ローズ&グールドのバッハ チェロ・ソナタ集(1973&74録音)ほかを聴いて思ふ

なぜビートルズを批判したのですか?

唖然としたのですよ、ビートルズがポピュラー音楽に対してしでかしたものに。その考えは今も変わりません。ネッド・ローレムに言わせると、彼らはシューベルト以来の最高のソング・ライターだそうです。私があの記事を書いた時分ですと、そういう見解を述べるのはしゃれていますが、私はひどく腹が立ちましたので、このローレム説に対しては、間接的であれ、誰かが反論する必要があると感じました。
グレン・グールド/ジョナサン・コット/宮澤淳一訳「グレン・グールドは語る」(ちくま学芸文庫)P132

パルスを重視するグールドがなぜビートルズを理解できなかったのか不思議でならない。たぶん、ビートルズの音楽が、グールドの先見以上に先を行っていたのだろうと思う。
バロック音楽から前衛音楽まで、あらゆるイディオムを網羅する後期のビートルズ。

久しぶりに”The Beatles”を聴いた。
激しいロック音楽”Birthday”からブルース”Yer Blues”への変容。続く”Mother Nature’s Sun”の叙情。カメレオンの七変化の如くの見事な革新。あるいは、最初の(?)ヘヴィ・メタル”Helter Skelter”のあまりの金切りに恍惚さえ覚えるほど。

・The Beatles (1968)

Personnel
John Lennon
Paul McCartney
George Harrison
Ringo Starr

ビートルズのパルスの重み。”Good Night”におけるリンゴの甘いヴォーカルに感動する。そして、実験音楽”Revolution 9”の、コラージュの完全。支離滅裂といわれながら、真の一体を体現する不滅の作品が、俗称「ホワイト・アルバム」なのである。

ヨハン・セバスティアン・バッハのパルス。
300数十年前の前衛音楽。

ある時代の終焉を体現する人物としてオーランド・ギボンズを超える者は考えられませんし、ギボンズこそ私の大好きな作曲家なのです。昔からずっとそうです。つまり、対位法音楽の作り手としてバッハを超えているとは言えませんし、議論の余地はありません。また、音楽の色彩感の才能は明らかにヴァーグナーに劣ります。
~同上書P78

バッハの音楽は音のタペストリー。
グールドのバッハを聴く。

J.S.バッハ:ハープシコードとヴィオラ・ダ・ガンバのためのソナタ集
・ソナタ第1番ト長調BWV1027(1974.5.28&29録音)
・ソナタ第2番ニ長調BWV1028(1973.12.16&17録音)
・ソナタ第3番ト短調BWV1029(1973.12.16&17録音)
グレン・グールド(ピアノ)
レナード・ローズ(チェロ)

愉悦の極み。
グレン・グールドは本当にバッハが好きなのだろう。単色のピアノに対して、色彩豊かなリーズのチェロが悲しい歌を奏でる。

冬の夜の空のをかしく更けにけりうすき塩湯の味ひをして
「草の夢」
与謝野晶子自選「与謝野晶子歌集」(岩波文庫)P125

ああ、何という味わい深さ!

その子二十櫛に流るる黒髪のおごりの春の美しきかな
「乱れ髪」
~同上書P9

ブランデンブルク協奏曲に通じるソナタ第3番の、バッハに恋い焦がれるグールドの歌。
与謝野晶子の恋の歌が音楽に絡む。何という神々しさ!!

 

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