実践生活+観想生活

saint_saens_munch.jpg明日は第22回「早わかりクラシック音楽講座」だが、5日に帰京したとき、参加のエントリーは何とわずか1名!いかん、油断していた・・・と、焦ってインフォメーションを出したところ、あっという間に11名集まった。2年間というものひと月もパスすることなく継続してきたことが何よりの財産だと自負するが、それ以上に過去に参加した方がリピートし、さらには友人まで連れてきていただけるということが何より嬉しい。我ながらたいしたものなのかな・・・?(笑)いや、皆様に感謝いたします。

昼前から銀座で所用があったので往復の車中で「グレン・グールド 孤独のアリア」(ミシェル・シュネデール著、千葉文夫訳)を読む。グレン・グールドの脳みそを縦横に切って論じているとても興味深い本。そこに書いてあった一節。

『1964年にグールドがきっぱり背を向けてしまったのは、中世において実践生活と呼ばれたものにあたる。彼はもう一方の極にある観想生活にピアノと一緒にひきこもり、そこから出ることはなかった。「実践生活は仕事に明け暮れる日々であり、観想生活は静かな日々である。実践生活は公衆のなかで送られ、観想生活は人のいないところで送られる。実践生活は隣人を必要とし、観想生活は神を見つめることに捧げられる。」これが12世紀初頭、サン=ヴィクトルのフーゴーによって描き出された対比の規範的構図である。改革への熱い想いにつきうごかされ、また純粋なシンメトリーの魅惑にとらわれた揺るぎない主張だった』

ワークライフバランスという言葉が叫ばれるようになって久しい。2年前までの生活を振り返ったとき、「仕事と生活」のバランスがとれていなかったどころか、仕事とプライベートの境界すら曖昧だったことが最大の問題点だった。とはいえ、決して働き過ぎていたわけではない。むしろ仕事と称して遊んでいたようなものである。ただ、ほとんどオンオフを明確にしなかったことが誤りであったと今になって痛感する。来るところまで来たように思える今の時代、生活のバランスを崩してまで無闇に仕事をすることっていかがなものなんだろう・・・。

ふとリラックスした気分に浸りたいと久しぶりに取り出したのがサン=サーンス。

サン=サーンス:交響曲第3番ハ短調作品78「オルガン付」
ベルイ・ザムコヒアン(オルガン)
バーナード・ジゲラ、レオ・リトウィン(ピアノ)
シャルル・ミュンシュ指揮ボストン交響楽団

第2楽章第2部のオルガンの地鳴りのような響きは壮絶。身も心もとろけるようなロマン。シャルル・ミュンシュほど心技体のバランスがとれた音楽作りをする指揮者はなかなかいまい。とても50年前のものとは思えない優秀録音がその表現に輪をかける。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
サン=サーンスのこの曲は、オーディオ的面白さが満喫できる曲だと思うのですが、案外新しい録音にいいものが少ないですね。ミュンシュ&ボストン響は、私も、やはり今でも録音も含めて最高だと思います。
あと、意外なことに、トスカニーニの演奏が熱気に溢れていてとてもいいです。オルガンも魅力的だし、よく録れています。これはおすすめです。
http://www.hmv.co.jp/product/detail/2657165
東京オペラ・シティや横浜みなとみらいなどで、過去、国内オケでこの曲の生演奏を何回か聴き、都度その迫力に感動しています。パイプ・オルガンを設置しているホールでは、この曲やホルストの「惑星」など、パイプ・オルガンを含んだ肩の凝らないストレスが発散できる曲を、もっとやってほしいです。パイプ・オルガンを無駄にしないためにも・・・。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
僕もそれほどこの楽曲の音盤を蒐集しているわけではないので詳しくは語れませんが、新しい録音にいいものが少ないというのは何かわかるような気がします。
そうですか、トスカニーニ盤がいいですか?意外です。
実演では未聴なので、近いうち機会がありましたら聴いてみたいと思います。生はいいでしょうねぇ・・・。

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