自然回帰

mravinsky_in_prague_shostakovich_6.jpg「すき家(24H)」、「オリジン弁当(24H)」、「マクドナルド(24H)」。「ワークショップZERO」終了。少人数ながら、いつも最後は一体感を感じる。言葉に頼らず、接触に頼らず、目と目で通じ合うということがまさに体感できる、そういう瞬間こそが「生きている」と感じれる時。不夜城新宿界隈を歩いていると、果たして人間にとって24時間眠らぬ街が良いのかどうか疑問に思えてくる。人は「体内時計」なるものを持っている。夜明けとともに目覚め、夜更けとともに眠りに就く。少なくとも文明が開かれる前、原初的な生活を強いられていた人々は地球や自然と一体の生活を送っていた。

一晩中ネオンの灯り。煌々と照らされる人工的な色。自然と離れ、エゴイスティックに行動を起こすようになると、生活そのものに乱れが生じてくる。今の世の中、どこもかしこも「戦っている」。自分との「闘い」ではなく、他者と「争って」いるのである。互いに傷つけあい、最後は各々自滅してゆくという生き方。そろそろ気づいて、そういう考え方を捨て去らねば・・・。

気がつけば師走も20日。2009年も残すところあとわずか。行く年に感謝、そして来る年に希望を持ち。今日のこの出逢いが未来に繋がるように・・・。

良い意味でのストレスは重要だ。でないと呆けてしまう。一定の緊張感があるから、人間らしい生き方を送れるのである。一方で、悪いストレスは最悪。心身ともに疲弊させる緊張感は居た堪れない。

ショスタコーヴィチ。旧ソビエト連邦の、スターリン主義の、最悪のストレスを被りながらも自身を誤魔化し、傑作を生み出し続けた天才。粛清の嵐が吹き荒れる1930年代に第4交響曲の発表を控え、社会主義指導者が喜ぶ「苦悩から勝利へ」の第5交響曲により体制に媚を売ったドミトリー。その天才作曲家が、その後また内なる自分に光を当て、創出した音楽・・・。

ショスタコーヴィチ:交響曲第6番ロ短調作品54&第12番ニ短調作品112「1917年」
エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(1955.5.21&1962.1.6, Live in Prague)

プラハでの実況録音を集成したセット物からの1枚。無理をした明るさ。嗚呼、何て暗いんだろう。生命の危機を目前にし、恐怖に怯えながら一生を過ごしたショスタコーヴィチにとって安息の地とはどこだったのか?安心とは何だったのか?「不安」を抱える一方で「勇気」を振り絞り、二枚舌で体制に向かい合った彼は偉かった。

ムラヴィンスキーの奏でる音楽は鋼のようだ。一分の隙もない。完璧なショスタコーヴィチ演奏。ショスタコが唸る、叫ぶ、そして囁きかける。自然回帰の音楽・・・。


2 COMMENTS

雅之

おはようございます。
>ムラヴィンスキーの奏でる音楽は鋼のようだ。一分の隙もない。
ムラヴィンスキーを武将に譬えるなら、「冬将軍」! ショスタコの交響曲にはこの冷徹な一糸乱れぬソ連軍の行進のようなオケの音でなければならないと思います。カエターニ&ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響のSACDでの全集
http://www.hmv.co.jp/product/detail/1234414
も好きなんですが、南国的な音色に違和感が残るのは否めません(笑)。
先日、山崎豊子の長編小説「不毛地帯」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E6%AF%9B%E5%9C%B0%E5%B8%AF
を、やっとのことで読破しました。
陸軍中佐で大本営参謀だった主人公の壱岐正が、終戦後、過酷な11年のシベリア抑留を生き延びて帰国後、参謀としての経歴を買われて近畿商事に入社、航空自衛隊の次期戦闘機選定争いや、日米の自動車会社の提携、イランでの石油発掘プロジェクトなどで、熾烈な商社の諜報戦営業に辣腕を振るい、平和な家庭を犠牲にしつつ出世街道を上り詰めるも、思うところがあり退社し、長期シベリア抑留者の親睦団体である朔風会の会長になり、シベリアへ現地で死んだ日本人の墓参りと遺骨の収集に行く・・・。
時代や体制に翻弄された数奇な運命を、時には二枚舌を使いながらも、したたかに逞しく生き抜いた主人公・壱岐正・・・、読んでいるうちに、私にはショスタコの人生と何回もオーバーラップしてきました。
If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.
「ハードでなければ生きていけない。ジェントルでなければ生きていく気にもなれない」・・・ 私立探偵フィリップ・マーロウ(レイモンド・チャンドラー原作 矢作俊彦 訳)
ショスタコの交響曲第6番・12番と聞いて、瞬間思い浮かんだ言葉です。

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岡本 浩和

>雅之様
おはようございます。
ムラヴィンスキー=冬将軍、「まさに!」という感じです。
カエターニ&ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響は残念ながら未聴です。「不毛地帯」も未読なので何ともコメントいたしかねますが、ご紹介の文章を読む限りかなり面白そうですね。ショスタコとオーバーラップするというのが気になります。
>If I wasn’t hard, I wouldn’t be alive. If I couldn’t ever be gentle, I wouldn’t deserve to be alive.
これは名言です!!

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