チェロ・ソナタ3つ!!

rostropovich_richter_brahms_grieg.jpg夜が深々と更けてゆく神無月のとある日には、仰々しい管弦楽曲ではなく、かといって夏っぽい器楽曲でもなく、地味に室内楽に耳を傾けながら独り静かに部屋の隅っこで物思いに耽るのが粋である。「物思い」とはいえ、漠然と何かに想いを馳せる余裕はない。

友人に薦められて「8つの鍵~究極の富と幸せの原則」(ロイス・クルーガー著)を読んだ。要は、いつの時代にもある「成功法則」本である。この手の書籍は、若い頃にさんざん読み尽くしたが、こちらも基本的な「思想」は変わらないようだ。よって、特に新しい発見はない。それでも、ひとつひとつを著者の体験に基づいて懇切丁寧に教示してくれるという点では、当たり前のことがわかりやすく整理され、机の片隅に置いておくにうってつけの良書である。

ということで、今宵またもや室内楽の名盤を・・・。

・ブラームス:チェロ・ソナタ第1番ホ短調作品38
・グリーグ:チェロ・ソナタイ短調作品36
・ショスタコーヴィチ:チェロ・ソナタニ短調作品40
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)
スヴャトスラフ・リヒテル(ピアノ)
ベンジャミン・ブリテン(ピアノ)
1964.6.14&20Live

BBC Legendsシリーズから、エディンバラ音楽祭の実況録音。若きロストロがリヒテルと協演したブラームスとグリーグ。ライブ録音にもかかわらず、ロストロポーヴィチの演奏は一寸の狂いもなく、前進前進、その勢いとテクニックの冴えは素晴らしく、それをサポートするリヒテルの上手さも言葉にし難いほど。何度聴いても飽きないどころか、いつまでも繰り返してしまいそうな「魔力」を秘めている。ブラームスなど、後年ルドルフ・ゼルキンと録音した音盤がつとに有名だが、ライブならではの緊張感はもちろんこの方が上で、円熟度に関しては一歩譲るものの音楽のもつ「うねり」も間違いなく当盤に一日の長があろう。ソ連を代表する二人の巨匠のフルシチョフ時代最期の火花散る「闘い」の音楽、そんな形容がぴったりの演奏である。
そして、特筆すべきはブリテンとのショスタコーヴィチ。20世紀イギリスを代表する稀代の作曲家ブリテンのピアノはいわゆる専門のピアニストですら凌駕するほどの凄みを時にもつ。この演奏はそのブリテンの「凄さ」を如実に示した傑作であると僕は思う。それにしてもショスタコーヴィチの音楽のもつ「美」と「高揚感」、「ドライヴ感」は群を抜いている。

本日、ある理科系大学のキャリア講座のサポート要員として初めて授業に参加した。要は、ベテラン講師の授業風景を参考にせよというお達しなのだが、簡単なようで一筋縄ではいかない。90分の授業をメリハリつけ、上手に学生に意識を向けさせながらひとつひとつ丁寧に進めてゆく講師先生の腕前はさすがである。早速連休明けに同じ大学での講座でデビューが決まっているゆえ、正直胃が痛くなるほどの緊張を催した(まぁ、初めてのことはどんなことでも緊張感いっぱいになるが)。「習うより慣れろ」、ともかく1回1回積み重ねてゆくことだろう。すべての体験は素晴らしい贈物である。

