フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルのモーツァルトK.550(1944.6Live)を聴いて思ふ

schubert_mozart_furtwangler_bpo_1944389第二次大戦中、戦況が悪化の一途を辿ったその時期、コンサートで指揮をするフルトヴェングラーは何を思ったのだろう?
1944年6月の、ウィーン・フィルとのシューベルトやモーツァルトの作品の、あまりに哀しく、そしてあまりに熱のこもった音楽に心底感動した。
「ロザムンデ」間奏曲は、まるで葬送音楽のような趣。中間部の舞踏もどこか悲しげだ。
この時点ですでに彼が祖国の未来を悟っていたのかどうかはわからない。
それにしても、夢か現か・・・、数あるフルトヴェングラーのシューベルトの中でもこれは指折りの演奏ではあるまいか。

ヴィルヘルム・フルトヴェングラーは1953年のインタビューで「指揮者に課せられた最も重要な仕事はオーケストラに精神的な輪郭を与えることだ」と語り、そして、そのために必要なことは、決して「わかりやすい指揮をすること」ではなく、「音楽そのものを指揮することに注力すること」なのだと断言しているが、まさにそのことを体現する名演奏であると僕は思う。

そして、「これぞフルトヴェングラーのモーツァルト!!」と言うべき疾走する悲しみが見事に刻印されたト短調交響曲!!第1楽章モルト・アレグロ冒頭から音楽が瑞々しく流れ、うねり咆える。何という透明感。そして、後のスタジオ録音のあっけないスピードが子ども騙しのように思えるほど、音楽は有機的で深い淵を覗き込む。
また、第2楽章アンダンテの、粘るテンポから生み出される懐古と憧憬と。美しい!!
雄渾で勇ましい第3楽章メヌエットを経て、第4楽章アレグロ・アッサイは疾風怒濤の如し。

・シューベルト:劇付随音楽「ロザムンデ」間奏曲第3番
・モーツァルト:交響曲第40番ト短調K.550
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団(1944.6Live)
・ラヴェル:高雅で感傷的なワルツ(リハーサル&全曲通し)
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1953.4Live)

さらに、珍しいフルトヴェングラーのラヴェル。内容は不明だが、ところどころオーケストラを止め(おそらく)細かい指示を出すフルトヴェングラーの声が聞こえる。
彼はラヴェルの作品をことのほか愛したそうで、この「高雅で感傷的なワルツ」も色彩豊かな音に包まれ、魔法の如く光輝を発する。

フルトヴェングラーは、1944年11月と12月に帝国の滅亡がどの程度の災害になるか、そしてその結末を避ける方法はもはやないことを知った。その情報は、軍需産業問題の第一人者であるシュペーア本人から聞いた。12月11日と12日のフィルハーモニー演奏会の休憩時間に、指揮者に頼まれて楽屋を訪ねたときであった。シュペーアは、そのときの会話を思い出して、

「彼は、戦争の状況はどうなっているのか尋ねた。それは当時間違いなく危険な質問だったことは認めなければならない。あの頃は、勝利を確信するのは一般的な合言葉であったからだ。彼が勝利を少なくとも疑っていたのはその質問で明確になった。フルトヴェングラーはこの質問で、私の手中に陥ったようなものだから、私もきっぱりと、絶望的でもう敗北寸前であると隠さずに答えた。それからの話し合いの詳細は思い出せないが、雑談のなかで私がフルトヴェングラーにスイスへ行き、そのまま戻らないよう忠告したことだけは覚えている。」
フレート・K・プリーベルク著/香川檀・市原和子訳「巨匠フルトヴェングラー―ナチ時代の音楽闘争」(音楽之友社)P550-551

61回目の命日に。

 

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