人様に喜んでもらえるような仕事

r_strauss_furtwangler_bpo.jpg人様に喜んでもらえるような仕事をいつもしたいと思っている。いや、仕事に限らず人が喜び笑顔を見せてくれるようなふるまい、生き方をしたいと常々思う。

僕は基本的にシャイである。遠い記憶の彼方を辿ってみると、少なくとも小学校に上がる前はおそらく厚顔無恥で(苦笑)、人前で両親に相当恥ずかしい思いをさせていたのではないかと思うが、色気が出てきた辺りから人の目を気にするようになったのか、あるいは何かしらの劣等感を覚えるようになったのか、急速に自分自身を直接に表現することが少なくなった。

女性はよくしゃべる(女性は、と断定するのはよくないかもしれないが・・・)。外から帰るなりこちらがどんな状況にあろうと機関銃の如くその日あったことが逐一報告される。一方、僕はといえばその日一日の出来事を事細かに話したためしがない。別に隠すことも一切ないのだが、説明できないのである。詳細を忘れてしまっているということもあるかもしれない。あるいは、子どもの頃からの癖で「自身の体験」や「内面」を表出することにいまだに何らかの抵抗があるのだろう。だから、「愛している」とか「寂しい」とか、女性が求めるようなこっ恥ずかしい言葉を吐き出すのには相応の勇気がいる。もちろん「喜ばせたい」という気持ちは常にあるから、ごくごく普通に心で伝えれば良いだけの話なんだが・・・。

少しずつ自身を解放し、ありのままの自分に近づこう。セミナーでことある毎に「自分らしく!」と言っておきながら自身の不甲斐ないことよ。一歩ずつ前進である。

R.シュトラウス:
・交響詩「ドン・ファン」作品20
・メタモルフォーゼン(23の独奏弦楽器のための習作)
ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(1947.9.16&10.27Live)

フルトヴェングラーの音楽創りはリヒャルト・シュトラウスの音楽を解放する。作曲家本人以上に内面を吐露した劇的な音楽が我々を覆い尽くす。晩年にウィーン・フィルと録音したスタジオ盤は世紀の名盤だと思うが、非ナチ化裁判から復帰直後にベルリンで演奏したこの実況盤の外に放出されるエネルギーの度合いは半端でない。祖国ドイツへの鎮魂曲である「メタモルフォーゼン」の哀しみは当然カラヤン盤を凌ぐ随一の解釈である。フルトヴェングラーによって剥き出しにされたシュトラウスの音楽は神々しい(残念なのはこの世紀の指揮者がシュトラウスの一部の楽曲しか後世に遺さなかったこと)。同収録のヒンデミットについても、古い録音の中から指揮者の作曲家に対する「人一倍の想い」が伝わる名演奏だと思う。

フルトヴェングラーもシュトラウスも人様に喜んでもらえるような仕事をいつもしたいと願っていた人なんだろう。こうやってじっくりシュトラウスを聴きながらそんなことを思った次第・・・。


2 COMMENTS

雅之

こんばんは。
「メタモルフォーゼン」は美しい曲ですね。私はヴィオラ・パートで大昔、アマ・オケの演奏に参加したことがあります(23段スコア、素晴らしい!)。思い出深いです、下手な演奏でしたが(苦笑)。
この曲の作曲年は終戦の1945年ですよね。焼け野原のドイツ・・・。しかしそれは早春の「野焼き」「山焼き」にも似て、新たな新芽が育つための必然の哀しみなのですね。あるいは新しい恋が始まる前の、古い恋の終わりの哀しみと言いかえてもかまいません。
1945年、勝ったソ連ではショスタコが皮肉に満ちた第9交響曲を作曲し、ムラヴィンスキーが初演を指揮しましたよね。敗戦国と戦勝国の作曲家の両曲および、同じく1945年に作曲されたバルトークのピアノ協奏曲第3番かヴィオラ協奏曲の補筆完成版を、どこかの指揮者とオケが、一夜のプログラムで演奏したら、有意義なことだと思いますが・・・。あるいは1945年という年を軸に、岡本さんが「講座」でこれらの曲を取り上げてみられたら、どうでしょう? 
>フルトヴェングラーによって剥き出しにされたシュトラウスの音楽は神々しい(残念なのはこの世紀の指揮者がシュトラウスの一部の楽曲しか後世に遺さなかったこと)。
同感です。

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岡本 浩和

>雅之様
こんばんは。
「メタモルフォーゼン」演られたことがあるんですか!!
それは大したものです。聴いてみたかったなぁ・・・。
>新たな新芽が育つための必然の哀しみ
>新しい恋が始まる前の、古い恋の終わりの哀しみ
確かに!うまいこといいますね。
>1945年という年を軸に、岡本さんが「講座」でこれらの曲を取り上げてみられたら、どうでしょう? 
それは名案です!!
敗戦国ドイツの作曲家が書いた「哀しみ」の音楽と戦勝国ソビエトの大作曲家が創った皮肉音楽をいっぺんに採り上げて比較鑑賞してみるというアイデア、いただきです!ありがとうございます。

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