スゼー ボールドウィン グノー 「君なくて」(セギュール詩)(1973.4&5録音)ほか

シャルル・グノーの本領は、オペラと歌曲にある。
モーリス・ラヴェルは、グノーをして「フランスにおける歌曲の真のイノベーターであり、クラヴシニストの時代以降忘れられてしまっていた和声的な官能性の真髄を再発見した人物」だと評した。

グノーは150曲近い歌曲を出版したが、驚くべきはその3分の1が英語の歌詞だということだが(ほとんどは1870年秋から1874年春にかけてロンドン滞在中の作曲だが、中にはフランス帰国後に作曲したものも含まれる)、イタリア語、スペイン語、あるいはドイツ語で書かれた歌曲も多数あるグノーは、ユゴー、ミュッセ、ゴーティエ、ラマルティーヌといった優れた詩人や、ラシーヌ、ラ・フォンテーヌ、バイフ、ロンサールといった文学者を好んで選んだだけでなく、軽妙なタッチで詩に命を吹き込みながら言語の流暢さを保つことでそれぞれの詩人に相応しい音楽を生み出したためそのほとんどが注目に値するものになっている。
グノーは言葉の意味だけでなく、音の質、行のバランス、フレーズの長さの多様性にも敏感で、詩の抑揚や表現力豊かな言葉遣いのリズムに忠実に旋律を付し、テクストの雄弁さをより強調する方法で作曲したのだ。彼の歌曲を一言で表現するなら、それは「雄弁さ」である(その点で、彼は宗教演説家であるアンリ・ラコルデールからヒントを得た可能性がある)。

(ジェラール・コンデ)

実際、グノーの歌曲は、聴くほどに、ポピュラー音楽ではないのかと思えるほど美しく、そして親しみやすい旋律に溢れている。母国語だけでない、様々な言語の詩に付曲できたのは、彼の音感、リズム感の確かさからだろう。しかもそれらがすべて(どこかで聴いたことのありそうな)心に染み入る音楽なのだからなお素晴らしい。

グノー:
・「君なくて」(セギュール詩)(1870)
・「2羽の鳩」(ラ・フォンテーヌ詩)(1883)
・「あなたがいなくて」(ペイル詩)(1882)
・「愛し合おう」(バルビエ詩)(1872?)
・「おお私の美しい反逆者(つれなき人よ)」(バイフ詩)
・「私の美しい恋人は死んだ」(ゴーティエ詩)(1872)
・「春の歌」(トゥルヌー詩)(1860)
・「祈り」(スュリ・プリュドム詩)(1876)
・「夕暮れ」(ラマルティーヌ)(1840-42頃)
ジェラール・スゼー(バリトン)
ダルトン・ボールドウィン(ピアノ)(1973.4.16, 18, 24, 26 &5.21-24録音)
・「ヴェネツィア」(ミュッセ詩)(1855)(1957録音)
・「おお、きみはどこへ?」(ゴーティエ詩)(1839)(1957.12.10-14録音)
カミーユ・モラーヌ(バリトン)
シェベーク・ジェルジ(ピアノ)
リリー・ビアンヴェニュ(ピアノ)
・「愛する心」(ラシーヌ詩)(1851)(1989.8録音)
・「算術」(マーツィアルズ詩)(1989.8録音)
・「お昼寝」(作者不詳)(1871)(1991.6録音)
フェリシティ・ロット(ソプラノ)
アン・マレイ(メゾ・ソプラノ)
グラハム・ジョンソン(ピアノ)
・J.S.バッハ=グノー:「アヴェ・マリア」(ルネ・シャラン編)
バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
エリク・エリクソン指揮ストックホルム室内管弦楽団(1990.5.28-30 &6.2, 3, 9録音)
・コラール・ミサ
マリー=クレール・アラン(オルガン)
ミシェル・コルボ指揮ローザンヌ声楽アンサンブル(1988.4録音)

それにしても「コラール・ミサ」の、いかにも優しい、そして崇高さを併せ持つ音楽の美しさ。

われはきく、よもすがら、わが胸の上に、君眠る時、
吾は聴く、夜の静寂に、滴の落つるを将、落つるを。
常にかつ近み、かつ遠み、絶間なく落つるをきく、
夜もすがら、君眠る時、君眠る時、われひとりとして。

(ガブリエレ・ダンヌンチオ「声曲」)
「海潮音 上田敏訳詩集」(新潮文庫)P19

フレーニ ヴァンゾ ダム ロード バキエ プラッソン指揮トゥルーズ・キャピトール国立管 グノー 歌劇「ミレイユ」(1979.11録音) クラウス マルフィターノ プラッソン指揮トゥールーズ・カピトール管 グノー 歌劇「ロメオとジュリエット」(1983録音) アルトマン指揮パリ音楽院管 グノー 聖チェチーリア荘厳ミサ曲(1963.6録音)ほか プラッソン指揮トゥルーズ・キャピトール国立管 グノー 交響曲第2番ほか(1979.3録音) パターネ指揮ベルリン放送響 グノー「マルガレーテ(ファウスト)」ハイライト(1973.9録音)を聴いて思ふ

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