議といえば不思議です。時代の空気と合わなかったのでしょうか?
http://columbia.jp/classics/kono1mai/042.html

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
いや、ほんとに腰を抜かすほどでした。(笑)
実演だったらさぞかし、ですね・・・。

>70年代〜80年代、何故私たちクラシックファンは彼のことをあんなに軽視していたのでしょうね。不思議といえば不思議です。時代の空気と合わなかったのでしょうか?

ヴァントの場合もそうですし、朝比奈の場合もそうだと思いますが、特に当時は「レコ芸」や「芸術現代」という限られた情報誌の評価だけに聴衆は左右されていたのかもしれませんね。僕も聴く機会は幾度もあったのに逃してしまいました。無念でなりません。

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