
僕の原点。
初めて聴いた日から45年以上が経過する。
いまだにこれを超える「田園」交響曲はない。それは、あくまで個人的な刷り込みによるものであることはわかっている。それでも僕にとってはこれが一番なのである。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラーが病から復帰後に、ウィーン・フィルと録音した至高のベートーヴェン。そこには、晩年の弦楽四重奏曲第15番イ短調作品132から第3楽章に付された「病より癒えたる者の神への聖なる感謝の歌」を超える大自然への感謝の念が全楽章に横溢するのである。
その瞬間の思いが、同じく第1番ハ長調に伝染している様子がわかる。
重厚な音調の中に感じとれる慈愛の精神は、ベートーヴェンの心によるものなのか、病が癒えたフルトヴェングラー自身の感謝かどうなのか。演奏についてはもはや言葉にするまでもない。僕の宝物である。
音楽は、案出されたり構築されたりしたものではなく、成長したもの、いわば直接に「自然の手」から生まれ出たものである。この点において、音楽は女性に似通っている。
~ヴィルヘルム・フルトヴェングラー/芦津丈夫訳「音楽ノート」(白水社)P66
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー71回目の命日に。
フルトヴェングラーの「田園」交響曲(SACDハイブリッド盤)
フルトヴェングラー、ドン
