等身大

scriabin_ugorski_boulez.jpgまだまだ具体的な話には程遠いが、「動き」がいろいろとある。インターネットを見たという遠く沖縄からの来訪者からの依頼。一昨年からいくつかコラボレートさせていただいているP社との新規案件。静岡のとある中学2年生向け「キャリア教育」に関する特別授業への出講など。もちろん「ワークショップZERO」をより多くの方々に提供するためのプロジェクトという動きもある。ひとつひとつが社会的にも意義のあることだと思うので、僕にできることは何でもチャレンジしてみようと思っている(とはいえ社会的意義と自社の成長のバランスはしっかりとらないといけないので、もちろんその前提だが)。

何だか久しぶりに何を書こうか迷った。一日何もなかったわけではないのだが、何を書いていいのかわからない。基本的に毎日更新を謳っている以上、何か捻り出さねばとパソコンの前で自身と格闘しながらこれを書いている(笑)。

今日だけで何回聴いただろう。最後の音が消えるとまた最初から聴いてみたくなる。わずか30分にも満たない音楽だが、ラフマニノフやショパンのもつセンチメンタリズムよりは「深み」があるように僕には感じられる。まるで飽きが来ない。

スクリャービン:ピアノ協奏曲嬰へ短調作品20
アナトール・ウゴルスキ(ピアノ)
ピエール・ブーレーズ指揮シカゴ交響楽団

帝政ロシアの最後の輝きを放つロマンチシズムに溢れた音楽。22歳のスクリャービンが創作した唯一のピアノ協奏曲には、ほぼ同年齢で、かつモスクワ音楽院で同窓だったラフマニノフのそれに優るとも劣らない「美」がある。後年のスクリャービンの発した、ラフマニノフにはない「妖艶さ」が既にこの中にはあるのだ。ラフマニノフが生涯ずっと同じ路線を歩んだにもかかわらず、スクリャービンは歳をとるにつれ独自の道を突き進んでゆく。後年のスクリャービン独自の世界も魅力的だが、若い頃-ショパンの影響をもろに受けていた頃のスクリャービンの音楽はずっと自然に心に染み渡る。

「自然体」、「あるがまま」、「等身大」

最近は、フォローアップを兼ね、これまで「ワークショップZERO」を受講いただいた方に会い、その後の変化や成長について語り合う機会をもつようにしている。今夜は渋谷で1年半ほど前に受講いただいたある女性と会合。やっぱり最終的に行き着くのは「等身大」というところである。決してわがままになるということではない。「自分らしく」である。

作曲者が等身大で表現した音楽を、等身大のピアニストが、尊敬する大指揮者と共演した時に起こる奇跡がこの音盤の中にあるように思う(意外に話題にならないが)。

「本番前のリハーサルで、ブーレーズは第2楽章の冒頭部分を何度も繰り返し練習し、『まるで民謡のような曲だ』と陶酔したような表情でつぶやいた。『民謡風』という形容には『ナイーヴ』という意味合いが含まれる。『この曲のテーマはスクリャービンが11歳だった少年の頃に作曲したものです』というわたしの説明にブーレーズはいたく感動した様子だった。」~ウゴルスキ、ブーレーズとの初共演を語る


4 COMMENTS

雅之

おはようございます。
生まれてまもなく母親を亡くし、祖母や叔母の溺愛を受け、小さな手のコンプレックスがありながらも一流のピアニストを目指し猛練習に励み、その結果右手首を痛め、完全には回復せず挫折したスクリャービン。そんな彼が改宗ユダヤ人ピアニスト、ヴェーラ・イサコヴィッチと結婚した直後の作品がこのピアノ協奏曲ですよね。ヴェーラとの結婚は、周囲からの反対もあったりして最初から決して幸せなものではなく、やがてスクリャービンは彼女から気持ちが離れ、ピアノの弟子のタチアーナ・シュレーダーと不倫関係になっていき、作風も神秘主義思想の影響を色濃く反映したものになっていきますよね。
スクリャービンの幼年期は、相当屈折したものだったと想像します。母の本当の愛を知らず寂しかった少年には、ショパンなどの音楽が、極めて大きな心の慰めになったことでしょう。当時のスクリャービンの気持ちは、何となく私には想像できます。そんなことを考えながら、このピアノ協奏曲を聴くのも一興です。
ただし、彼の音楽に惚れ込むほどではありません。若いころの作品はショパンなどの影響を受けすぎ、どこまでが彼の本心かよくわかりませんし、後年の作品は、音楽が感覚に傾きすぎていて、私の趣味ではありません。

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岡本 浩和

>雅之様
こんにちは。
>スクリャービンの幼年期は、相当屈折したものだったと想像します。母の本当の愛を知らず寂しかった少年には、ショパンなどの音楽が、極めて大きな心の慰めになったことでしょう。
僕もそう思います。後年の神秘主義への傾きは、自身の深層心理にある抗いがたい孤独から来るものと想像できます。
>若いころの作品はショパンなどの影響を受けすぎ
なるほど。確かにショパンの影響は色濃いですが、その中にもスクリャービン独自の「毒」を僕は感じます。
>後年の作品は、音楽が感覚に傾きすぎていて
それはその通りですね。僕も彼の作品を完全に理解し、受容できているわけではありませんが、時折「聴きたくなる」不思議な要素を持っています。

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kisara

Kisaraです。
岡ちゃんとその会社が動いている様子をみていて可能性をいつも色々考えるだけで
楽しくなる私です。
中学2年生向けのキャリア教育について興味を持ちました。
中学2年くらいでどこの学校も職業についての特別講義がありますよね。
私の親友が中学の公立の先生ですが、職業紹介でいつか“私”を呼びたいと連絡がありました(笑)
というように本当は軸とか等身大とか仕事とか若い子に話せる機会があればそれが一番ですよね。
私は個人的に中学生向けの会計教育に興味がありまして、いつかは教育事業をしたいと思うのです。
新宿区で募集をするのはいかがですか?
キャリアを語る(講師は現役民間企業の人が職業を紹介する)、そして最後に岡ちゃんの総括
メッセージつき。
きゃ~素敵すぎます!セミナーの対象がいっきに14歳になるなんて♪
私もぜひそういうセミナーで職業人としてプレゼンしてみたいです“
はい、岡ちゃん→可能性は無限大

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岡本 浩和

>kisaraさん
こんばんは。
>というように本当は軸とか等身大とか仕事とか若い子に話せる機会があればそれが一番ですよね。
そうね、ただあんまり難しい話はできないので、いかにわかりやすくしゃべるかがポイントだね。
>新宿区で募集をするのはいかがですか?
キャリアを語る(講師は現役民間企業の人が職業を紹介する)、そして最後に岡ちゃんの総括
メッセージつき。
面白いねー。まぁ、そういう機会があったらそのときはやってみましょう。
>可能性は無限大
おっしゃるとおり!

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