レッド・ツェッペリン!!!

led_zeppelin_houses_of_the_holy.jpgレッド・ツェッペリンの音楽ってどうしてこんなにも刺激的なのだろうか?
第5作「聖なる館」を繰り返し聴いていると、音の洪水の中に身をさらわれ、気が狂うほどの圧迫感と、同時に得体の知れない充足感に身も心も晒され、居ても立ってもいられなくなるほどの「浮遊感」を覚えてしまう。特に、名実共頂点に君臨していた頃、すなわちこのアルバムを制作した頃の彼らの思考、波動、動き・・・、どれをとっても完璧で感動的である・・・。

週末の「早わかりクラシック講座」に向け資料作りをしながらシュトラウスの音楽を流しっ放しでいたら少々聴き飽きた。リヒャルト・シュトラウスの交響詩の問題点はどうやら繰り返し反復に耐え得ないということだろうか・・・。リストやワーグナーなど新ドイツ楽派の影響をもろに受け、創作された交響詩の数々は名作揃いである。しかし、これまた彼の芸術のもう一つの柱となる「オペラ」に比べると決して薄っぺらというわけではないが、彼独自の語法に基づきながらもどこか「二番煎じ的」な弱点を晒しているように感じるのである(20世紀初頭、いわゆる交響詩の世界を卒業し、ほぼオペラの創作に集中し始めたのは、交響詩というジャンルを完成させたというより彼自身この分野に限界を感じてのことだったのではないのかとふと考えた。実際のところは不明だが)。

とはいえ、彼は作曲家である前に、当時のドイツ国内の主要なオペラハウスの芸術監督を歴任した大指揮者であった。ゆえに、リヒャルト・シュトラウスが音盤に残したいくつかの指揮芸術は、録音さえもう少し良ければ今の時代でも十分に通用する傑作揃いである(それほど熱心にシュトラウスの指揮した音楽を聴いてきたわけではないが、少なくとも自作自演盤は後のカラヤンやケンペに匹敵する名演奏揃いだと僕は思う)。

ところで、駄作のない完璧なアーティストって存在するだろうか・・・?The Beatlesには駄作がないと明言したいところだが、公平に考えてみてまったくないと言い切る自信は僕にはない。King Crimsonも何度も再結成せず、潔く70年代に真に封印していれば駄作は作らなかったかもしれないし。Pink Floyd然り、The Who然り・・・。

Led Zeppelin:Houses of The Holy

John Bonhamの突然の死により、彼以外のメンバーは考えられないという理由でその活動に終止符を打ったLed Zeppelinこそは駄作を一切作らなかった史上最強のバンドである(言い切ってしまっていいのかどうかとも思うが、これほどまでに繰り返し何度も、それも全アルバムに亘ってそう思えるバンドは他にないから間違いないだろう)。

The Song Remains The Same音楽は変わることなく永らえる!元々は続く「レイン・ソング」の序奏インスト・ナンバーとしてレコーディングされたらしい、それまでのどのアルバムの1曲目よりヘヴィーで、かつ美しい前奏部。そして、The Rain Song 。4人の完璧なアンサンブルと、各々の超絶技巧、そしてメンバーの究極の音楽性が高々と飛翔した、「No Quarter」と双璧の傑作バラード。いつまでも終わらずに身を浸していたい、そんな風に思わせる7分30秒強の最高の音楽がここにある。さらに、Over the Hills and Far Away 嗚呼、これまた全盛期ツェッペリン最高のパフォーマンス!そして、ファンキーなThe Crungeを経て、Dancing Daysへと止め処なく続く音塊・・・。Jimmy Pageのギター・リフが冴えに冴える。その後の、D’yer Mak’erNo QuarterThe Oceanまで、どこをどう切り取っても涙が出るほどかっこいい。

嗚呼、しかし、いくらなんでも4回連続でこのアルバムを聴き続けるとさすがに耳が疲れる(笑)・・・。


4 COMMENTS

ザンパ

こんばんは。
R・シュトラウスはオペラは「エレクトラ」はお聞きになられましたか?ハルサイやカルミナをゆうに超える全編不協和音の電気ショック・オペラです。主役のエレクトラを歌えるのは世界に数人もいないという噂です。
僕はシュトラウスの交響詩は大嫌いです、というかなんかわからないのです。オペラは好き好きですね。「バラの騎士」なんて想像しただけで甘ったるさにうげーーと思っていたのですが、この前久しぶり聞いたらなんだか「おお懐かしい」とずっと聞いてしまいました(笑)。
「通俗と懐かしさ」というのは表裏一体なのかもしれません・・・と言ってもシュトラウスの作曲技法は「通俗」にしておくにはもったいないほど高度なので…。でも、白状すると、本当に、どうしてあ・ん・な・下・ら・な・い・音・楽・ば・か・り・書・け・る・ん・だ、これです。スッキリしました(笑)。
「ナクソス島のアリアドネ」はシュトラウスらしからぬ小編成のオケのオペラでこれも聞かれたら認識を改められるかもしれないです。彼の音楽でよく感じる「無駄」をあまり感じないのです。「影のない女」も甘さのない、古びた神話本を思わせる風格があって、これもお時間あればぜひ聴いていただいてご意見伺ってみたいです。