6 COMMENTS

雅之

おはようございます。
ご紹介の盤は私も持っています。BBC Legendsシリーズにはライヴの熱気を感で興奮させられる録音が数多くありますが、当盤もその1枚ですね。ショスタコの演奏など決定盤・歴史的名盤ではないでしょうか。また引っ張り出して聴いてみたくなりました。前に私は、ラフマニノフの後、作曲家と演奏家が分業になってしまったと言いましたが、考えてみれば、ショスタコーヴィチもブリテンも、またバーンスタインも、ピアノの腕は超一流でしたね。
ショスタコのチェロ・ソナタは、愛知とし子さんたちの演奏がいつか聴けることを楽しみにするとして、今朝は芸術の秋、私が昨夜聴きました、岡本さんに最大級お薦めしたい最近発売されたCD2枚をご紹介いたします。
まず、
江口玲 ライヴ!‐ソナタ集
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3649334
この音盤の中で、私も浜離宮朝日ホールで実演を聴いた、フランクのヴァイオリン・ソナタのピアノ独奏版(アルフレッド・コルトー編)が物凄い聴きもの・感動ものです! 昔から大好きなこの曲、悔しいけどピアノ1人で出来ちゃうんだ!と感心しました。絶対に一聴の価値はありますよ。
江口玲さんは、室内楽のパートナーとしても大変な実力者で(世界に十分通用する超一流だと思う)、実演を聴いていつも満足して帰るのですが、ソロとしても素晴らしい音楽性と腕前を持っていることがよく分かる録音です。
もう1枚は、
フランク:ヴァイオリン・ソナタ、ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第3番 前橋汀子(vn)、江口玲(p)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3553333
前にもご紹介しましたが、前橋さんの最新盤も、室内楽の秋にはぴったりの名盤です。前橋さんの演奏、昔より更に円熟・深化しています。また、パートナーとしても江口さん、当然最高です。フランクをピアノ・ソロ版と聴き比べると面白いですよ。
それにしてもフランクのヴァイオリン・ソナタのピアノ独奏版(アルフレッド・コルトー編)、愛知とし子さんで聴いてみたいなあ!

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
CDのご紹介ありがとうございます。
>フランクのヴァイオリン・ソナタのピアノ独奏版(アルフレッド・コルトー編)が物凄い聴きもの・感動ものです!
へぇ、そんなバージョンがあったんですか!!それは知りませんでした。しかも実演を聴かれているとは羨ましいです。確かにフランクはどちらかというとヴァイオリンよりピアノの方が技巧を要するらしいですが、ピアノだけでできちゃうというのは聴きものですね。ぜひとも聴いてみます。江口玲さんの演奏は残念ながら実演では触れたことがありません。テレビなどで何度か観てますが、上手いですよね。
>前橋さんの演奏、昔より更に円熟・深化しています。また、パートナーとしても江口さん、当然最高です。
このCDも興味深い!!聴き比べすと面白そうです。
ありがとうございます。
>フランクのヴァイオリン・ソナタのピアノ独奏版(アルフレッド・コルトー編)、愛知とし子さんで聴いてみたいなあ!
打診しておきます(笑)。

返信する
じゃじゃ馬

わたしもフランクのバイオリンソナタは大好きです。
ピアノ独奏版があるのは初めて聞きました。
しかもしかも!
江口玲!!
すぐ買います。
ご紹介ありがとうございます。
わたしも江口さんは大好きです。
ソロもですが室内楽の伴奏をしたら、そうそう江口さんの右に出る人はいないんじゃないかと思います。
ピアノ科ではなく作曲科出身のかただから弾けるピアノなのかなあと実演を初めて聴いた時に思いました。
うまく言葉にすぐに出来ないんですが…。
久しぶりに実演が聴きたくなりました。

返信する
岡本 浩和

>じゃじゃ馬さん
こんばんは。フランクのヴァイオリン・ソナタいいですよねぇ。
>ピアノ科ではなく作曲科出身のかただから弾けるピアノなのかなあと実演を初めて聴いた時に思いました。
江口さんは作曲科の出身なんですね。なるほど・・・。

返信する
雅之

>岡本様、じゃじゃ馬様
弦楽器奏者にとって、江口さんのピアノは信頼感抜群なのでしょうね!
朝の歌~エルガー作品集 加藤知子(vn)江口玲(p)
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1439891
なども、昔から大好きなCDですし、
同じコンビの最新盤、シューマン:ヴァイオリン・ソナタ 第1番、第2番
http://www.hmv.co.jp/product/detail/3559658
も、ヴァイオリニストと同等かそれ以上に、江口さんのピアノの素晴らしさを味わえますよ!

返信する
岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
あー、またこんなにご紹介いただいて・・・(笑)。
気になります・・・。
加藤知子さんはデビュー間もない頃だったと思いますが(もう20年くらい前ですかね。前前職でイベントに携わっていた頃です)、一度仕事でご一緒したことがありまして・・・。
とても気さくな方でした。懐かしいです。

返信する

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

アレグロ・コン・ブリオをもっと見る

今すぐ購読し、続きを読んで、すべてのアーカイブにアクセスしましょう。

続きを読む