ワーグナーのピアノ曲!

concert_in_villa_wahnfried.jpg1840年、ヴァイオリンの鬼神と呼ばれたニコロ・パガニーニの死に際し、フランツ・リストが発表した追悼文。
「天才とは、人間の魂に神の存在を啓示する力です。・・・芸術を、おのれの利益や不毛な名声のために似つかわしい手段としてではなく、人間を一つに結びつける、一つの共感できる力としてみなすこと、・・・それこそが、芸術家に課された課題なのです。・・・未来の芸術家が、自己中心的でうぬぼれた役を喜んで放棄すべきことを願って止みません。パガニーニは、そのような役回りをした、最後の輝かしい代表的存在であったと思います。芸術家の目的を、自身の内にではなく、自らの外におくことを願います。芸術家にとって、ヴィルトゥオージティーは手段であって、目的とならないことを望みます。その際、貴族同様、あるいは貴族以上に、天才は義務を負っていることを忘れませんように」
「作曲家◎人と作品シリーズ リスト」(福田弥著・音楽之友社)より)

ハンガリーの田舎の出であること、そして、いわゆる「平民」の生まれであることにコンプレックスをもち、その裏返しとして貴族趣味や爵位への執着心を顕わにしたリストではあったが、ピアノのテクニックや芸術的センスに関しては、当代随一。音楽に限らず、文学、哲学、宗教とその知的好奇心は多岐に亘り、それらが彼の才能を開花させ、世に知らしめる手段になったことは歴然とした事実である。

ところで、上記追悼の文章を読んでいて、内容はまったくもってかけ離れているものの、ふと思い出したのが、先日の赤塚不二夫氏の葬式でのタモリの8分間に亘る弔辞。(どんな世界においても)真の天才というのは謙虚でモノの真理がわかっているんだと感じた次第。いずれも感動的です。

バイロイト・ヴァーンフリート・コンサート
ワーグナー&リスト秘曲集
ナタリー・シュトゥッツマン(コントラルト)
ゲルハルト・オピッツ(ピアノ)

ワーグナーの聖地、しかも彼が晩年にコジマと過ごした館において、実際にワーグナーが所有したスタインウェイを使用して録音された粋なアルバム。昔、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「ルートヴィヒ」を観た時、タイトルをバックに奏されるピアノの短い調べがとても気に入り、それがワーグナーの作だと知った時は少々驚いたものだった。あの重厚で長大な楽劇をいくつも世に送り出した彼にあぁいうピアノの名品があるとはつゆ知らなかったものだから・・・。
本アルバムに収録されているいくつかのワーグナー作のピアノ曲、そして義父でもあるリストによるワーグナー関連の楽曲(「R.W.-ヴェネツィア」、「リヒャルト・ワーグナーの墓に」、「聖杯グラールへの礼拝の行進~『パルジファル』より」、「イゾルデの愛の死~『トリスタンとイゾルデ』より」の4曲!)。静かに耳を澄ませて聴いていると、自分がヴァーンフリート荘で実際にワーグナーの演奏に接しているかのような錯覚に襲われる。美しい!!

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