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雅之

おはようございます。
「聖なる館」、今聴いても凄い傑作ですね!
いつも思うんですが、クラシックが嫌いでロックの好きな人は、モーツァルトよりLed Zepでα波が出るんでしょうか?(笑)
>得体の知れない充足感
>居ても立ってもいられなくなるほどの「浮遊感」
この辺が変則チューニングの効果で、ある意味長調・短調の境界線が曖昧になるモードなどと同じですね。The Beatlesがやりたくてもできなかった境地に当時の彼等は達していたと思っています。
>Led Zeppelinこそは駄作を一切作らなかった史上最強のバンドである
Led Zep解散後のJimmy Pageは、Led Zep時代を超えられなくて苦闘したのでしょうね・・・。
「聖なる館」といえば、昨日、古い茅ぶき民家家風の「聖なる館」、瑞浪芸術館
http://www4.ocn.ne.jp/~kayabuki/index.html
での「若手女流3人展」で近藤恵三子画伯の絵を鑑賞し、その後愛知とし子さんの「若手女流3人展 記念コンサート」を聴きました(かなり強引な振り・・・笑)。凄く充実した体験!、心から満足して帰りました。
近藤画伯の絵は実物を初めて拝見しましたが、彼女の描く植物の世界は生命力に溢れ、且つ神秘的で最高ですねぇ。私は最近展覧会は断然洋画より日本画志向でもありますので、とても共感しました。
そして愛知さんのコンサートですが、昨日はとりわけ素晴らしかったと思います。
ああいう和風な小規模な場所での演奏会って、演奏家と聴衆との距離感が少なく、コンサート・ホールでの演奏より、私にはよほど好ましく感じました。今、日本人の心を豊かにするための空間は、巨大な「箱もの」ではなく、瑞浪芸術館のような小さくても心が通う空間なのだと思いました。
愛知さんもおっしゃっておられましたが、楽器もよかった。古いYAMAHAでしたが、その温かな響きは美しさの限りだったといえましょう(宇野さん風褒め言葉・・・笑)。この楽器から、こんな素晴らしい響きが生み出されるとは、聴く前は全く予測できませんでした。驚きました。
愛知さんも、よい聴衆、よい楽器、よい会場に恵まれ、持ち味を存分に発揮されておられたと思いました。私も心から堪能し、感動しました。ラヴェル「亡き王女」やドビュッシー「月の光」や、ブラームスの「間奏曲」OP.117-1やOP.118-1、でのスロー・カーブの曲でまず聴衆を陶酔させ、ショパンの幻想即興曲の直球でズバッと決める。ショパン「ノクターン 遺作」、パッヘルベル「カノン」も心に沁みました。
しかし何といってもベートーヴェンの「悲愴ソナタ」に断トツに感銘を受けました。やはり愛知とし子さんは第一級の「ベートーヴェン弾き」であることを確信しました。
あっ!それとアンコールの校長先生のリコーダーとのデュオ、今回も素晴らしかったです。近藤画伯の絵に霊感を得て作曲されたというハシヅメさんの曲にも感動しました。
残念だったのは、後の予定があり、懇親会に出席できず、挨拶もなしに帰らなければならなかったこと。愛知さん、近藤さん、本当にごめんなさいm(__)m
演奏中、建物の外からずっと聞こえていた秋の虫の音、これを実に風流でよかったと感じるのは日本人だけなのでしょうか?日本人に生まれてよかったです(笑)。

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岡本 浩和

>ザンパ様
おはようございます。
R.シュトラウスの音楽は好きか嫌いか尋ねられれば、「好き」ですね。ただ、交響詩はオペラに比べるとやはり浅いように思います。
「ばらの騎士」はもう何十回も聴いておりますが、大好きなオペラです。ザンパ様がおっしゃるように「通俗と懐かしさ」は表裏一体なのでしょうね。「サロメ」も「エレクトラ」も「ナクソス島のアリアドネ」も、そして「影のない女」ももちろん聴いておりますが、それを完璧に理解し、受容しているかといえばまだまだです。じっくり聴いてみます。
>でも、白状すると、本当に、どうしてあ・ん・な・下・ら・な・い・音・楽・ば・か・り・書・け・る・ん・だ、これです。
なるほど、いろんな考え方があるものですね。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>クラシックが嫌いでロックの好きな人は、モーツァルトよりLed Zepでα波が出るんでしょうか?
確かに!そうかもしれませんね。
>変則チューニングの効果で、ある意味長調・短調の境界線が曖昧になるモードなどと同じですね。
そういうことなんですね。
>古い茅ぶき民家家風の「聖なる館」、瑞浪芸術館
かなり強引な振りですねぇ(笑)。
>今、日本人の心を豊かにするための空間は、巨大な「箱もの」ではなく、瑞浪芸術館のような小さくても心が通う空間なのだと思いました。
同感です。
>彼女の描く植物の世界は生命力に溢れ、且つ神秘的で最高ですねぇ。
そうそう、僕もそう思います。
>しかし何といってもベートーヴェンの「悲愴ソナタ」に断トツに感銘を受けました。やはり愛知とし子さんは第一級の「ベートーヴェン弾き」であることを確信しました。
雅之さんにそう言っていただけるとありがたいですね。本人も喜ぶと思います。意外に楽器もよかったんですね。
聴きに行けなかったのがとても残念です。
>演奏中、建物の外からずっと聞こえていた秋の虫の音、これを実に風流でよかったと感じるのは日本人だけなのでしょうか?
秋ですねぇ。ほんとに風流です。
11月のコラボコンサートがますます楽しみになりました。

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