所用で巣鴨に出掛けた帰りの車中で20年前のことを思い出した。当時、僕はイベント業に携わっていたのだが、札幌で開催されるあるイベントで担当者が都合悪くなり、急遽単身でそのパーティーの現場責任者として借り出された。ともかく前日からの徹夜での仕込みに立会い、当日のパーティーを無事見届けるようにという命令だった。社会人歴の浅いひよっこだった僕は、ほとんど初めてだった「現場」の熱気や聞き慣れない専門用語に右往左往しつつも前日の準備を乗り切り、何とか無事に終えることができるだろうと半ば安心していた。しかしながら、高を括ったのも束の間、実際のところは本番でのバンドの出のキュー出しをミスり、結果クライアントから大目玉を食らうという大失態を演じてしまった。以降のそのクライアントとの仕事にも支障を来したようだから、随分反省した。
何が問題だったのかというと、単純な確認ミスである。初めての現場で、しかも初対面の方々との仕事なのだから、面会するなりいろいろとコミュニケーションをとっておけば良かっただけの話なのだが、どういうわけかそのあたりを怠ってしまった。今となったら考えられないような凡ミスだが、25歳の僕はまだまだ未熟だった。でも、そういう経験からいろいろなことを学び、人って成り立ってゆくものだから特に若いうちはどんどん失敗すれば良いのだけど・・・。
明日、2010年初の「ワークショップZERO」を開催する。今回の主たる参加者は20代前半の若者だ。中には就職活動を目前に控えた大学生もいる。学生の身になってみると本当に大変な世の中だが、氷河期といわれるこの時期に必死に就活をしたこと、そして自分を磨こうと相応の時間とお金をかけ努力したという「事実」が将来の大きな糧になるだろう。そういう彼らの成長のきっかけになれるよう僕もがんばろう。
自身を鼓舞するのに相応しい音楽はもちろんワーグナー。久しぶりだ。
ワーグナー:歌劇「さまよえるオランダ人」
カール・リッダーブッシュ
ギネス・ジョーンズ
トーマス・スチュワートほか
カール・ベーム指揮バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団(1971Live)
若きヒトラーは「ローエングリーン」に魅せられてワーグナーの虜になった。バイエルン国王ルートヴィヒ2世も同じくだ。昔からよくいわれるようにワーグナーの音楽には独特の「毒」がある。まさに人間を扇動するような麻薬的効果が秘められる。女性の純愛が、それも自己犠牲的な愛こそが男性を救うのだという、多分に「男の観点」で創作されたある意味「男の勝手な妄想」オペラ。そう、苦悩を背負って悩み迷う男は、女性の無条件な包容力によってこそその力を発揮できるのだと。やっぱり男って弱い・・・(苦笑)。
まぁ、その点についての是非はともかくとして男ならやっぱりワーグナーの音楽に首っ丈になる時期が必ずある。「指環」やら「トリスタン」やら、あるいは「パルジファル」の音の洪水に飲まれて明けても暮れてもワーグナーという時代は十の昔、40歳を超えた今となってはこの「オランダ人」くらいが重量的にも時間的にもちょうど良い。ベームの有名なバイロイト実況盤は切れ味抜群で、何度聴いても聴き飽きない。
おはようございます。
「さまよえるオランダ人」は、幽霊船伝説を題材にしたハインリヒ・ハイネの小説「フォン・シュナーベレヴォプスキー氏の回想」等をワーグナーが牽強付会的腕力で「女性の犠牲による救済」をテーマに仕立て直した歌劇ですよね。こういう自分に都合のいい強引な着想は、ハイネの詩による傑作歌曲を残したシューベルトやシューマンも到底思いもつかなかったところで、さすがワーグナー先生です(笑)。
ベームのバイロイトでの「さまよえるオランダ人」「トリスタンとイゾルデ」「ニュルンベルクのマイスタージンガー」「ニーベルングの指環」のライヴ録音は、どれも輝かしい記録で最高です。私はクナでもカラヤンでもショルティでもなく、まずベームのライヴ録音からワーグナーの素晴らしさを教わりました。今聴いても歌手共々、皆ほれぼれします。
しかし、学生時代聴き込んだこれらの懐かしいLP、みんなCDに買い替えて処分しちゃったんです。絶対CDより真実を伝えていたのに・・・、悔しいです。
仮に今後LPレコードで復刻されたとしても、塩化ビニールという材質が厭なので絶対買いませんけど、SACDにはならないかなあ。
エソテリックさん、お願いです!
http://www.esoteric.jp/products/esoteric/essd90021_34/index.html
>雅之様
おはようございます。
そうでした!もともとはハイネによるんですよね。
>まずベームのライヴ録音からワーグナーの素晴らしさを教わりました。今聴いても歌手共々、皆ほれぼれします。
おっしゃるとおりですね。どれも最高だと僕も思います。
>懐かしいLP、みんなCDに買い替えて処分しちゃったんです。
ほんとに悔しいですよね。その気持ちよくわかります。
SACDがもう少し注目されるようになって、今のCDレベルの価格になるとよりいいんですけどね・・・。エソテリックの「指環」なども興味津々なのですが、いかんせん高すぎます(LP時代に比べたら高いとはいえないんですが、今のCD価格に慣れているせいかどうもそんな風に思ってしまいます)。