冗長で退屈さを感じるものの、シューベルトのピアノ・ソナタは時折妙に聴きたくなる代物である。特に第18番のソナタが良い。いつだったかNHK-BSでリヒテルがこの曲を演奏しているのを観たとき、背筋に電流が走ったかのような衝撃を感じたことがある。それより前に音盤はいくつか所持していたにもかかわらず、なぜかこのときのリヒテルの映像で開眼させられた。
中庸のテンポで淡々と弾き切る彼の演奏が印象的で、何と最後のアンコールで同じソナタのフィナーレを再演したことが不思議により一層惹きこまれたことを昨日のように覚えている。
シューベルト:ピアノ・ソナタ第18番ト長調作品78D.894「幻想」
クラウディオ・アラウ(ピアノ)
※分売のCDは廃盤なのだろうか?
ロベルト・シューマンにその美を絶賛された傑作。
ファイナル・セッションズと称する、アラウが他界する半年前、最晩年の一連の録音の一つ。
テンポも極端に遅く、ごつごつとしたタッチはおよそシューベルトらしくない、といえばらしくない。しかし、合計45分にも及ぶこの曲を聴いているときに覚える恍惚感、幸福感は何ものにも替えがたいものである。
とにかく言葉でその美を表現するのはとても難しい・・・・・
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