Lou Reed “New York”(1989)を聴いて思ふ

lou_reed_new_york362生の音楽というのは実に刺激的だ。
例えば、ギター一本のアコースティック・ライブであろうと、それは本当に刺激的で温かく、心を動かす。何事においても挑戦あるのみ。

フレッチャー、きみはああいうことが嫌いなんだろう!それは当然だ、憎しみや悪意を愛せないのはな。きみはみずからをきたえ、そしてカモメの本来の姿、つまりそれぞれの中にある良いものを発見するようにつとめなくちゃならん。彼らが自分自身を見いだす手助けをするのだ。わたしのいう愛とはそういうことなんだ。そこのところをのみこみさえすれば、それはそれで楽しいことなのだよ。
リチャード・バック著/五木寛之訳「かもめのジョナサン」(新潮文庫)P126

真の愛とは、他の者が真の自分を取り戻す手助けをすることなのだとジョナサンは言うのである。当を得たり。

ルー・リード死して2年が経過する。
彼のライブの底知れぬパワーを思い出す。そして、まるでシュプレヒ・ゲザンゲのような歌に異様な哀愁さえ覚える。彼は何のためにヴェルヴェッツをやったのか?また、何のために音楽を作り、歌ったのか?すべては後の世代が自分たち自身を見いだす手助けのためだったのだろう、もちろん本人に自覚はないだろうが。

いかにもルーらしい、”Romeo Had Juliette”に、そして、自然破壊をテーマにしたヴェルヴェッツを髣髴とさせる”Last Great American Whale”(何とモーリン・タッカーがパーカッションで参加しているのである)に涙する。

彼に敵はなかったという
彼は注目すべき巨大さで
最後に生き残った子孫だった
地球のこちら側の最終の一頭
彼は頭の先端から尾っぽまで半マイルあって
銀と黒で力強いヒレを持っていた
彼には山を2つに引き裂くこともできたという
そうしてグランド・キャニオンができたのだ
(訳:沼崎敦子)

Lou Reed:New York

Personnel
Lou Reed (vocals, guitar, background vocals)
Mike Rathke (guitar)
Rob Wasserman (Clevinger electric upright six-string bass)
Fred Maher (drums, Fender bass)
Maureen Tucker (percussion)
Dion DiMucci (background vocals)
Jeffrey Lesser (background vocals)

熱い。
とにかく熱い。
どこまでも熱い。
深夜に聴くルー・リードはあまりに恍惚。
それに、かっこ良すぎ。

フレッチャーは自分の生徒たちに、厳しい教師と見られるように振舞おうと努めたが、しかし彼は突然、ほんの一瞬にしろ、生徒たち全員の本来の姿を見たのだ。そして彼は自分が見抜いた真の彼らの姿に、好意どころか、愛さえおぼえたのだった。無限なんですね、ジョナサン、そうでしょう?彼は思った。そして微笑した。完全なるものへの彼の歩みは、すでにはじまっていたのだった。
~同上書P130-131

そう、無限なのだ。

 

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