Tears in Heaven

eric_clapton_unplugged.jpg世の中がこう不景気になると、どの業界も大変なようである。昨日7,8年ぶりに間違い電話をかけて来た知人も某外資系広告代理店に勤務しているとのことで、この1年で売上が激減し、二進も三進もいかない状態らしい。僕の周辺には人材に関わる仕事をしている輩も多い。かの人材紹介業界においてもどこの会社も軒並み収益減で、早期退職を募ったりして、スリム化を図っているし(良い人材は動かないから一人や二人でやっているならともかく、従業員を何百人抱えていると人件費だけで大変なことになる)、研修業界も同様の状況で、昨年のリーマン・ショック以前の飛ぶ鳥を落とす勢いはどこへやら、この先どうなっていくのかまったくもって予想がつかない様相である(とは言いながら、個人的には決して悲観的な見方はしていないのだけど)。

9日(月)と10日(火)に大学の授業依頼の連絡が入った。また急な話である。それだけ、大学生、というより大学の就職課にとっては今大事な時期のようで、特に偏差値があまり高くない不人気の(名前もあまり聞いたことがない)大学の場合、1%でも就職率を上げることに職員は必死で、今後の大学の存続に関わる大問題だろうゆえ、何とかエントリーシートや面接の対策をしっかりし、一人でも多くの学生に成果を挙げさせたいと藁をもすがるような気持ちのようである。しかし、現実はそんなに甘くない。わずか90分の授業で教えられることは限られているし、そこで学んだとしても、あとは本人がどれだけ自宅やプライベートでエクササイズするかが重要なのだから。聞くところによると、すでに今の時点から就職を諦めて、いわゆるフリーターでいいやと考える学生諸君も多いようである。恐ろしい世の中だ。

朝からデスクに向かって仕事をしながら、久しぶりにエリック・クラプトンとロッド・スチュワートのアンプラグド・ライブを聴いた。2枚とも、バブル崩壊後のまさに就職氷河期の始まる直前である92~93年に、バブルの象徴のような番組であったMTVの「アンプラグド」のために行ったライブの模様を収録したものである。僕はといえば、まだ20代後半、すでに大学生の就職支援を生業にしていたとはいえ、極めて大変な時期だったことを思い出す。

エレキ・ギターを引っさげたクラプトンもかっこいいが、アコースティックのクラプトンはもっとかっこいい。1991年、当時4歳半であった最愛の息子を事故で亡くしたクラプトンが、息子コナーを悼んで作曲した名曲Tears in Heavenは涙なくして聴けない。

Eric Clapton:unplugged

“Tears in Heaven”
Would you know my name
If I saw you in heaven
Would it be the same
If I saw you in heaven
I must be strong
And carry on
‘Cause I know I don’t belong
Here in heaven

天国で逢えたら
君は僕の名前を憶えてくれているのかな?
もし天国で巡り会えたなら
君は何も変わらずそのままでいてくれるのかい?
僕はしっかりしなくちゃいけない
そして歩き出さなきゃいけない
なぜなら僕は
天国に召されたわけじゃないのだから

子どもの頃、「死」というものに相当の恐怖感を持っていた。でも、今はそうでもない。考えようによっては「死ぬこと」は「卒業する」ことと同義。物質としての身体がなくなるだけで、明らかに魂は存在しているし、ましてやクラプトンのように今生で「親子」という関係を持った二人が、以後離れ離れになるとはありえないのだから。未来永劫、姿・形違えども、二人はつながっているはず。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>世の中がこう不景気になると、どの業界も大変なようである。
「一億総中流」意識が強かった時代が嘘のようです。
ロックというジャンルも、経済成長の歪から生まれた反骨意識、アウトロー精神が根底にあり、現在のような経済自体が酷い時代に聴くロックは、おのずと意味合いが変わってきますよね。芸術は、作り手と受け手の相互作用であって、受け手の境遇が変化すれば作品の持つ意味もまったく変わるという、これも好例ですね。
私の考える本来の「ロック魂」とは、アメリカン・ニューシネマ、例えば映画「明日に向って撃て!」
http://www.amazon.co.jp/%E6%98%8E%E6%97%A5%E3%81%AB%E5%90%91%E3%81%A3%E3%81%A6%E6%92%83%E3%81%A6-2%E6%9E%9A%E7%B5%84%E7%89%B9%E5%88%A5%E7%B7%A8-DVD-%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%82%B8%E3%83%BB%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%92%E3%83%AB/dp/B000MR9B2Y/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=dvd&qid=1257628950&sr=8-1
のようなメンタリティーなのですが、就職氷河期に苦しむ今の若い世代が観たら、果たしてどう感じるのでしょうね? あのアウトロー精神は、まだ余裕がある時代だからこそ共感を得たのかも・・・とも思います(いや、ひょっとすると、逆に上映当時以上に共感を得られるかも・・・、若い人に見せて実験したいものです)。
エリック・クラプトン、昔はかっこ良すぎて好きではありませんでしたが、考えてみれば彼の人生も波瀾万丈、苦労の連続ですよね。
クラプトンの「亡き子をしのぶ歌」、久しぶりにしみじみと聴いてみたいです。
>未来永劫、姿・形違えども、二人はつながっているはず。
心の底から、そう信じたいです。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
>芸術は、作り手と受け手の相互作用であって、受け手の境遇が変化すれば作品の持つ意味もまったく変わるという、これも好例ですね。
おっしゃるとおりですね。そういう意味ではロックはわかりやすいですよね。
> あのアウトロー精神は、まだ余裕がある時代だからこそ共感を得たのかも・・・とも思います(いや、ひょっとすると、逆に上映当時以上に共感を得られるかも・・・、若い人に見せて実験したいものです)。
そうですね、面白い実験ですね。余裕があった時代だから生まれてきた映画でしょうが、より共感を得るのは現在かもしれません。
>考えてみれば彼の人生も波瀾万丈、苦労の連続
だからこそクラプトンの音楽には心を揺さぶられる何かがあります。

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