僕がクラシック音楽を聴き始めた頃、もちろんまだ高校生で実家に住んでいた頃のことだが、物置の片隅でパデレフスキの弾く(確かそうだったと記憶するが定かでない)ブラームスのハンガリー舞曲のSP盤を発見した。誰がどういうタイミングで手に入れ、聴いていたのかはわからないが、少なくとも身内で僕以外クラシック音楽を趣味にするような人間はおらず、ただ当時SP盤を聴くための環境が整っていなかったため、結局その音盤は聴けず仕舞いだったことをふと思い出した。
20世紀に入ってからの録音技術の発展には目を見張るものがある。僕が子どもの頃はおそらくまだステレオ装置というものが一般的でなく、確か小学校の低学年のときに父が家具のような形をしたステレオを購入し、何やら両方のスピーカーから違う音が出るんだなどと言われ、子どもながらに意味もわからず初めて聴いたステレオ録音のレコードの音に特に感動はなく(笑)、「ふーん」と思ったこともあわせて思い出した。そういえば、同じ頃、ポータブル・カセットテープ・プレーヤーも我家にお目見えした。1970年、大阪万博の年で、僕は小学校1年生になったばかりだった。自分の歌声が録音再生されるということに吃驚しながら、学校で習ったばかりの唱歌を歌ったり、何やら妹と騒がしげに会話をしていたと記憶するが、おそらくその時に録音されたカセットテープがどこかに残っているはずだから、久しぶりに聴いてみたいものである。もう40年も前の話だ。懐かしい。
郷愁にふけること自体、歳をとった証拠だと思うが、こういう時、ブラームスやドヴォルザークの例の音楽が懐かしく心に響く。
いずれの舞曲集も全曲でないのが惜しいが、少なくとも最も脂の乗っている頃のカラヤン&ベルリン・フィルハーモニーの演奏である。スタジオ録音の場合、あまりに行儀の良い演奏(こういう小品を演奏させたらカラヤンの右に出るものはいないのではと思うほど抜群に上手い)に終始するのがカラヤンの良いところでもあり、また退屈なところでもある。おそらく実演で聴けたらさぞかしだろう。
ところで、リストの「前奏曲」という曲はなかなかコンサートで聴く機会を得られない音楽だが、表面的でありながらこれほど意識を鼓舞する音楽はないんじゃないだろうか。クロード・ルルーシュ監督の映画「愛と哀しみのボレロ」で、ドイツのとある指揮者(名前は忘れたがカラヤンがモデルだという)がこの音楽を演奏するシーンがあったが、めちゃくちゃかっこよかった(ナチス・ドイツがプロパガンダに利用したことも頷ける)。しかしながら、このカラヤンの演奏は一般的に評判良いが、どうも上っ面を撫でている感じでもうひとつピンと来ない。やっぱり若い頃から愛聴するフルトヴェングラー盤に止めを刺す。
自分(の感性、感覚、直感)を信じることだ。口で言うのは易し。軸をぶらさないこと。無闇に人の影響を受けないこと、すなわち比べないこと。正しいと思う道をひたすら走り続けること。想いをもって。
こんばんは。
1970年ころの風景のお話、とても懐かしいです。
このところクラシック音楽のCDを聴く時は、以前のようには演奏家にこだわらなくなりました(実演は違います)。録音なんて、どうせオーディオ装置が変わったらゴロッと印象も激変しますし・・・。
今の私は、CDを聴く時は、カラヤンやフルトヴェングラーを聴きたいというより、ブラームスやドヴォルザークやリストを聴きたいという気持ちの方が何倍も上回っています。このブログにコメントを書かせていただくようになってから特にその思いが強くなりました。
クラシックはジャズと異なり、何といっても曲が第一です。
だから、ご紹介の曲たちも、CDで聴くときは、極論すると演奏家は誰でもいいです(ピリオド奏法だけは歴史の捏造なので厭だけど・・・笑)。
昨夜、タワーレコード店頭で、とても良さそうなCDを買いました。
ブラームス: ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編), セレナード第1番・第2番, 他 / マイケル・ティルソン・トーマス, バイエルン放送交響楽団, ロンドン交響楽団
http://www.towerrecords.co.jp/sitemap/CSfCardMain.jsp?GOODS_NO=1983208&GOODS_SORT_CD=102
ピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編)は、 以前教えていただいたヤルヴィ&ロンドン響盤
http://classic.opus-3.net/blog/cat29/post-82/#comments
と、お詳しいかたには、どっちがいい演奏なのでしょう。
今晩、これから聴きま~す。楽しみ!!
ハンガリー舞曲5番はどこで聞いたか思い出せないがあのリズムに 感激して大枚をはたいて買ってきた 小屋の2階に今もある古い蓄音機で何度も何度も聞いたものだ 先日思い出して探したが無いので 持って帰ったのかと思っていたが 違うのだったらもう一度探してみる
妹と2人の嬉々とした歌としゃべりのカセットテープはきっちり残してある お楽しみに(笑)
>雅之様
おはようございます。
>録音なんて、どうせオーディオ装置が変わったらゴロッと印象も激変しますし・・・。
>クラシックはジャズと異なり、何といっても曲が第一です。
その気持ち同じくよくわかります。
とはいえ、聴き比べは楽しいですよね(笑)。
ご紹介のMTTのブラームス、僕も気になっておりました。未聴ですが・・・。是非聴いてみてのご感想よろしくお願いします。
>お父さん
へぇ、あのテープがまだ残ってるの?!
それは貴重やねぇ。
MTTのブラームス、じつに良かったです。それにしてもピアノ四重奏曲第1番(シェーンベルク編)は、大変興味深い編曲です。益々研究したくなりました。
ハンガリー舞曲第5番のSP盤、気になりますね。本当にパデレフスキの演奏なのでしょうか?
昨夜CDを聴きながらハンガリー舞曲集のいろいろな人の管弦楽編曲について『ウィキペディア』で調べていた際、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%83%BC%E8%88%9E%E6%9B%B2
第5番の「1906年2月9日、アルトゥル・ニキシュによるヴェルテ・ミニヨンのための演奏」(多分、ピアノ・ロールか?)を聴くことができました(上記ページの最下段、「メディア」という項目にあります)。
やはり、ブラームスの生きていた時代に近い演奏、あのようなスタイルだったのだと、改めて認識しました。
パデレフスキも同様な演奏スタイルだったのでしょうか?
>雅之様
こんばんは。
MTT良かったですか!ますます僕も聴いてみたくなりました。
>本当にパデレフスキの演奏なのでしょうか?
これは正直定かでないです。ピアノ独奏だったのかヴァイオリン編曲版だったのか、何せ音が聴けてないですから不明です。
実家に帰省したときに探して確認します。
ところで、ニキシュのピアノ・ロール面白いですねぇ。これはもうポピュラー音楽ですね。19世紀末古き良き時代の匂いがプンプンします。