先日の瑞浪滞在中、近藤恵三子画伯と話をしていて、彼女が「自然は曲線で成り立っており、そこには直線はない。建築物など人間が創り出したものは直線が多い」というアントニ・ガウディの言葉から、11月に開催する愛知とし子とのコラボ・コンサートに出展する作品には、曲線の中(もともと彼女は野菜や植物を描くことをテーマとしている)に意図的に直線を交えることで、「人間の強い意思」のようなものを表現しようとしている(正確な言葉は忘れた)ということを語ったのを聞き、なるほどそれは面白いし、良い作品ができあがるだろうと直感した。同席の愛知とし子も「音楽の持つ曲線美にあえて直線的な動き、意識を取り入れるのが得意で、ゆえにそういう表現にぴったりなベートーヴェンの音楽は好きだが、そうでないショパンなどはどうも苦手だ」ということを言っていたのを聞き、「言い得て妙」だと不思議に納得させられた。
建築家のアントニ・ガウディは自然を重んじ、愛したそうで、彼が自然の中に直線的なものはなく曲線でできているので、建築もそうあるべきだと考え、建築物に曲線を多用したというのは有名な話である。ただし、曲線だけを使ったのではなく、直線をいわばスパイス的に混ぜながら創造したのであり、そういうところに彼の建築芸術の凄さがあるのである。
曲線と直線のコラボは宇宙・自然と人間とのコミュニケーションであり、そういう中にあらたな「美」が生まれるということなのだろう。
ところで、ダニエル・ギリス編・仙北谷晃一訳「フルトヴェングラー頌」にて、カルル・レッセル=マーイダンが、オーケストラ技術とは何かについて触れている文章が機知に富んでいて面白い。
獅子のように髪の毛をなびかせて、火と燃える身振りをもって、目前のオーケストラを指揮した、若き日のフルトヴェングラーのイメージが、ありありと目に浮かぶ。さまざまな楽器が、さながら高鳴る巨大な有機体のごとく鳴り響いた。当時、若き巨匠の指揮の下に、バスの歌い手だった父は、オーケストラ芸術の偉大さを、少年の私に次のように説明したものだ。金管楽器は鉱物界を代表する、木管楽器の故郷は植物の世界だが、弦楽器の腸線や薄膜や象牙を提供するのは、動物だ。これらの生物界と非生物界の上に、四種の気質に応じた人間の声が、楽器のように鳴り響く。しかしさらにその上にあってすべてを支配するのが、指揮者というもので、彼こそは、大宇宙である自然全体の中の創造者か、さもなければ、小宇宙である人間世界の中の精神に相当するものだ。
これを読むと、オーケストラとはまさに宇宙の全てであり、それによって奏でられる音楽がツボにはまった時に「真に心を動かされる」理由があらためてわかったようで感動した。
個人的には弦楽器の音、すなわち弦楽合奏は極めて好みであるが、管楽合奏、ブラスの音はいまひとつ僕の心を捉えない。どうしてなのかその理由は自分でもよくわからないが、上の文章に何かヒントが隠されているかもしれない。
苦手ながら、時折取り出しては楽しませていただいている音楽に、マリナー指揮するモーツァルトの協奏交響曲K.297b(レヴィン編曲版)があるが、今日は珍しいベートーヴェンの管楽作品を聴いてみる。
ベートーヴェン:
・管楽八重奏曲変ホ長調作品103
ベルリン・フィルハーモニー・メンバー
・ロンディーノ変ホ長調WoO25
オランダ管楽アンサンブル
・管楽三重奏曲ハ長調作品87
・「ラ・チ・ダレーム」による変奏曲ハ長調WoO28
ハインツ・ホリガー、ハンス・エルホルスト(オーボエ)
モーリス・ブルグ(イングリッシュ・ホルン)
いずれもベートーヴェンの初期、20代の頃に書かれた音楽。おそらく習作的に書かれた作品なのだろう作曲者本人も出版の意思はなかったようで、後年になって作品番号が与えられたり、そうでなかったりという作品群。確かにそれほど面白いと思える音楽ではないし、まったく僕好みではない。それでも夏の暑い昼下がりにぼーっと聴くにはうってつけの音楽かな・・・。
こんばんは。
曲線と直線についてのお話は、おっしゃるとおりですよね。
カルル・レッセル=マーイダンのオーケストラについての言葉も、なるほどと思いました。楽器の材料に関しては、いろいろ補足したくなりますが・・・。
ご紹介のベートーヴェンは奏者に役者が揃ってますね。未聴なので聴いてみたいです。
>管楽合奏、ブラスの音はいまひとつ僕の心を捉えない。
では、こんなのはどうですか?
「Sketches Of Spain」Miles Davis他
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%B1%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%BB%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%82%A4%E3%83%B3
http://www.hmv.co.jp/product/detail/493277
ちなみに、ピアノやパイプオルガンも金属の塊ですが・・・。
>雅之様
こんばんは。
「スケッチ・オブ・スペイン」を出されてしまうと・・・、返す言葉もございません(笑)。確かに矛盾しておりますね。ピアノやパイプ・オルガンもそうです・・・。
うーん、うまく説明できませんが、金管合奏の名演奏に触れたことがないのかもしれません(いや、そんなことないかなぁ)。
多分、理屈抜きの好みの問題なんだと思います。