岡本誠司ヴァイオリン・リサイタル

前半が「ウィーンからの便り」、そして後半が「パリからの便り」というコンセプトで組まれたプログラム。

彼は明日、留学のためベルリンに向けて発つのだという。その上、生まれ育った千葉県市川市でのリサイタルは今日が初なのだそう。そのせいか、本人はとても力が入っていたのだろう、特に前半は演奏に固さが垣間見られたが、それも曲を重ねるごとに上り調子で、さすがに後半最後のラヴェルに至っては全身全霊をかけた素晴らしい演奏が披露された。

冒頭はクライスラーの「愛の喜び」ほか。やや不安定な印象だったが、しかしそれが逆にウィーン訛り的な、クライスラーらしい崩したような洒落た演奏になっていたのは皮肉な結果かどうか。モーツァルトも確かに明朗で美しい演奏ではあったのだけれど、もう少し遊びのある奔放な、同時に愉悦と哀感の両方を感じさせるものであったほうが・・・(音楽はゆるぎなく見事にかちっとした造りだった)、などと余計なことを僕はつい考えてしまっていた。岡本誠司はおそらく独墺系の四角四面の作品よりも、もっと自由な、奔放な作品のほうがより適性があるのではなかろうか。
とはいえ、尻上がりに調子を上げる次のクライスラーの小品では、ドライヴがかかった情熱的なパワーを見せてくれた。

岡本誠司ヴァイオリン・リサイタル
岡本誠司(ヴァイオリン)
務川慧悟(ピアノ)
2017年8月20日(日)18時30分開演
行徳文化ホールI&I
・クライスラー:愛の喜び、愛の悲しみ、美しきロスマリン(1905)
・モーツァルト:ヴァイオリン・ソナタ第40番変ロ長調K.454(1784)
・クライスラー:ウィーン奇想曲(1910)、ウィーン小行進曲(1925)
休憩
・マスネ:タイスの瞑想曲(1894)
・プロコフィエフ:5つのメロディ作品35bis(1920)
・ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタ遺作(1897)
・ラヴェル:ヴァイオリン・ソナタト長調(1923-27)
~アンコール
・ドビュッシー:美しき夕暮れ(ハイフェッツ編曲)
・プロコフィエフ:歌劇「3つのオレンジへの恋」作品33~行進曲(ハイフェッツ編曲)
・モンティ:チャールダッシュ

15分の休憩を挟んでの後半は岡本誠司の本領発揮。
文字通り恍惚とさせられた「タイスの瞑想曲」の美しさ。続くプロコフィエフの、異なる性格の5つの小品を見事に弾き分ける腕前。このソビエト連邦の天才の土臭い部分とパリの都会的センスを見事に融合し、音はしっかりかつ滑らか、音楽は飛び切り歌われ、僕たちを魅了した。もちろん、務川慧悟との呼吸もこのあたりではぴったりと一致し、余裕の演奏を見せてくれた。
白眉はモーリス・ラヴェルの2つのソナタ。遺作の方は、何と作曲家がパリ音楽院の在学中に書かれたものだが、早くもラヴェルらしい内なる熱狂を秘めたどこかオリエンタルな響きが特長で、それを日本人である岡本誠司がおそらく当時のラヴェルと心境と同期するように心を込めてヴァイオリンを奏するのだから悪いはずがない。
さらには、円熟期の作品となるソナタト長調の、尋常ではない集中力から繰り広げられるパフォーマンスに僕は思わずのけ反った。何より第2楽章ブルースの非凡さ。そして、無窮動と題される第3楽章アレグロでの乗りに乗った壮絶な大演奏。
アンコールの3曲も時間を忘れさせられる素晴らしい演奏。特にモンティのチャールダッシュは絶品。

ベルリンに留学とはいえ、年に何回かは帰国し、リサイタルを開く予定だそう。一回りも二回りも大きくなり、一層素晴らしい演奏を披露してくれる日を楽しみに待ちたい。

 

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